その後と2人のこれから

ダンジョン『ゴブリンキング』の巣を潰し、【飛翔】スキルを使って飛んで家まで帰ってきた。

勿論、路地に降りてばれないように警戒して装備を全部【アイテムボックス】にしまってからだ。


「ただいま~………」


流石にゴブリンキングとの死闘で心身くたくただ。

というかくたくたどころか【飛翔】スキルを解除した瞬間身体が鉛のように重くなってきた。

今日はもう寝たい………だけどエスカリアさんとアーニャさんに報告しなきゃ………

そして奥からパタパタという2人分の足音が聞こえてくる。

その音を聞いて俺は安心感を覚えながら2人が来るのを待つ。

そしてリビングの扉が開き2人の姿が見えた。


「お帰りなさいませソラ様」


「お帰りなさいカミヤマ」


2人は笑顔で俺を迎えてくれた。

その顔を見ただけで俺は心が温かくなるのを感じる。


「ただいま。2人とも遅くなってごめん」


「いえ。無事に帰ってきてくださっただけでも嬉しいですわ」


「ええ。無事でなによりです」


「うん。ありがとう」


俺は微笑みながら言う。

本当に心配してくれていたようで、2人が嬉しそうな顔をしてくれる。


「それで、ダンジョンはどうなったのですか………?」


「ダンジョンは潰れましたよ………ゴブリンキングもしっかり倒してきました。これでもう大丈夫ですよ………」


そう言いながら俺はふらつきながらもなんとか立ち上がり居間に行ってソファーに座ろうとする。


「ちょっ!?」


「わわっ!?」


しかし俺の体は限界だったのかそのまま倒れてしまい、2人を巻き込んで倒れてしまった。

そしてなにか柔らかい感触がする………

………あっこれダメなやつだ。

そんな柔らかい感触を感じながらそのまま俺は意識を失っ………スヤァ………


***


えーっと………おはようございます。

あの後疲れもあって俺は何故かベッドで目を覚まし、隣では俺の腕を枕にして眠る2人の姿が………え?

俺はその姿を見てまだ完全に目覚めてなかったが一瞬で目が覚めた。

ちょっ!?

や、柔らかい物が!?

そして直ぐに2人を起こさないように起きて2人に布団をかけてベッドから抜け出す。

そして洗面所に行き鏡を見る。


「うーん………やっぱり傷がある………まぁ仕方ないか………」


傷などは包帯やガーゼなどで治療されている。

まあ、しょうがないな魔法を使って大抵の体力を最後は削ってたし【吸収】スキルを使って体力を回復しきれなかったし【回復魔法】を使って回復する前に意識が落ちちゃったし。

まあ、とりあえず【ヒール】しておくか。

【吸収】出来るような相手がいないからしょうがないよな。


「【ヒール】」


とりあえず【ヒール】を使い怪我を治した。

そしておそらくアーニャさんが治療してくれたであろう包帯やガーゼを取っていく。

そして顔を洗い、着替えてから再び寝室に戻り、静かにドアを開ける。

するとそこには幸せそうに眠っている2人の姿があった。


「………うん………」


「むにゃ……」


2人はまだ起きる気配はない。

俺は少しの間その姿を見て、居間に行き考える。

………これからどうするかな?

ダンジョンも潰したしこれからは学校もある。

………まあ、前までの生活に戻るだけだな。


「…………なにを考えてるのですか?」


「うん。ちょっとこれからの事を………うん?」


俺今誰に話しかけられた?

なんか聞いたことある声が聞こえた気が………?

俺はゆっくりと声の聞こえた方を見る?

