ゴブリンキング(後)
「はははは!!どうした!防戦一方ではないか!!」
「うるせぇ!」
俺はゴブリンキングの言葉に叫び返しながら鉈、拳、蹴りによる攻撃を俺も両手鎌、拳で捌いて、避けていく。
なんとか今は避けられているがこの分だとどこまで避けられるか………
正直一回でもまともに受けてしまったら俺の防御ステータスじゃあいつの攻撃を耐えきれない。
そして今もゴブリンキングの攻撃を避け続けているが少しずつだが攻撃の速度が上がってきているように感じる。
このままじゃジリ貧だな………
しょうがない………こいつ相手にやりたくないけどやるしかないか………
俺はゴブリンキングの拳をわざと避けられないように見せて両手鎌の柄で受け止めてゴブリンジェネラルのように壁まで吹き飛ばされて叩きつけられる。
そしてずるずると床まで落ちていく。
「なんだ………そんなものなのか………?つまらないなぁ………」
ゴブリンキングは俺が壁にぶつかった時も動かなかったことで、俺が諦めたと思ったのかそう呟いた。
「…………」
俺は無言のまま壁に背中を預ける。
そしてゴブリンキングはゆっくりと近づいてくる。
俺が動かないのに油断しているんだろう。
だが、この方法なら………確実に倒せる。
俺はゴブリンキングが近寄ってきているのを感じながら幽体離脱(仮)して身体から抜け出してゴブリンキングの後ろに回り込む。
そしてゴブリンキングの首を狙って掌に魔力を集める。
「【ウインドカ「フンッ!」っ!?」
ゴブリンキングの首を斬り飛ばすために【ウインドカッター】を発動させようとした瞬間、ゴブリンキングが反応して手に持っている鉈で斬りかかってきた。
しかも油断してしまっていたせいでゴブリンキングの攻撃に反応しきれず、俺の肩にゴブリンキングの鉈が掠った。
「がぁぁぁぁぁあっ!!!」
「ハッハッハ!見えないがそこにいるな!」
「くそがっ!なんで分かりやがったんだ!」
肩に痛みを感じながら自分の身体に戻る。
すると戻っても肩に痛みを感じる。
………なんでわかった。
それになんで攻撃を当てられたのかも、なんで痛みを感じたのかもわからない。
「おい。なんで俺があそこにいるってわかった。それになんで俺に攻撃を当てられた」
俺はゴブリンキングに問いかける。
これはわからない。
正直考えてる時間も惜しい。
「ん?なに、簡単なことだ。お前の居たところに魔力が集まるのを感じたただそれだけだ」
………どういうことだよそれ………
つまりこいつは俺が【ウインドカッター】を発動させようとしていた時にその発動前の魔力の動きからどこにいるかを察知したって言うのかよ………
だけどそれだと俺に攻撃が当たった理由と痛みを感じてる理由がわからない。
「………じゃあ俺に攻撃を当てられた理由は?」
「それは簡単だ。さっきのお前は幽霊種のような存在なのだろう?ならば物理攻撃は確かに効かないが魔力を纏わせれば攻撃は当たるようになる」
「なるほどね……それで攻撃が当たらなかったわけか」
そういう事だったのか………要するに俺が今まであの状態で痛みをなにも感じなかったのは魔力を使った攻撃じゃなかったから。
だけどそれがゴブリンキングの鉈に魔力が纏われていた事で俺に攻撃が当たったという事か。
そして痛みに関しては俺がゴーストだからと言うよりも元々身体にダメージがない分、身体にまでダメージがあるのはおかしい。
