自衛隊とモンスター出現の原理
「はぁ~やってんなぁ………」
あれから一夜明けた翌日。
俺は目の前に広がる光景を見て思わず呟く。
現在俺はダンジョンの出現という今まで起こってなかった災害によって良いのか悪いのか全国の学校が休みになった事を利用してダンジョン付近まで来ている。
そして、今の俺の視では5人の自衛隊がオークと戦っている姿が見えている。
自衛隊の人達は銃を使って戦っていて、モンスターを倒している。
だけどモンスターも負けておらず、自衛隊の人達が撃つ弾丸を手に持つ巨大な棍棒を盾にして防いでいる。
………まあ、銃が効かないわけじゃないみたいだな。
防げていない所から少しずつだがダメージを与えているようだ。
さすがにあんな丸っぽい棍棒の大きさじゃ貫通もしないだろう。
「………まあ、銃が通用しないわけじゃなくてよかった」
俺はそう言ってからまたその戦闘を見続ける。
勿論危なくなったら直ぐにでも助けるつもりだ。
今の俺はゴブリンキング戦の時の装備をフル装備状態。
顔もフードをかぶっているからうまくしていれば顔を見られるなんて事はない。
………でもなんで銃だけなんだ?
戦車とかの方が火力も高いだろうに………
戦車とかを使わない理由がなにかあるのか?
「隊長!距離、約100!」
「よし。射撃止め!また距離を取るぞ!」
「「「「了解!!」」」」
おっ、さっきから行動がうまいな。
オークとの距離を的確に保って一定の距離から近づけなくしている。
足の遅いオークだからできる戦法だな。
あれ?そっちの方は………
「う、うわぁぁぁあああ!」
「も、もう1体だと!?」
「ブモァァッ!」
俺は叫び声が聞こえた方に目を向けるとそこにはもう1体のオークがいた。
少し前に【気配感知】した時に気配を感じてたけどもうその辺りまで自衛隊の人達は下がってたのか。
そしてオークは未だ止まっている自衛隊の人に襲いかかろうとしていた。
「………仕方ないな」
俺はため息を吐いてから走り出す。
そしてそのまま勢いよくジャンプをして、空中で両手鎌を構える。
「ハアッ!!!」
そして落下しながら俺は思いっきり振り下ろす。
すると見事にオークが縦に両断されて地面に転がった。
俺は着地してから振り返りながら未だ向かってくるもう1体のオークに視線を向けてから全力でオークに近づき、首に横薙ぎを放つ。
「グォア………」
俺の攻撃によって首を切断されたオークはうめき声を上げてそのまま倒れ込んで絶命した。
よし、これで終わりだな………
俺はそう思ってから周りを見るが、自衛隊の人達が唖然とした表情でこちらを見ながら固まっていた。
………まあ、そりゃ驚くよな。
さすがに今正体がばれるのはまずいので、俺はすぐにその場から離れる。
「ちょ、ちょっと待ってくれ!」
後ろから声が聞こえてくるが、俺は無視して走りだす。
悪いなとっつぁ~ん。
俺は心の中で謝ってから自衛隊の人達から逃げるように走るのであった。
「はぁー、疲れた」
俺はそう言いながらダンジョンの入り口付近で座り込む。
結局あの後、俺は自衛隊の人に追い掛け回されまくった。
自衛隊の人もステータスが上がっていたのか中々スピードがあったしスタミナもあった。
まさか全速力で走って引き離す事になるとは思わなかったよ………
「………それにしても………モンスターが出てきていないな………」
俺がそう呟く。
昨日は結構な数のモンスターが出てきたので、今日も出てくると思っていたのだが………
あっ、出てきた。
俺がそう思った瞬間、モンスターが1体現れた。
そいつは全身が真っ黒で、まるで影がそのまま動いているような見た目をしていた。
初めて見見るモンスターだった。
「【鑑定】」
もはや恒例となったスキルを発動させてからモンスターの詳細を見る。
------
名前:なし
性別:不明
種族:シャドウLv.5
体力:100/100 魔力:200/200
攻撃:400
防御:50
俊敏:400
器用:70
知力:40
幸運:10
所持SP1
魔法スキル:なし
取得スキル:【隠密LV.2】【無音移動LV.3】
固有スキル:なし
称号:なし
------
………【隠密】と【無音移動】を使って高い攻撃力で不意打ちするようなモンスターかな?