するとそこには既に起きていたのか俺を見て微笑んでいるエアーニャさんの姿が………


「………あっ、おはようございます」


「おはようございます。ソラ様」


「………いつの間に起きてたの?」


「えっと………ソラ様が部屋を出てからですね」


「………そっか」


そっか~俺が出て行ってすぐに起きたのか………

そういえばなんで俺は2人と一緒に寝てたんだろう………

まあいいか。

気にしたら負けだ。


「エスカリアさんは?」


「まだ寝ています。昨日はソラ様と一緒にいるといって長い時間起きていましたからね」


「そうなんだ………」


「はい。なのでもう少し寝かせてあげてください」


「うん。勿論だよ。俺のために起きててくれたんでしょ?じゃあいくらでも待つよ」


俺は笑顔で言う。

だって俺のためならいくらでも待とうと思う。

そしてエスカリアさんが起きたのはその5分後だった。

バタバタという足音が階段から聞こえてくる。

かなり急いでいるような足音だな。


「あっ!カミヤマ!よかった。起きてたのですね」


そして勢いよく扉が開きエスカリアさんが入ってきた。

起きてから直ぐに居間に来たからなのか髪の毛はボサボサだしパジャマ姿だが、目はぱっちり開いている。


「おはようございますエスカリアさん」


「ええ、おはようございます。………ってそうじゃないですわ!カミヤマ大丈夫なのですか!?体調は!?痛いところはありませんか!?」


「うん。大丈夫だよ。体調も悪くないし傷も【回復魔法】で治したからなんも問題なし」


俺は笑顔でいう。

実際身体に痛みもなければ違和感もない。

むしろ調子はいいぐらいだ。


「そうですか………良かったですわ………」


「ふふっ。本当にソラ様のことを心配してましたものね」


「ちょっ!?それを言うならアーニャも昨日カミヤマが倒れたらすごい慌てていたではありませんか!!」


「ちょっ!それは言っちゃダメですよ!」


「ふーん。やっぱりそうだったのか。ありがとう。心配してくれて嬉しいよ」


2人が慌てる姿を見て微笑ましく思うと同時に少し嬉しく感じた。


「っ!?べ、別に私はそんなつもりじゃ………」


「もう!!ほらっ!朝ご飯を食べますよ!!」


「うぅ………」


そして2人は逃げるようにエスカリアさんは洗面所に、アーニャさんはキッチンに行ってしまった。


「……やっぱり楽しいなぁ」


さっきのやり取りを見ていて思わず笑みがこぼれる。

やっぱり2人が一緒に住むようになってから毎日が楽しい。

前まではほとんど1人暮らしみたいなものだったけど今は違う。

こうやって誰かがいるだけでこんなにも変わるとはね。


「おっと、俺も着替えないとな」


流石に2人が寝ているところで着替える気はなかったからまだパジャマ姿だったのを忘れてた。

………あ!?そう言えば誰がパジャマに………考えないようにしよう。

そして俺は2人のように居間から部屋に移動して直ぐに着替えて居間に戻る。

するとアーニャさんが朝食の準備を既に終えていた。

顔はまだ少し赤いが行動は普通そうだ。


「お帰りなさい。着替えてきたんですね」


「うん、ただいま。流石にずっとパジャマっていうのもどうかと思うから着替えてきたよ。エスカリアさんも着替えてるのかな?」


「えぇ、そうですね」


するとアーニャさんは少し苦笑いしながら言った。


「……あの人また脱ぎ散らかしてるのでしょうね」


「……あぁ……確かに……」


俺は想像する。

………うん、容易にその光景が浮かぶ。

元第一王女なんだから家事全般出来るような気がしないな。


「とりあえずエスカリアさんの様子を見てきてくれるかな?」


「はい、わかりました」


そしてアーニャさんはエスカリアさんの寝室に向かう。

しばらく待つと2階からは2人の楽しそうな声が聞こえてくる。

そして少しの間話し声がした後、2人とも居間に戻ってきた。

ちなみにエスカリアさんはちゃんとした服を着ているし髪も整っている。


「すみません。お待たせしました」


「いえ、全然待ってないよ」


俺がそういうと2人も席に着いたので早速食べ始める。

今日も美味しいなぁ………


「ソラ様、昨日はちゃんと聞けませんでしたがソラ様はこれからどうされるのです?」


「………うん?特に考えてはないかな。多分今まで通りだと思う」


「そうですか………」


「何かやりたい事とかあるのですか?」


「………いや、特に浮かばないかな。2人は?これからなにかしたいこととかあるの?」


「そうですね………私はこのままメイドとして働かせていただきたいと思います」


「私はどうしましょう………」


「エスカリアさんは特に決まってなかったんだね」


「えっと、はい。ずっと何処かの家に嫁ぐか誰か婿を迎え入れて王妃になると思ってましたからやりたいことというのがあまり思いつかなくて………」


な、なるほど。

まぁ、エスカリアさんの場合第一王女だったんだからしょうがないよね。

それにエスカリアさんは美人だから引く手数多だっただろうな。


「………じゃあ俺と一緒に学校に通いますか?」


「え?学校ってカミヤマが通っている学園のことですわよね……」


「うん、そうだけど……」


「でもカミヤマは貴族ではないのでしょ?」


「うん、そうだね。日本には義務教育って言うものがあってね。まあ、俺が通ってるのは義務教育じゃないんだけど………まあ、そんな感じで大体の人が身分とかは関係なく学校に通ってるんだよ」


「そうですわね。私も学ぶ事自体は嫌いではありませんが………でもカミヤマと同じ学園に通うのは無理だと思いますわ」


「なんで?お金もまだ余裕あるし学費もそこまで高くないよ」


お金とかの心配してるなら問題ないし、いざとなればこの無駄に上がった知力ステータスを使えばFXでも株でも色々して稼げば良いしね。

正直知力のステータスが高すぎて何でも出来る気がするもん。


「そうですけど………ほら、私は元々この世界の住人ではないので前に説明していただいた戸籍というものがないのではないですか?」


「あっ……」


完全に忘れてた………


「なのでカミヤマが通う学園には入れないと思いますの」


「そっか……」


うーん、アーニャさんはメイドとしてこのまま働くみたいだしエスカリアさんも家の事をしてもらうってのもなぁ………大惨事の予感しかしないんだよな………

よし。


「戸籍とかは俺がなんとかするよ」


「えっ!?それは流石に悪いですよ!」


「いや、俺から提案したことだからね。それに2人には何も不自由のない生活を送って欲しいからさ」


「………カミヤマ………ありがとうございます。でも本当によろしいのでしょうか?」


「勿論」


「………わかりました。ではお願いいたしますね」


「うん。任せて」


クックックまともに行っても普通は戸籍なんて作ってもらえないだろう。

だけど俺にはスキルにステータスがある。

えっとまずは忍び込んで~知力をフル活用してハッキングやらの技術を習得して~

いや~やることがいっぱいだなぁ~


「………アーニャ、本当に大丈夫でしょうか?カミヤマが今まで見たことないようなとても悪い顔をしていますわ」


「………ふぅ、多分大丈夫でしょう。ただ少し不安になりましたが……」


「カミヤマってあんな顔出来たんですね………」


「はい、驚きました………」


クックック2人とも~聞こえてるぞ~

まあ良いや今すぐ実行すれば数日で終わるか?

最悪は夜中に忍び込めばいいし。

俺は2人のために頑張ろうと思う。

………勿論証拠なんて欠片も残さんぞ………

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