プレゼントとゴブリンキング
装備を作り始めてから1日。
短いようでとてつもなく長い時間が経った。
まずは結果から話そう。
結論を言うと全装備作り終えた。
まあ作る装備が少なかったというのもあるが。
それに【錬金】もかなり慣れてきたのでそれほど時間はかからなかった。
当初の予定通り手甲、脚甲、胸当てを作り、オマケでアーニャさんに頼まれたような魔鉄の糸をまた作りそれを使ってインナーも作った。
まあこれだけ作れば十分だろうと思い完成品を見てみる。
1つは見た目は普通の籠手に足具のようなものだ。
鑑定結果は魔鉄の手甲、魔鉄の脚甲、魔鉄の胸当て、魔鉄のインナーとなっている。
まあ、やっぱり名前はシンプルだが結構良い性能をしていて俺がまあまあ力を入れて叩いてもへこまないし何よりレアリティ、品質も魔鉄の両手鎌と同じで上級とBだ。
「これはいいな」
レアリティ、品質が同じ魔鉄の両手鎌が今までこんなに活躍してるんだからこれらの装備も活躍してくれるだろう。
まあ頑張った甲斐があったな。
とりあえず防具も作り終わったし明日のために休むか………
ベッドに入ってっと………
よし。
おやすスヤァー
***
翌日。
しっかり寝坊することもなく朝に起きて準備をする。
昨日作ったインナーを着てジャージを着る。
そして昨日作ったものを全部【アイテムボックス】に入れて部屋から居間に移動する。
居間に移動するとあり得ない光景が広がっていた。
そこには机に突っ伏して眠っているパジャマ姿のエスカリアさんとアーニャさんがいた。
それはまだいい。
だけどそれだけではなく眠っている2人の周りにには多数のよくわからない生地の残骸とその元の切り取られる前の生地が散乱していた。
「え?何これ?」
意味がわからず呆然と立ち尽くしているとエスカリアさんの方が目を覚ました。
「ん………ふぁ〜おはようございますカミヤマ」
「うん。おはよう。それで起きたばっかりで悪いんだけど、これは一体どういう状況なの?」
「ふぇ?状況?」
「そう。この状況」
「この惨状です………か………」
眠そうな目をしながらエスカリアさんは周りを見渡してから固まる。
そして数秒固まった後ハッとして慌てて言い訳を始めた。
「こ、これはですね!えっと………あの……………アーニャ~!起きて~!」
「ん~………うぅーん」
「ほら早く!」
「むにゃ……カミヤマ様……それはダメです」
「なんの夢見てるの!?」
「うぅーん………ソラ様………そこは弱いのです………」
「ちょ、ちょっと待てぇーい!!」
このままにしておくととんでもないことを口走りそうなアーニャさんを揺すって起こす。
「アーニャさん!起きて!起きて!………起きろー!」
「うぅーん……はっ!?私ったらはしたない姿を……申し訳ございません」
やっと起きたのか顔を真っ赤にして頭を下げる。
「あ、ああ。ま、まあ起きてくれたならそれで良いよ………」
「ありがとうございます………」
「さて、それじゃあ起きたばっかりで悪いんだけど。これ、どうしたの?」
俺は床に落ちている生地の残骸達を見ながら聞く。
「えっと………お嬢様、まだ渡されてないんですか?」
「そ、その……うん」
「………はぁー………」
「うぅ………だってアーニャと一緒が良かったんですわ………」
「……分かりました。私が説明しますね」
それからアーニャさんが説明してくれた内容はこうだ。
昨日の夜。
俺が部屋に戻った後、アーニャさんが俺にプレゼントを送るために裁縫をしていたらしい。
そこで自分もやりたいとエスカリアさんが言って来たため一緒にやっていたそうだ。
しかし、そこは元第一王女。
裁縫なんてしたこともあるはずなく失敗しながらもアーニャさんが手伝うことでなんとか完成したらしい。
そしてアーニャさんが作っていたものもエスカリアさんを手伝っていて遅れてしまったらしい。
「なるほどな」
つまり2人は俺へのプレゼントを作るのに夢中になりすぎて夜遅くまで作っていて寝落ちしてしまったということか。
多分だけどエスカリアさんが先に寝てしまってアーニャさんがエスカリアさんにブランケットをかけたんだろうな。
そんなことを考えながら俺は苦笑する。
まあ、別に俺のために作ってくれていたのだから文句を言うつもりはないな。
「そしてこれがその完成品です。受け取ってください」
「わ、私のもどうぞ………」
「あ、ありがとう」
どこから出したのかわからないがアーニャさんからはフード付きのローブを。
エスカリアさんからは手袋をもらった。
どっちも黒色だ。
アーニャさんが作ってくれたフード付きのローブは丈は長いが戦闘に邪魔になりそうな長さではなく動きやすそうな出来になっている。
そしてエスカリアさんの作ってくれた手袋はいわゆる指ぬきグローブと呼ばれているもので指先は出ているし厚さは薄いがとても頑丈そうだ。
そしてプレゼントを受け取った事で気づいた。
エスカリアさんの指先が絆創膏だらけなのだ。
「あ、あれ?もしかして結構無理してた感じ?」
「あ、いえ。大丈夫ですよ。慣れないことで少し失敗しただけですから」
「そうなんだ。ありがとう俺のためにこんな良いものを………本当にありがとう」
「喜んでもらえて嬉しいです」
「よかったです」
2人とも笑顔で答えてくれる。
「あ、そうだ。エスカリアさん手を出してくれるかな?」
「え?手をですか?大丈夫ですけど」