なのに痛覚があったということは単純に魂にダメージを受けた事で身体に影響したんだろう。
「最悪だよ………」
俺はボソリと呟く。
俺が今できる最大の攻撃が封じられたって事になるからだ。
………俺はゴブリンキングを見てそんな事を思う。
だが、そんなことを考えていても仕方がない。
どうにかしてあいつを倒す方法を考えないと………
俺がそう思っている間にゴブリンキングは俺に向かって走り出してきている。
そしてそのまま鉈を振り下ろしてきた。
俺はそれを横に飛んで避ける。
だが、そしてゴブリンキングが振り下ろした鉈は壁にめり込む。
そしてそこから亀裂が入り石造りの壁が崩れ始める。
「まじかよ………」
俺は思わずそう呟いた。
「ははははは!!どうした!逃げ回るだけかぁ!!」
ゴブリンキングはそう言いながら鉈を振って追いかける。
あれをまともに受けるわけにはいかない。
さて………どうするか………
………考えろ。
だけどあいつの攻撃を避けるのも忘れるな。
俺はそう思いながらゴブリンキングの攻撃をギリギリで避け続ける。
「はははははははは!死ねぇぇえ!!エルマ様のために死ぬのだ!」
「くそっ………」
ゴブリンキングはそう叫びながら俺に攻撃を仕掛けてくる。
そして俺はそれに対して悪態を吐きながらも攻撃を避けていく。
「おらぁっ!!」
そして俺が鉈を避けて拳をゴブリンキングの顔面に叩きつける。
だが、ゴブリンキングは少し後ろによろけるだけで直ぐに体勢を立て直す。
やっぱり武器を使わなきゃダメか…… …
だけど両手鎌だと速度が遅すぎて振ってる間にゴブリンキングに反撃されてしまう。
そうなると魔法を使うしかない。
でも俺の使っている魔法以外は基本的に防御に使う魔法や範囲が広い魔法ばっかりだ。
………うん?
範囲が広くても別に良くね?
今こんなにめんどくさい状況になっているのも回復と支援をしてるゴブリンクレリックが居るせいでゴブリンキングが更に手をつけられなくなってるんだからな。
ならいっそのこと広範囲に攻撃してゴブリンキングを倒せばいい。
「【ウインドカッター】!」
俺はそう考えてゴブリンキングに【ウィンドカッター】を放つ。
「無駄だ!そんなもの効かんわ!」
ゴブリンキングはそう言って魔力を纏わせた鉈で【ウインドカッター】を斬って防ぐ。
知ってた。
だから今まで使ってこなかった魔法を使うために詠唱する。
恥ずかしいなぁ………だけどこれぐらいのレベルの魔法になってくると詠唱が必要になってくるんだよなぁ………
「大いなる風!空に集いて吹き荒れろ!我が敵を切り裂け!【サイクロン】!」
ゴブリンキングは俺の詠唱を聞いた瞬間ゴブリンクレリックの前に立っている。
だけど元々俺の狙った場所はゴブリンクレリックだ。
ゴブリンキングに攻撃されてたら邪魔だし、ゴブリンキングの気を引くためにもゴブリンクレリックを狙うのが一番良い。
そして俺が放った魔法によってゴブリンクレリックを中心に竜巻が発生してゴブリンキングも一緒に巻き込んで吹き荒れる。
「なに!?うぉおおおっ!!!」
ゴブリンキングは驚きの声を上げている。
まあいきなり自分の後ろで竜巻が起きたら驚くよね。
それに竜巻が発生したせいで風が起こって俺も巻き込まれそうになる。
だから両手鎌の石突きを床に突き立てて巻き込まれないように耐える。
それに高レベルの【風魔法】の魔法だったから魔力の操作が難しい………っ!