俺はそんな事を考えながらも立ち上がる。
そして俺が立ち上がった事に気付いていなかったのか、俺が動いた事で驚いているモンスターに向かって駆け出した。
「ハッ!!」
俺はモンスターの目の前に一瞬にして移動する。
そしてモンスターの腹?辺りを切り裂いた。
「ギィヤァァァァ!!」
モンスターが悲鳴を上げて塵になって消えていく。
………やっぱりレベル差もあって一撃か。
俺がモンスターを倒した後に少しだけ考える。
てかやっぱり出てくるモンスターの数は減ってるよな?
なんでだ?
………まあ良いや管理者さんに聞けばわかるでしょ。
俺はそう考えてからダンジョンの入り口から離れていく。
「………とりあえず一旦帰るか」
俺はそう呟いてから家に帰るために【飛翔】スキルを使って飛んで行くのだった。
***
「ただいま~」
俺は家に帰ってから居間に向かう。
するとそこには俺と同じく学校が休校のエスカリアさんといつも通りの格好のアーニャさん、そして同じくメイド服姿の管理者さんが………え?なんで?
俺は予想外の光景に思わず固まる。
「お帰りなさいませご主人様」
………うん?
………俺の目と耳がおかしくなったのか?
なんか今、ありえない人がありえない言葉を言った気が………
俺は恐る恐るもう一度聞く。
「………今なんて?」
「お帰りなさいませご主人様」
………う~ん。
「エスカリアさ~ん、アーニャさ~ん」
「はい?どうしましたかソラさん」
「どうかしたんですかソラ様」
2人は不思議そうな顔でこちらを見てくる。
「管理者さん、あの格好はどういうことですか?」
「えっ?あの格好は管理者さんが着たいと仰っていたので………」
「私のメイド服を調整させていただきました」
………うん。これは夢だな。
きっとなにかしらのモンスターの攻撃を受けたんだな。
きっとそうに違いない。
俺はそう思いながら自分の頬をつねってみる。
「痛いな………」
「何をしているのですか?」
「いえ、なんでもないです」
うん。なんにもなかったんだ………
俺がそう言うと、アーニャさんがこちらに近づいてきて俺の手を握ってきた。
そして俺の目をジッと見つめてきた。
「な、何でしょうか?」
「大丈夫ですか?目が虚ろですよ?」
「だ、大丈夫だよ」
俺はそう言ってから手を離してもらう。
「ゴホン、それで?なんで管理者さんはメイド服を着てるの?しかもなんでご主人様呼び?」
「それはですね、ただでこの家に置いてもらうのも申し訳なく思いましてアーニャさんに相談したら、それなら家事を手伝ってくれれば良いと言われましたのでメイド服を着ています」
「はい。なので私が色々と教えています」
「ご主人様呼びは男性はこう呼ぶと喜ぶとデータにあったので」
「………なるほど」
………確かに嬉しいけどね!
でも、その呼び方はちょっと恥ずかしいな。
「わかった。管理者さん、これからはアーニャさんの家事を手伝ってくれ。………あと出きれば普通に呼んでくれるとありがたいです」
「わかりました。では今後はソラと呼びます」
管理者さんは無表情で返事をする。
呼び捨てなのか………まあ、いいけど。
「それともう1つ聞きたいんだが、モンスターの数が減っているように感じるんだけど何か知らないか?」
「モンスター数の減少については私も把握しておりません。恐らくはダンジョン内の魔素濃度の低下が原因だと推測します」
「魔素の濃度低下?なにそれ?」
「はい。通常、ダンジョンでモンスターを出現させるにはダンジョン内の魔素が必要になります。恐らくですが最初にかなりの魔素を使ったのでしょう。魔素の回復には時間がかかります。そのため、モンスターの出現に必要な量の魔素が足りなくなったのだと思われます」
なるほどね………
「ふーん。じゃあそのせいでモンスターが減ったのか………てことはしばらくモンスターが出てこなくなる可能性もあるわけ?」
「はい、その通りです」
「そっか、教えてくれてありがとう」
「いえいえ、これぐらいなら」
「………アーニャ、私今まで解明されてなかった謎が解明された瞬間を見ちゃったし聞いちゃったんですけど………」
「奇遇ですねお嬢様、私もです。まさか魔王軍対策のために長年考えられていた事がこんなにあっさりと………」
………2人共なんか驚いている?
俺そんなに変なこと聞いたかな? 俺は首を傾げる。
それからアーニャさんが管理者さんに昼ご飯を作るのと同時に料理の仕方を教えてくれるとの事で2人揃ってキッチンに向かっていったのだった。
俺とエスカリアさん?
俺はほぼ一人暮らしだったからともかくエスカリアさんに料理ができると思うか?
そういうことだよ。
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