エスカリアさんの綺麗な手が俺の掌に乗せられる。
そしてその状態で掌に魔力を集める。
「【ヒール】」
すると掌から緑色の光が放たれエスカリアさんの手を覆う。
「な、何をしているのですか?」
「ん?ただの【回復魔法】だよ」
「そ、そうだったのですね」
「ソラ様は【回復魔法】も使えるのですね」
「まあ、一応ね」
「凄いです!」
「ふふっありがとう」
それからエスカリアさんの絆創膏を剥がして手を見てみるが完全に治っているようだ。
これでもう大丈夫だろう。
「ありがとうございます。カミヤマ!」
「ん、いやいやこれくらい大したことじゃないよ」
「それでもお礼を言いたいのです」
「そっか、それじゃあどういたしまして」
「はい!」
満面の笑みを浮かべるエスカリアさん。
うーん。やっぱり可愛いな。
それにこうやって喜んでいる姿を見るとこっちまで嬉しくなって来るな。
「そうだ!カミヤマ!さっき渡したのを着てみてください!」
「え?今ここで?」
「はい!是非とも着ているところを見たいのです!」
「わ、私も見てみたいです」
「んー………わかったよ。ちょっと待ってて」
そう言って俺は渡されたローブと指ぬきグローブを持って部屋に戻って着替えることにした。
「お待たせ」
俺はさっそく貰った服を着て居間へ戻って来た。
「よく似合ってますわ!」
「はい。とてもお似合いです」
「そ、そうかな?」
自分では分からなかったがそんなに似合っているだろうか。
戦闘するって言っても普通にジャージしか着てなかったし。
「はい。とても格好いいと思いますわ」
「私もそう思います」
「そ、それなら良かった……」
正直恥ずかしいな。
でもせっかく2人が作ってくれたものだから大切にしよう。
「それにしてもなんでこんないきなりこんなに良い物をくれたの?」
「それは、その………これからダンジョンをカミヤマの助けになればなと思いまして………」
「私も同じですわ!」
「ああ、そういうことだったのか」
確かに今日、これから俺はダンジョンに向かう。
この2人の気持ちはとてもありがたかった。
「ありがとう。本当に嬉しいよ」
「いえ、そんな……」
「私はただカミヤマの力になりたいと思っただけですから」
「それでも2人のおかげで頑張れる気がする。本当に感謝してるよ」
「……は、はい……」
「……ど、どういたしまして……」
なんだか照れ臭くなってきたな。
俺も2人も顔を赤くしながら俯いていた。
グゥ~
クゥ~
クゥ~
その時だった。
突然、大きな音が鳴り響く。
その音はまるで何かを催促するように何度も鳴った。
「………」
「………」
「………」
音の発信源はこの場にいる全員。
つまり………
「………」
「………」
俺とエスカリアさん、アーニャさんは顔を見合わせる。
そしてそのままエスカリアさんがアーニャさんの方を見る。
するとアーニャさんは俺を。
俺はエスカリアさんをそれぞれ見る。
「ぷっ………」
「ふ、ふふふっ……」
「あはははははは!」
3人で一斉に笑い出した。
「まさか俺達全員のお腹が鳴るとは思わなかったね」
「はい。これは少し恥ずかしかったですね」
「本当にびっくりしましたわ」
「そうだよね……よし、ご飯にしましょうか」
「賛成です!」
「はい」
「わふ~………」
「うおっ!?ユキ!?いつの間に!」
「ワフゥ♪」
俺達が話している間にいつの間にか俺達の足元に来ていたユキに驚きつつ、俺達は朝食の準備を始めた。
そしてユキも含めた皆で一緒に朝ごはんを食べ始めたのだった。
***
「この先にゴブリンキングが………」
俺がいるのはダンジョンの5階層。
ゴブリンジェネラルのいた部屋。
あれからエスカリアさんとアーニャさんに見送られてここまでやってきた。
勿論、無事に帰ってくる事を約束して。
とりあえず自分の装備している武器、防具を最後に確認しとく。
ここまで魔法だけで戦っていたし一直線で来たからなにも壊れていないし傷もついていない。
「………よし!行くか!」
気合を入れて扉を開けて扉をくぐる。
扉を抜けた先はゴブリンジェネラルのいたような部屋で違う所は洞窟のような壁や床ではなく石造りの部屋になっていた。
その部屋の中央には今まで見た中で1番大きい身体をしたモンスターがいた。
【鑑定】なんて使わなくてもわかる。
あれが………ゴブリンキングだ。
「グォオオ!!」
「うぉおお!!?」
いきなりの叫び声に驚いてしまったがすぐに冷静になる。
俺はゆっくりと息を整えながら前を見た。
そこには身長3メートルを超える大柄な体躯のゴブリンが立っていた。
右手に持つのは身の丈ほどある巨大な鉈。
左手にある盾は木でできたものとは違い鉄製だった。
しかもただの鉄じゃない。
魔力を感じられるからあれは魔鉄だ。
「ははっ!やっぱり凄いな!」
思わず笑ってしまう。
威圧感が凄まじいのにそれが全く苦にならない。
それにさっきまでは見えていなかったがよく見てみると後ろに複数のゴブリンが見える。
そのゴブリン達は全員杖を持っている。
それが表すのは全員ゴブリンメイジかゴブリンクレリックという事実だ。
絶望的な状況だがむしろやる気が出てくる。
「さぁ行くぞ!お前らの経験、魂、全てを俺の物にしてやるよ!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます