管理者さんと事情説明
「え?マジで?管理者さん?」
「ええ、そうです」
「………本当に?」
………本当かな………
うーん………なんか信じきれないんだよなぁ………
「そんなに信じられないのですか?」
「そりゃそうだろ。いきなりそんなこと言われても………」
「ですが、実際にあなたの目の前にいるではありませんか」
「それはそうなんだけどさぁ………」
「………ソラ様、本当にこの方が管理者様なのでしょうか?」
「大丈夫なんですか?」
管理者さんの言葉を聞いてアーニャさんとエスカリアさんは懐疑の声を漏らす。
まあ、俺も疑っているけどさ………
「どうすれば信じていただけるのでしょう?」
「………じゃあさ、管理者さん?は俺に取得させたスキルとか知ってる?」
俺はとりあえず管理者さんが知っているかどうか確認するために聞いてみた。
………もし答えを知らなかったり違ったりしたら偽者………それに取得させたと言ってスキルを取らされたといった風に言っているが正しくは貰ったスキルだ。
もしこの3つのどれかに当てはまったら管理者さんを騙る人と言う事になる。
………その場合は力ずくにでもアーニャさんの手を外してでも………
「もちろん把握しています。ですが、取得させたというのは語弊がありますね。正しくは私が貴方に与えたスキルですが貴方が入院中に初めてコンタクトを取った際の【鑑定】、ダンジョン『ゴブリンキングの巣』、突入前に【錬金】と【鍛冶】の合計3つを与えていますしています」
………マジで?合ってるんだけど?
俺の考えすぎだったか………
「ソラさん………合ってますよ………?」
「………本物だね………俺が管理者さんに取得させられたって言うところも引っ掛からなかったし、俺が管理者さんにスキルを貰った時まで正確に把握してるんだからね」
「信じて貰えてなによりです」
「うん。信じるよ………だからさ………」
「?」
「服を着ろ!」
俺は思わず叫んでしまった。
いや、だってさっきからずっと産まれたままの姿なんだろ!?
俺がアーニャさんにずっと目隠しされてるってことはそういうことだろ!?
「………服は着なければいけないのでしょうか?」
「当たり前だろ!俺は男だぞ!」
「………ですが服を着る必要が感じられません………」
「あるわ!大ありだ!というより俺のためにも服を着て下さい!アーニャさん、管理者さんに服をよろしくお願いします!」
「はぁ………かしこまりました。お嬢様、よろしくお願いします。管理者さんこちらに」
「わかりましたわ」
「ありがとうございます」
アーニャさんがそういって俺の目隠しを外して管理者さんを連れていくために俺の目隠しをしている手を離す。
そしてようやく見れるかと思ったら今度はエスカリアさんが俺の目隠しを………おい。
くっそ!一瞬でもまた見れるかと思ったのにさっきエスカリアさんに頼んだのはこれの事か!
「………あ、あのー………」
俺は恐る恐る声をかけてみる。
するとすぐにエスカリアさんから返事が返ってきた。
「………なんでしょうか?」
「………いや、そのですね………どうして俺の目を塞いでいるのかなって………」
「………ソラさん、そんなに管理者さんの裸が見たいのですか?」
「あ、いや………そうじゃないんだけど………」
「では問題ありませんね」
「………はい」
………いやまあ確かに見たいとは思ったけどさ………
仕方ない………とりあえず管理人さんが服を着に行くまで我慢だ。
「それでは、失礼します」
そう言ってエスカリアさんによって完全に視界が塞がれている俺にアーニャさんはそう告げると管理人さんを連れて部屋から出ていったようだ。
そして少しの間沈黙が続くとエスカリアさんが俺の目隠しをしていた手を離してくれた。
「………もういいの?」
「えぇ、管理者さんが着替えに行ったようです」
「そう………それで、これからどうするんです?」
「そうだね………まずは管理者さんに現状どんな状態なのか色々聞きたいな。後で説明するって言われてたからまだ何も聞いてないしさ」
俺達は管理者さんが来るのを待つ事にした。
***
しばらくエスカリアさんと話しながらユキとファムと戯れながら待っていると扉が開く音が聞こえてきた。
どうやら管理者さんとアーニャさんが戻ってきたらしい。
「ただいま戻りました」
「おかえりなさい、管理者様、アーニャ」
「アーニャさん、ありがとうございま………す………」
扉の方に顔を向けるとそこには白いワンピースを着た管理人さんがいた。
正直似合いすぎていて驚いた………
「………どうかしましたか?」
「え?ああ、なんでもないよ」
俺は慌てて誤魔化すと管理人さんとエスカリアさん、アーニャさんは首を傾げたが特に気にしなかったようで話を始めた。
「………ゴホンッ………それでは服も着て大丈夫そうですし………管理人さん、なんでここにいるのか、今の現状を説明して貰えますか?」
「はい、分かりました。ソラさん、私の名前は『境界管理AI・No.000』境界の管理人を名乗っています。よろしくお願いします」
「うん。俺は神山空だ、よろしくね」
「私はエスカリア・ウタリア・オースター、よろしくお願いします管理者さん」
「アーニリカと申します。よろしくお願いします、管理者様」
「それにしても………管理AI?人じゃないのか?」
俺は管理者さんに質問をする。
管理AI?
