肉と進化

「グルァッ!」


「ピィーイ!」


「ブモォォォオ………」


俺が狩りに行く時に一緒に連れてきたユキとファムがオーク達を蹂躙していく。

2人の実力はそこらの雑魚では相手にならない。

細かく言うとユキが圧倒的なだけでファムはステータスが足りていないが実態のある幻覚を使って撹乱しながら戦っている。

………いや、本当に強くなったよなぁ………


「っと、そんなこと言ってる場合じゃないか」


俺も目の前にいるオークに向かって走り出す。

そして、そのまま首に向かって両手鎌を振り抜く。


「ブモォ?」


俺の攻撃で首を切断されたオークは膝から崩れ落ちる。

そしてどんどん塵になっていく。

俺の素早さに付いてこれなかったようだ。

とりあえず目に見える範囲のモンスターはユキとファムと一緒に狩り尽くしたが一応【気配感知】で周りを確認しておく。

………うーむ、近くにモンスターはいないみたいだな。

取り敢えず一安心だな。

じゃあ【吸魂】をっと………


「ワフゥ!」


「キュィイ!」


俺の元に戻ってきたユキとファムは元気よく鳴いて俺に擦り寄ってくる。

2人を撫でながら辺りを見回す。


「………やっぱりおかしいよな?」


いや、俺がおかしいとかユキとファムがおかしいとかじゃなくて………

俺はそのおかしい所………というか物を見て言う。


「………なんで肉?」


そう、何故か今倒したオークの死体の近くに転がっていたのは先程まで無かったはずの生肉だった。

しかもスーパーで見るようなパックに詰められた状態で。

………いや、なんで?

取り敢えず近づいてみてパックに入った生肉を手に取ってみる。


「………うん、間違いなく普通の肉だよな」


俺は手に取ったそれをジッと見つめて呟く。

………いや、本当にどういうこと?


「【鑑定】」


俺は自分の疑問を解消するためにこのパックに入った生肉に向かって【鑑定】をする。


------

名前:オークの肉

説明:豚肉に近い味と食感と味がするオークの肉。

おすすめはしょうが焼き。

------


………うん、意味がわかんねぇ。

いや、意味はわかるよ。

だけどちょっとわかりたくないというか理解したくないというか………


「………まあいいか」


名前からしてさっき倒したオークからドロップしたんだろう。

オークを倒したらオークの肉が出てきた。

………うん、これでいいだろう。

………いや、ごめんやっぱ無理。

百歩譲ってオークの肉ならまだ分かるんだよ。

ああオークのドロップはそう言う物なんだなって。

だけどなんでパックに詰められてるんだよ!

なんで!?

俺はもう一度オークの肉を見る。

………まあ、もう考えない方がいいかもな。

これはそういう物だって思っておかないとこれからやっていけない気がしてきたぞ。

俺はオークの肉をインベントリに入れる。

するとオークの肉は消えていった。

………よし、後でアーニャさんに聞こう。

オークの肉って言うぐらいだからあっちの世界でも食べられてるんじゃないかな?


「グルルルル」


ユキが俺に擦り寄りながら喉を鳴らす。


「ん?どうした?」


俺はユラリと揺れている尻尾を見ながらユキに聞く。

そこで違和感に気づく。


「………あれ?ユキ、なんかお前でかくない?」


いつもより若干大きく見えるユキの体を見て記憶にあるユキの大きさと比べてみる。

………あるぇ~?

気のせい?

いや、やっぱ大きいよね?


「グルル」


俺の言葉にユキは嬉しそうに鳴きながら体を擦り寄せてくる。

………あ、これ絶対大きくなったな。

俺はユキを抱きしめて頭を撫でる。

うん。

抱き締めると良くわかる。


「………ん?ファム?」


ファムも肩に飛び乗ってきて俺の頬に頭を押しつけてくる。

俺はファムを指先で優しく撫でながらファムの方を見る。


「キュィイ!」


ファムも俺と目が合うと嬉しそうに鳴いてきた。

ファムは特に大きさなどは変わっていないようだった。

ユキはなんで大きくなっているんだ?

………あ………


「………もしかしてだけど………【鑑定】」


俺はユキに【鑑定】を使う。


------

名前:ユキ

性別:♀

種族:ロンリーウルフLv.1(テイム)


体力:640/640 魔力:45/45

攻撃:450

防御:140

俊敏:400

器用:60

知力:45

幸運:35


所持SP:25

魔法スキル:なし

取得スキル:【爪牙Lv.1】【身体強化Lv.1】

固有スキル:なし


称号なし

------


やっぱりだ。

ユキの種族が変わっていた。

というか進化していた。

………いつの間に進化したの?


「ガウ?」


俺がユキのステータス画面を見て驚いていると不思議そうな顔で俺を見上げていた。


「えっと………ユキ、お前………進化したのか?」


「ガウッ!」


ユキは元気よく返事をして胸を張る。

そんな様子が可愛かったから両手を使ってヨシヨシヨシヨシと高速で頭を撫で回す。


「グルル」


気持ち良さげに目を細めるユキ。


「………可愛い」


俺は思わず呟いていた。


「キュー!」


そして俺がずっとユキに構っていたのに嫉妬したのかファムがいつの間に移動してたのか頭から抗議の声を上げる。


「悪い悪い。ほら」


俺はユキを撫でていた左手を離して指でファムの頭を撫でる。


「キュゥ~」


頭の上にファムはいるから様子は伺えないが聞こえてくる声からすると満足してくれたようだ。


「じゃあ、そろそろ戻るか」


俺はそう言って立ち上がる。


「グルッ!グルルル……?………グギャァアアア!!」


だけどユキは突然耳をピクピクさせたかと思うと雄叫びを上げながら走り出した。


「え!?ちょっ!?ユキ!待て!」


「グルルォオオオ!!!」


俺の制止の声を無視してそのまま破壊された道路を進んでいく。


「あーもう仕方ないな。ファム、振り落とされるなよ」


「ピィーイ」


ファムが俺のローブに付いているフードの中に入ったのを確認してユキの後を追う。


「ユキ!止まれ!止まってくれ!」


俺の制止の言葉に反応する事なくどんどん進んでいく。


「………しょうがないか」


疾走しているユキを止めるために全速力でユキの背中を追いかける。

まったく………いきなりユキはどうしたんだよ………

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