夕飯と色々
「ほいっと」
俺は出来上がったカレーの入った皿を2つずつ持って順番にテーブルまで運ぶ。
そしてそれぞれに配膳をする。
アーニャさん、アイカさん、雪奈ちゃん、玲奈ちゃんで分担してやったためそこまで時間は掛からなかった。
むしろ足りなかった椅子や机を引っ張り出すのに苦労した。
「うっひょーうまそーだな!」
「そうだね~」
陽介が目を輝かせながらそう言い、それに同意するように早希が答える。
お前ら2人とも座るの早すぎだろ………
そして2人はスプーンを手に取る。
2人とももう待ちきれないといった様子で今にも食べてしまいそうな勢いだ。
「お前らも少しは手伝えよ………」
俺が呆れ気味でそう呟くと2人はビクッとして動きを止める。
そしてギギギという効果音が出そうなくらいぎこちなくこちらを振り向く。
「い、今からやるつもりだったんだよ!?なぁ!」
「うん。もちろん今からやろうとしてたよ~?」
2人とも椅子から立ち上がって意気込んでいるが目が泳いでいる。
………やる気なかったな?
てかやるつもりだったのならその手に持っているスプーンはなんだよ。
「いえ、これ以上の人手は必要ないのでゆっくりしていただいて結構ですよ」
キッチンからスープの入っている皿を持ってきたアーニャさんが微笑みながら2人に告げる。
「………え?」
「………マジか」
そして2人が固まっているうちに続いてキッチンから出てきた玲奈ちゃんが配膳を終える。
「………はい………空さんの分………」
「ありがとう玲奈ちゃん。じゃあ皆席に着いた着いた!………そんなわけなんでエスカリアさんもゲームは終わりにして早く来てください」
「ちょ、ちょっと待ってください。まだ終わってないんです!」
「………そんなにゲームが気に入りましたか?」
今エスカリアさんがやっているゲームは某乱戦型の対戦ゲーム。
前々から家に買って置いてあるである。
ちなみに俺も結構やってるからなかなか強い方と思う。
………まあ、それでも玲奈ちゃんと初めて1時間のアイカさんに負けたんですけどね………
「はい!とても面白いです!」
ほーん。
うまくなったなぁ………
あ、吹っ飛ばされた。
「それは良かったです。でも今は夕食の時間なので後でやりましょうねー」
「はーい………わかりました………後もう一戦だけ………」
「はーい。行きましょうね~」
「うぅ………」
俺が席から立ち上がってそう言って立ち上がるように促すとエスカリアさんは渋々と立ち上がった。
そしてそのまま空いた席に座る。
「さて、それじゃあいただきます!」
「「「「「「「いただきます!」」」」」」」
俺が号令をかけるとみんなが一斉に声を上げる。
そしてスプーンを手に取って食べ始める。
その食べ方も様々で普通に食べる者、バクバクと勢い良く食べる者などだ。
「うまっ!このカレー超うめぇな!」
「ほんとだよね~。空君が作ったカレーとは大違いだよ~」
「………喧嘩売ってんのか?」
「………おいしい………」
「アーニャさんもアイカさんもすごいですね!とっても美味しいです!」
「アーニャのご飯は相変わらず美味しいですね」
「ふふ。ありがとうございます」
「そうだよな………それにアイカさんもフライパンで料理焦がして黒い煙
をモクモクと上げていた頃と比べたのにな~」
「えっ!?アイカさんそんなにそんな時があったんですか!?」
「………信じられない………とっても手際が良かった」
「本当にアイカさんは飲み込みが早くて助かりました。………あの昼からどんどん腕が上達していっていて本当にすごかったですよ」
「常に私は自身を最適化しています。当然の結果です」
「本当にすごかったですよ。アーニャの動きを真似るみたいにどんどん上手くなっていっていて」
実際あれはすごかった。
昼の時は人の姿で細かいことをするのに慣れていなそうだったのに、今ではほとんど完璧にこなしている。
………ゲームとかも………
「へぇー!そんなにすごかったんですね!」
「美味しい料理にはその人の努力があるからね~」
「そうですね!」
「そうだぜ!それにスープもサラダもめちゃくちゃうまいぜ!」
陽介………!食うのが早い!?
まあ、知ってたんだけどさ。
俺達も話しながらとはいえちゃんと食べていた。
だけど陽介はもうスープもサラダも食べ終えてしまっている。
「おかわりはいかがなさいますか?」
「はい!よろしくお願いします!」
陽介が元気よく返事をして空になった皿をアーニャさんに差し出す。
そしてその皿を受け取ったアーニャさんはカレーを盛るために席から立ち上がってキッチンに行く。
「………早い………」
「陽介相変わらず食べるのが早いね~」
「そうか?普通だと思うんだけど?」
「いや、お前何回も言ってるけと普通じゃないからな?」
「ええ。早希さんとソラさんの言う通りだと思います」
「………うん………」
だよな。
俺と早希がおかしいわけじゃないよな?
いつも運動部ならこれが普通だて言われてたんだけどさすがに運動部でもこの早さはないよな?
「ええ!?そうなの?」
「だからそうだって言ってんだろうが………」
俺がそう言うと陽介は少し考え込むような仕草をする。
だがそんな仕草もアーニャさんが持ってきた山盛りに盛られたカレーを見てすぐに消える。
そして再びスプーンを手に取り食べ始める。
それを見た俺達も食事を再開する。
結局その後、皆食べるのを再開してあっという間に完食した。
そして陽介は4杯、そして意外にも雪奈ちゃんが3杯も食べていた。
「ふぅ~食った食った」
「そうですねーいっぱい食べました………」
「………お腹一杯………」
「私もです………」
「満足だよ~」
陽介、雪奈ちゃん、玲奈ちゃん、エスカリアさん、早希の5人が満足げに息をつく。
「ごちそーさまでした」
「お粗末様でした」
俺達が食べ終わるとすぐにアーニャさんとアイカさんの手によって食器は片付けられ、テーブルの上には何も残っていない。
「………おいしかった………」
玲奈ちゃんがぽつりと言う。
「ふふ。ありがとうございます」
「………とても美味しかった。ぜひ作り方を教えて欲しい」
「もちろんいいですよ。いつでも教えますよ」
「………ありがたい。………今度教えてもらったら作らせて貰う」
「楽しみに待っています」
良かった良かった。
前の買い物の時に会ったときには随分と雰囲気が悪かった気がするから何事もなくて良かった。
そしてその後はまた皆でゲームをしたりして過ごした。
………ただ、その途中で早希が雪奈ちゃんの実り豊かな大地を見た後に自分の実りの乏しい大地に手をあてて「食べた物が全部そこに………」って言いながらすごい表情をしていた。
全く………どうせ育つ事がないんだから………
「空~?今、何を考えてたの~?」
………なんにもないです………
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます