来訪者とお話

「なんでここにいるの?」


俺は率直に聞くことにした。

他にもなんであの陽介バカが呼んだのか。

聞きたいことは山ほどあった。

だけどまあ、とりあえず今は置いておく。


「なんでと言われても………」


「………私達は早希ちゃん先輩に呼ばれただけ………」


「………そうなんだ」


俺は早希と陽介を見る。

すると早希は目を逸らす。

………おいコラ、どういうことだ?

お前が提案したって言ってたよなるという思いを込めて俺は陽介に目を向ける。


「」


………こいつ、無言で親指立ててんじゃねぇよ。

しかも舌だしてウインクまでしてきやがった。

いわゆるてへぺろってやつだな。

………男がやっても気持ち悪いだけだぞ陽介。

俺は心の中でそう思いながら、目の前にいる2人に話しかける。


「えっと………それで今日は何をしに来たの?まさかこんな時に遊びに来るわけじゃないよね」


玲奈ちゃんと雪奈ちゃんの2人は目を逸らす。

ついでに陽介と早希も目を逸らす。

…………うん、もういいや。

その反応で大体わかった。


「………とりあえず座ろうか」


さすがにこの人数になるとソファーとここにある椅子だけじゃ足りなくなるから、俺と陽介の2人で床に座ることにする。

俺とこいつならカーペットも敷いてあるし別に良いだろ。


「陽介、俺達は床な」


「あ~オッケー」


そうして陽介を床に座らせ、俺も椅子から降りて床に座る。


「ほい、玲奈ちゃん、雪奈ちゃん、空いたから座って良いよ。アーニャさんもアイカさんも」


「あ、ありがとうございます」


「………ん。ありがと………」


「私としてはこのままでも良いのですが………」


「わかりました」


アーニャさんはは少し遠慮しているが、さすがに女の子4人を立たせたままというのは気が引ける。


「まあまあ、良いから良いから座っちゃってよ」


「………それでは失礼します」


アーシャさんが座り、アイカさんがそれに続く。

そして雪奈ちゃんが座り、最後に玲奈ちゃんがゆっくりと腰掛ける。


「……なんか、ごめんなさい」


「いや、大丈夫だよ。………ああ、そうだ、2人にも紹介するよ。アイカ」


「はい」


そう言ってアイカが立ち上がる。

そのまま自己紹介を始める。


「初めまして、私はアイカと申します。よろしくお願いします」


「あ、はい!えーと、宮田玲奈です!よろしくお願いします!」


「………宮田雪奈………よろしくお願いします」


2人とも緊張しているのか少し硬い感じだ。

まあ仕方ないと言えばそれまでだが。


「それで、えーと………それにしても随分と急だったな。それに遊びに来るのならこんな日じゃなくても良かっただろ?」


「えっと………それはですね……」


そう言うと玲奈ちゃんはチラッと横を見る。

その視線の先には早希がいる。

どうやら早希が何か関係しているらしい。


「………実は早希ちゃん先輩と立川先輩とは空くんが入院中に知り合ったんだけど、その繋がりで今日は呼ばれた」


「………そうなんだ」


「………うん。それでね、空くんにお返しをしたく………でも何が良いのか全然わかんなくて………だから相談したかったの」


「………なるほど。そんなに気にしなくて良かったのに。友達になるって事を了承してくれたんだから」


「ううん、それだけじゃダメなんだよ。空さんはそれでいいかも知れないけど私たちがなっとく行かないの!」


「そっか………」


「良い後輩持ったね~」


「本当にな。空、お前は幸せ者だよ」


「うるせぇ」


俺は陽介の言葉に悪態をつく。

あとこっち見んな。

今はめちゃくちゃ顔が赤くなってる気がするから。


「まあそういう事なので、今日はお邪魔させていただきました!」


「……うん、まあ分かったよ。とりあえず2人はゆっくりして行ってよ」


「はい、ありがとうございます!」


「……ん、ありがと」


「それで………お前らはなんだ?」


俺は陽介と早希に目を向ける。


「えっと………」


「………」


陽介は目を逸らす。

早希に至っては無言だ。

………こいつらが俺に用があるのなんて1つしかないだろうが。


「えっと………その2人の用事に便乗して遊びに来ちゃいました!」


「………うん、知ってた」


俺は陽介の頭を軽く叩く。

今までのような力じゃなくて俺のステータスなども考慮した力だ。

それでも陽介にとっては痛いらしく、頭を押さえてカーペットの上で悶絶していた。


「………まあいいか」


「え?良いのですか!?」


「だってこいつらのせいだし。早希の分もこいつにしたってことで良いでしょ」


「わ~い。陽介~身代わりありがと~」


「てめえ………自分がやられなかったからって………!」


「あの………大丈夫なんですか?」


俺達のやり取りを見て、心配になったのかエスカリアさんが声をかけてくれる。


「あ、はい、いつもの事だから。あいつも本気で殴ったりしてないんで安心してください」


「あ、いえ、そうではなくてですね………」


「あー、まあ良いですよ。俺も慣れてるから。それよりせっかくこんな中来てくれたんですからみんなでゲームとかやりましょうか。あ、もちろんエスカリアさんにアーニャさん、アイカさん達3人も一緒にですからね」


「あ、はい!ありがとうございます!」


「………私まで良いのでしょうか」


アーニャさんが遠慮がちに聞いてくる。


「当たり前じゃないっすか。むしろ歓迎しますよ。ほら、早希はもう準備始めてますよ。………それと玲奈ちゃん達は………まあ別に大丈夫かな?ゲームやったことあるよね?」


「ふふん、任せてよ!」


「もちろん。ゲームは私の特技」


玲奈ちゃんと雪奈ちゃんがそれぞれ胸を張る。


「それなら良かった」


こうして急遽ではあるが、皆でゲームをして遊ぶことになった。

………まあ、たまにはこういうのも良いかもな。


「あ、陽介、早希ちょっといいか?」


「?どうした?」


「どうしたの~?」


「いやさちょっと聞きたいことがあってさ」


***


「………というわけなんだよ」


「………なるほどね。まあ、気持ちは分かるけどさ………」


俺は今、陽介と早希と一緒に居間を出た廊下にいる。

そして先程あった出来事を陽介と共有している最中である。

ちなみに他の皆は居間でゲームを続けている。

てかちょくちょく玲奈ちゃんと思わしき叫び声が聞こえてくるから、おそらく玲奈ちゃんが負けているんだろうなぁ。


「まあ、お前らがこんな時に遊びに来た理由はわかった」


こいつらが遊びに来た理由は学校が休校になったから、これからあんな事が起きるかもしれないんだからそれまでに遊んでおきたかった。

この2つだった。


「おう、分かってくれて嬉しいぜ」


「でも、だからと言って許すかどうかは別問題だけどな」


「だよねぇ~」


「当たり前だ。こんな何が起こるかわからない時に………」


俺はそこで言葉を止める。


「それで?お前らもステータスがあるのか?」


「おう!もちろんだぜ!」


「もっちろ~ん」


2人とも元気よく答える。

………やっぱりそうなのか。

誰にでもステータスはやっぱり存在するんだな。

俺は少しだけ考え込む。


「どうした?」


「………いや、なんでも無い」


「そうだ!ステータスを見せ合おうぜ!」


「ステータスを?」


「ああ!」


………まあ、見せ合うくらい良いか。

………いや、やっぱ良くねえわ。

俺の人外ステータスは見せちゃダメだわ。

どうやって誤魔化すかな………

そんなことで悩んでたけどそんな悩みは早希があっさり解決してくれた。


「いや~やめといた方が良いんじゃないかな~?」


「え?なんでだよ?」


「だって~ニュースで見たけど~ステータスって今のところ確認した全員があるんでしょ~?」


「まあ、そうだな」


「それがどうしたんだよ?」


「つまり~これからステータスに関しての法律とか~色々できるかも知れないじゃん?それに~ステータスを見せたらなにかしらのペナルティがあるかも知れないしなにもわかってない今じゃ見せるのはリスキーかな~って」


………驚いた。

ここまで早希が考えているとは思わなかった。

確かにその通りかもしれない。

俺も今まで【鑑定】でモンスターのステータスを見てきただけだし俺のステータスを他の人に見せてなかったし。


「うーむ………それも一理あるな」

「だよね。てことで2人のステータスは見れないし私のステータスも見せられないや。ごめんね」


早希が申し訳なさそうな顔で言う。


「いや、良いって良いって。てかさっきから思ってたんだが、お前結構頭良いよな」


「うん、まあね」


「………なんかムカつくな………」


「ははは、まあ良いじゃないか」


俺はとても助かったし。


「………じゃあ、戻るか。悪かったな付き合わせちゃって」


「いや、別に良いさ。ちゃんと来た理由も説明してなかった俺らが悪いしな」


「そう言ってくれると有難いよ」


「それじゃ戻るぞ~」


その後はゲーム中のメンバーに合流して俺らもゲームに参加した。

ちなみに雪奈ちゃんとアイカさんが強すぎてその2人VS残り6人でも勝負にならなかったと言っておく。

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