落ち着きと事情説明
「う~ん………」
オースターさんの寝ているソファーの方から声が聞こえてきた。
どうやらオースターさんが起きたらしい。
俺は急いで、オースターさんの元へ向かをうとするがアーニャさんに1回止められる。
そして俺を止めたアーニャさんはオースターさんが寝ているそふぁの元に向かっていく。
「大丈夫ですか?」
そう言ってアーニャさんはオースターさんに声を掛けた。
すると、ゆっくりと目を開けて起き上がったオースターさんが俺を視界にいれた瞬間俺に何か言おうとしてたのだが、アーニャさんに口を塞がれていた。
「ムー!」
「申し訳ありません。カミヤマ様、少々お待ちください」
「え?あ、うん」
「失礼いたします」
そう言ってアーニャさんはオースターさんの口に手を当てたままソファーからオースターさんの体を起こして居間から出ていってしまった。
俺はその様子を待つことしかできなかった。
まあ、でも声は聞こえないけどすぐそこの廊下にいるのは気配で分かる。
それから10分ほどたった頃だろうか。
2人が戻ってきた。
しかし、何故かオースターさんは涙目になっていた。
「えっと、何があったの?」
俺が聞くとオースターさんは勢い良く頭を下げた。
「ごめんなさい!本当にすみませんでした!」
「え、ちょっ!?」
突然謝られても困ってしまうんだけど。
ていうか、なんで泣いているんだろう。
「あの、どうしてそんなに謝っているんですか?」
「それは、私が貴方に結婚を迫って襲おうとしたからです」
……ん? 今なんて言ったこの人。
結婚を迫ったっていうのはさっきの事だろうから分かる。
だけど今襲おうとしたとかなんとか言わなかった?
聞き間違いだよね?
俺の耳おかしいもんね?
だってそんなことあるわけないじゃん。
はっはっは。
………………………は?
「………は?」
「本当、私なんてことをしてしまったんでしょう………」
オースターさんは自分のやった事に後悔しているのかずっと頭を項垂れている。
いや、それよりも。
「ちょ、ちょっと待って?」
俺は思わず突っ込んでしまった。
「オースターさんは一体何を言ってるんだ!?」
俺の言葉を聞いたオースターさんは顔を上げてキョトンとしている。
その様子はとても可愛かった。
じゃなくて!!
「だから、私はあなたに無理やり結婚を迫りまして、襲おうとして……」
「まあ、それはそうだけど………てか襲おうとしたってなに!?」
「え?そのままの意味ですよ?○○して既成事実を作って結婚してしまえばいいと思いましたし」
「思ったんです、じゃねぇよ!まず思うんじゃないよ!第一王女!」
多分居間から出ていってから廊下でアーニャさんに何か言われてたんだろう。
だけど全然反省してないし、むしろ開き直ってるように見えるけどそこの所どうなのアーニャさん。
「はい。大変申し訳ありません。実はですね………」
なるほど。
つまりこういう事らしい。
オースターさんが言うには、裸を見られたからその責任を取ってもらうために俺と結婚すればこれからこの異世界にアーニャさん共々追い出されること無く暮らせると思ったようだ。
確かにそれは間違っていない。
実際、日本人の俺としてはそうなっていれば責任を取るためにオースターさんとアーニャさんにこの世界で生活できるようにサポートしていただろうしあっちの世界に帰れとかは確実に言わなかっただろう。
「そういう事でした。でも、それでしたらカミヤマ様が嫌なら無理にとは言いません。ただ、私は諦めませんけどね」
オースターさんはそう言った後、「ふぅー」と息を吐いて少し笑った。
その笑顔を見てドキッとした自分がいた。
………くそぉ〜、こんな美人の人にあんなこと言われたら誰だってドキドキするじゃないか!