………それにしても、かっこいい詠唱が思い付かなくてありがちな詠唱になっちゃった~みたいな詠唱でここまでの魔法が発動するとは思わなかったな………
「おい!この程度で我を殺せると思うなよ!!」
そして段々と風が弱くなっていき、視界が良くなってきたと思ったらゴブリンキングはまだそこに立っていた。
「ふぅ………まさか竜巻を起こすとはな………まったく、やるではないか」
だが、良く見てみるとゴブリンキングは全身切り傷だらけで緑色の血が流れていた。
それに加えて鉈は無事だったが盾はボロボロになっていて使い物にならないだろう。
そしてゴブリンクレリックはさっきの【サイクロン】に直撃したのか、頭から足まで全て切り刻まれていて、どんどん塵になって消えていっていた。
「くそっ!お前さえ居なければ………!」
「お前が弱いだけだろ?」
「黙れ!黙れぇぇえ!!」
ゴブリンキングは俺の言葉を聞くとさっきまでの余裕そうな表情から一変して鬼のような形相に変わる。
「貴様だけは許さんぞ………絶対に殺してやる………!」
そう言うとゴブリンキングは使い物にならなくなった盾を捨て先程よりも遅い速度で鉈を振り回して俺に向かってきた。
多数の切り傷の影響か、それとも【アシスト・スピード】が途切れたのかは分からないけど、確かに動きは遅くなっている。
その速さは俺からしたら余裕を持って対応できるぐらいの速さだ。
だから俺はゴブリンキングの攻撃を避けつつ隙を見ては攻撃していく。
「くっ!ちょこまかと………!」
ゴブリンキングは俺が攻撃をしてくる度に悔しそうに声を上げる。
そしてゴブリンキングの攻撃はだんだんと大振りな攻撃が増えてきた。
「もう終わりなのか?」
「うるさい!うるさい!」
俺は挑発するようにそう言いながら攻撃を避けていく。
【デスサイズ】を使っても良いのだが今のゴブリンキングの状態なら魂より身体にダメージを与えた方が良さそうだ。
「おらぁっ!!」
「ガァァァァァアアアッ!!!」
俺はゴブリンキングの振り下ろしてきた攻撃を避けて、そのまま攻撃してきた腕を斬り落とす。
そしてゴブリンキングが痛みに耐えながら俺を睨みつけてくる。
「死ねぇぇえええ!!」
そしてゴブリンキングは残ったもう片方の腕で俺を殴りかかってくる。
だけど俺はゴブリンキングの拳が届く前に、ゴブリンキングの首を斬り落とした。
「ガッガ………エ…ル……マ…様………申し訳……ございま……せん」
首だけになったゴブリンキングは涙を流し、そう呟くと塵となって消えた。
ゴブリンキングが消えると、奥の方にまた扉が出現したのが見えた。
「………これでこのダンジョンが潰れるか………」
とりあえずゴブリンキングを倒したことで現れた扉の先に行けるようになった。
俺は少しだけホッとした気持ちになりながらもゴブリンキングが落とした鉈、魔石を【アイテムボックス】に回収して【吸魂】をしてゴブリンキング、ゴブリンメイジ、ゴブリンクレリックの魂を吸収してその部屋に入っていく。
扉を開けた先はさっきのゴブリン達のいた場所よりも広い空間になっていた。
そして床には魔方陣がある。
【看破の魔眼】で確認するが特に罠というわけではなく【鑑定】しても『転移の魔方陣』という名前しかわからず、どんな効果を持っているのか分からなかった。
名前からして転移する魔方陣のはずなんだがどこに飛ぶかわからない。
「………乗るか」
もしかしたらボス部屋の前とかに出るかもしれないが、今は他に方法がないので俺は魔方陣の上に乗る。
すると魔方陣が光輝いて一瞬にして目の前の景色が変わる。
その景色はダンジョンに入る前の出入り口の前だった。
「よし、」
俺はちゃんとダンジョン転移できたことに安堵する。
そして次の瞬間ダンジョンの出入り口から地響きが起こり始めた。
「な、なんだ!?」
突然の地響きに驚きつつもなんとか立てている。
だけどその地響きは段々と強くなっていてダンジョンの出入り口を中心に地響きが起こっている範囲が広がっているのか遠くで鳥がどんどん逃げていっているのが見える。
だけどダンジョンの出入り口から凄まじい勢いで土煙が上がっていて中の様子が全く見えない。
もしかして………
「………ダンジョンが潰れていっている?」
もしかしてゴブリンキングが死んで俺が出てきたからか?
そしてしばらく時間が経つとダンジョンの出入り口が壊れて崩れ去った。
「これで………終わりなのか?」
正直こんなになにもなく終わるとは思わなかった。
ボスを倒したらなにかあるのかと思ったけどなにもなかった。
それにゴブリンジェネラルはキングとクイーンと言っていたがクイーンは見ていない。
だけど流石にダンジョンがこんな事になったら生きてはいないだろう。これで………終わったんだ。
「………うっし!帰ろう!」
こうして俺は【飛翔】スキルを使ってエスカリアさんにアーニャさん、ユキの待っている家に帰るのだった。
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