調査と異常現象

ゆっくり寝た翌日、いつも通りの朝の支度をして家を出る。

行き先は勿論学校………ではなく、街だ。

朝起きてからゴブリンなどの目撃情報が無かったか調べてみたが、都合の良いことにゴブリンを写真や動画を撮った人は見当たらなかった。

………だが、それでもゴブリンを見てしまった人がいるらしくその人は警察に通報したらしい。

幸い、人が襲われるなどの被害は出なかったが、ゴミ袋が荒らされていたり、窓ガラスに傷が入っていたりと、被害が出なかっただけで色々と問題が起きていた。

………まずいな。

しかもゴブリンがいたのは俺の住んでいる楽泉町だけでなく東京の方でも目撃されているらしい。

だが、今のところその2ヵ所でしか発見、報告されておらず、通報後も直ぐに姿が消えてしまい警察もあまり真剣に調査をしていないようだ。

だけどなんでこの2ヵ所だけゴブリンが………なにか意味があるのか………?


「………しょうがない、行ってみるしかないか………」


俺は覚悟を決めて【気配感知】で人がいないのを確認してから【飛翔】スキルを使い東京の方向へ飛び出した。

そして数分後、ようやく目的の場所である東京に到着することができた。


「………なにもいないな………」


とりあえずビルの上に降りたのはいいが、辺りには特に何も見当たらない。

目視できる範囲にはいないし【気配感知】と【マップ】スキルの範囲内にもなにもない。

本当にここにゴブリンがいたんだろうか………


「………とりあえず手当たり次第探すしか無いな………寒いし」


結構高いビルにいるからかなり寒い。

というかめちゃくちゃ寒い。

そう思い、俺はまた【飛翔】スキルを使って空を飛び始め上空から探し始める。

………だがやはりどこを探してもゴブリンの姿はない。


「うーん、この辺にはいないのか?」


俺は一旦路地から地上に降りてスマホを取り出してネットニュースを見てみることにした。


「………やっぱりなにもないよな」


………どうしたものかな。

初めてゴブリンを見つけたときみたいに【看破の魔眼】と【鑑定】スキルを使って痕跡を探すのも考えたけどコンクリートだから足跡とかもないんだよなぁ………


「………はぁ………どうするかな………」


正直ここでは辞めたくない。

せめてなにか成果を得たい。

………このままじゃ本当に無駄足になっちゃうしな。

それに度々感じてる嫌な予感………今までも助けられたし無視するような事はしたくない。


「………よし、もう少しだけ探してみよう」


今度は念入りに探していくことにした。

………流石にここまで人が多いと飛びだせないから歩きでだけど………


***


それから数時間後………


「………全然見つからない………」


結局、俺はゴブリンを見つけることができず、痕跡すら見つけることはできなかった。

途中、ネカフェで幽体離脱(仮)をして調べたりしたがそれもダメだった。


「………もしかしてもう移動したのか?」


流石に移動しているとは思わないが、可能性としてはあるだろう。

もしそうなら今日はこのぐらいで切り上げて帰った方がいいかもしれない。

せめてなにか手がかりが残っていれば………


「………まあ、仕方ないか」


だけどこれ以上やっても見つかる気がしない。

今日は諦めて帰ることにする。

………なんかこうなると、いつもより疲れたような気分になるな。

だけどさっきから嫌な予感がしてならない。

………俺はなにに嫌な予感を感じているんだ………

そんな時だった。

………揺れている。

小刻みに地面が揺れている。

地震だ。

周りの人も驚いているが、そこまで大きいものでもないからか立ち止まる人は少なく、普通に歩いてる人が大半だ。

………だが俺は違う。

さっきより嫌な予感がどんどん大きくなっている。

早くここから離れないと………!

だけどそれは少し遅く揺れは更に大きくなっていく。


「ぐっ……!」


俺はなんとか耐えようと、近くの壁に掴まるようにして立っていると、ついに立ってられないほどの大きな振動が来た。

周りの人も流石にヤバいと思ったのか、その場にしゃがみ込む人や、悲鳴を上げる人もいる。

窓ガラスも割れ始める。

そして遂には地面のコンクリートまでひび割れる。

そしてなぜか辺りに影ができて暗くなっていく。


「きゃああ!なによあれ!」


近くから女性の叫び声が聞こえてくる。

俺は叫び声のした方に視線をそちらに向けると女性が指を空に向けていた。

そして急に辺りに影ができる。

まるで太陽が遮られてに隠れるように………

そして女性が指差した方に視線を向けてみるとそこには巨大な塔が立っていた。

しかもそれだけでなくその塔は少しずつ空に向かって塔は伸びていく。

………なんだこれは………一体何が起きているんだ………!?


「……ッ!!」


その光景を見ていた俺は何故か身体が勝手に動き出した。

地面が揺れているのも気にせず、俺はその場から走り出す。

………なぜこんな行動に出たのか分からない。

ただ本能的にあの場所に向かわなきゃいけないと感じたのだ。

後ろで何か聞こえる気もするが、今はそれよりもこの異常な現象の原因を知ることが先決だ。

………くそっ………嫌な予感はこれに対してだったのか………


「……なんなんだよこれ」


そして俺の視界にはとんでもないものが映っていた。

今も塔は伸び続けている。

そしてその姿はどんどん頂上が見えなくなっていっている。

そして塔に近づくにつれて悲鳴がどんどん増えていき、俺の耳に入ってくる。


「………なんなんだよ………なんなんだよぉおおお!!!」


…………俺の絶叫が響く中、遂に俺の目の前には信じられない光景が広がっていた。


「おいおい………嘘だろ………」


………そこには塔があった。

だが、今となってはそこにあったはずのビルが無くなっている。

崩れている。

無くなっている。

………全てその塔に巻き込まれていて巻き込まれていないビルは崩れ落ちている。


「なんだよ………なんだよこれ」


………それを見た俺はただ呆然と立ち尽くすことしかできなかった。

………なにが………なにが起こっているんだ………

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る