「じゃ、じゃあこの話はここまでにしてお互いそれぞれの事情を話そうか」
「カミヤマ様、顔が赤いですよ?」
「………アーニャさん、あまり気にしないでくれるかな?」
「はい、分かりました」
分かってくれたようで良かった。
これでこれ以上追及されたらたまったもんじゃない。
俺は心を落ち着かせて2人と話すことにした。
「とりあえずお互いまた自己紹介からしようか。俺は神山 空。年齢は16歳。一応この家の家主だよ」
「では次は私から。エスカリア・ウタリア・オースターですわ。年齢は14歳。趣味は読書で嫌いなものは虫全般です。これからは家名ではなくエスカリアと呼んでほしいですわ」
うん、普通だ。
オースターさんは本当に第一王女という肩書き以外は普通の人なんだなって改めて思った。
そして許可がでたのでこれからはエスカリアと呼ばせてもらおう。
「次、アーニャ、お願いします」
「はい。私はオースター様にお仕えしておりますメイドのアーニリカと申します。年齢は15歳です。改めてよろしくお願い致します」
「ああ、こちらこそ」
次に事情を話したいんだけど良いのかな?
でも、まだ起きてからそんな時間経ってないからあんまり負担はかけたくないんだよなぁ。
うーん。
大丈夫そうだしいいかな?
2人とも了承してくれたし。
だけどまずはちょっと確認だ。
「それじゃあ、まずはアーニャさんに聞きたいんだけどいいかな?」
「はい、なんでしょうか?」
「えっと、さっき俺が居間に来た時に本を読んでたけど日本語が読めたの?」
「いえ、読めませんでした」
やっぱりか。
「………え?じゃあ何で読んでたの?読めないんでしょ?」
「お嬢様のためにお嬢様が読める本がないか探していました。それと遅れましたが、勝手に本を触ってしまったことを謝罪します。申し訳ありませんでした」
「いや、それは別に構わないけど……」
それにしても凄いな。
俺だったら絶対にできないよ。
だって読めないし教えてくれる人もいないんだもん。
言うなれば未発見だった言語を何もヒントもなしに解読するようなものだ。
俺にはできない。
まあ、そもそも俺は勉強苦手だから1人でやるっていう選択肢が無いんだけどな!
「ありがとうございます。それでカミヤマ様、質問なのですがよろしいですか?」
「え?ああ、いいよ」
「先程カミヤマ様が仰っていたニホン語というのは一体どのようなものなのでしょうか?」
………ああ、うん。
そうだよねまずはそこからだよね。
俺はアーニャさんが読んでいた本を持ってくる。
「ほらこれを見て。これがひらがな、こっちはカタカナ。漢字は今は難しいと思うから省略するね。これらが全部日本語だよ」
アーニャさんは俺が見せた文字をまじまじと見つめている。
まあ、そりゃそうだろう。
ここ日本で使われている日本語はエスカリアさんとアーニャさんがいた世界の物とは全く違うだろうしね。
「……なるほど。確かに見たことの無いものですわ」
「うん。それで俺が使ってる言葉はこの日本語って言ってここ、日本で使われている言葉だね。それにそれだけじゃなくて「カミヤマ様、少し待ってください」
どうしたのだろう? アーニャさんが何か考えているように見える。
「カミヤマ様、この世界では魔法は使えるのでしょうか?」
「え?いや多分俺以外には使えないと思うけど。こっちの世界では魔法じゃなくて科学というものが発展してるからね」
そういえば魔法の存在すっかり忘れてた。
アーニャさんのあの反応だとアーニャさん達は魔法が使えたんだろうか?
「……そうですか。分かりました」
……ん? よく分からないけど納得できたようだな。
とりあえず話を進めようか。
「じゃあ、次はエスカリアさんとアーニャさんの2人に聞きたいんだけど」
「はい」
「なんでしょう?」
「2人ともこれは分かる?」
そういってテレビのリモコンを使ってテレビをつける。
「いえ。わかりませんわ」
「私も同じです」
よしよし。
これでわかった。
でも俺がレッサーレイスを統合したのは話しても良いのかな?