そんな機械らしく見えないしそもそも普通の人でしょ?
「はい、私は人間ではありません。この世界とあちらの世界、2つの世界の境界を管理しています」
「………そうですね。初めてのコンタクトの時に侵入を許したって書いてありましたし」
「そうですね。ソラさんに聞いた内容と一致しています………じゃあどうしてこの世界に?」
「それは………」
管理者さんが言い淀んでいる…… もしかして聞かない方が良かったかな? 俺がそう思っているとエスカリアさんが口を開いた。
「………もしかして………貴女がここにいるのはこの現状に関係しているの?」
「………はい、そうです」
「どういう事?」
管理者さんの言葉に俺は疑問をぶつける。
すると管理者さんはゆっくりと語り始めた。
それは驚くべき内容だった。
管理者さんがここにいるのは管理システムが敗北して破壊されたかららしい。
その理由は………魔王軍………管理者さんは魔王軍の侵攻を止める為にシステムの一部を残して全てを犠牲にして戦いに挑んだが敗れてしまったという。
そしてその時にこの地球になぜか残っていたゴブリンがあっちの世界にいる魔王軍と繋がりができてしまい魔王軍の侵略のための尖兵としてダンジョンと共にモンスターが送り込まれたというのだ。
「………そんな事が………」
「そんなことって………」
「ていうかまたダンジョンかよ………」
俺達3人は管理者さんの話を唖然としながら聞いていた。
情報が欲しいとは思っていたけど正直ここまでだとは思ってなかった…… …
それにまたダンジョン………こうやってこの世界のほぼ全員に知られたダンジョンをばれないように攻略した意味はどこに………
「そして残した一部のシステム『ゴブリンキングの巣』と同じようにこの世界とあのダンジョンである塔一帯を隔離しました。規模が大きすぎたので塔の付近というわけにはいきませんでしたが………そしてその残した一部の中のシステムを使って管理AIである私の意識をこのホムンクルスに移しました」
「………なるほど、それで今の状態になっているのですね?」
「はい、そうです」
エスカリアさんの問いに管理者さんが答える。
………んーなんかよく分からないなぁー………
とりあえず俺が分かる範囲でまとめると………
・管理者さんの本体は破壊されていて今の管理者さんはホムンクルスに自分の意識を移しました状態である。
・またダンジョンがこっちの世界に現れたけどそれは魔王軍の侵略の尖兵で、『ゴブリンキングの巣』と同じようにこっちの世界と隔離できた。
これぐらいだな。
………あれ?
それは不味くないか?
「ちょっと待ってくれ、確かゴブリンの時は俺達が倒したら消えたけど今回はどうするんだ?正直あの量は俺じゃあ無理だし?このままだとダンジョンから出てくるモンスターが減らないぞ?」
「確かにそうね。いくらソラさんが強くてもね………」
「そうですね、流石にソラ様でもあの規模のダンジョンは………」
3人がそんな事を言っている中、管理者さんは俺に微笑みかけてきた。
「大丈夫ですよ」
「え?なにが?」
管理者さんが大丈夫と言った理由が分からず俺は聞き返す。
すると管理者さんは答えてくれた。
「戦うのはソラさんだけではないということですよ」
「………どういうことだ?」
管理者さんの言葉の意味がよく理解できず俺は首を傾げる。
「簡単ですよ。これからはこの世界の人達にも戦って貰うんです」
「………はい?」
………どう言うこと?
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