「う~ん。まあ、いいか話しちゃっても」
「何の話ですの?」
「うん。それがね………」
俺は2人にレッサーレイスのことと統合したことを説明することにした。
エスカリアさんとアーニャさんは驚いている様子だ。
まあ当然の反応だよな。
まあ、それでも俺が乗っ取られているような感じではないらしいから安心はしているみたいだけど。
そしてそのレッサーレイスの統合が俺がエスカリアさんとアーニャさんの言葉が分かるようになっている原因で、同時に2人が俺の言葉が分かるようになっている理由じゃないかということを説明した。
一通り説明が終わったところで、エスカリアさんが口を開いた。
「カミヤマ様のおっしゃることはよく理解できましたわ。ですがカミヤマ様、あなたは本当にお強い方なんですのね」
「え?どうして?」
いきなり褒められてびっくりしてしまった。
何でそんなことを言われるのかも分からなかったし。
「普通はそのようなことを簡単に信じられるようなことでは無いと思いますわ。しかしカミヤマ様は実際に私たちに力を貸してくださった。そして今もこうして信じてもらえるようにご自分のお力をお見せになってくださいました。ですので私はあなたのお言葉を信じることが出来ますわ」
「………そ、そっか」
そう言ってもらえると嬉しいな。
俺としても頑張った甲斐があった。
「ですので………私達を信じてくださったカミヤマ様に知っておいてほしいのです。………私が、命を狙われている理由を」
「え!?」
思わず声を上げてしまった。
まさか話が聞けるとは思わなかった。
俺は黙って話の続きを聞く。
それは今まで聞いた中で1番衝撃的な内容だった。
どうやらエスカリアさんが命を狙われている理由は冤罪らしい。
なんでも、自分は何もしていないのに突然エスカリアさんのウタリア王国の王である父親に突然謁見の間に呼ばれたと思ったらそこで国家反逆罪の冤罪で殺されそうになったとか。
今までとても優しかった父親の突然の豹変に戸惑っている間に近衛兵によって無理やり連れていかれたそうだ。
その後は何とか逃げ出せたものの追手が来ており、アーニャさんのお陰でなんとか逃げれたらしい。
「……というわけなんですの」
「……そうだったんだ」
「はい。そして、逃げてる途中でゴブリンに襲われてしまい連れていかれていたところをカミヤマ様に助けていただきました」
なるほど。
それで今に至ると。
「だから、カミヤマ様には感謝してもしきれませんわ。こんなにも早く安全を手に入れられるなんて思いもしませんでしたもの」
「…………」
「カミヤマ様?どうかなさいましたか?」
「え?あ、うん。何でもないよ!」
危ない危ない。
ちょっとぼーっとしてしまっていた。
「それより、これからどうしようか」
2人は顔を見合わせる。
そして2人一緒に俺の方を向いて言った。
「「カミヤマ様についていきますわ(行きます)」」
「え?でも……」
「だって、他に頼れる人もおりませんから」
「それにカミヤマ様はお優しい方です。きっと私達のことを助けてくださいます」
そんな期待を込めた目で見られると困るんだけど。
「う〜ん」
「お願いします!カミヤマ様!!」
「カミヤマ様!!」
「う、う〜」
……はぁ。
こうなった以上仕方ないか。
俺が2人の面倒を見ないとな。
「分かった。じゃあ2人ともよろしくね」
「「はい!!こちらこそよろしくお願いいたします」」
こうして2人を仲間にした俺は早速2人にこの世界の常識を教えていくのだった。
………言語問題はなんとかしなきゃなぁ。
《???side》
「クゾッ!クゾッ!ナンナノダアイツハ!!」
「荒れてるね~」
「ッ!ナニモノダ!!!」
「いや~見てたよ~凄かったね~彼」
「ウルサイ!ナニモノダトキイテイル!!」
「まあまあ。落ち着いてよ。僕だよ。エルマ=ヴィレント。忘れちゃった?」
「エ、エルマサマ!?ナゼココ二!?」
「そりゃ、君の様子を見に来たんだよ。いや~困るんだよね今このダンジョンが攻略されると」
「モ、モウシワケアリマセン。ワタシノチカラブソクデ」
「ああ、別にいいよ。そんなことは。ただ、僕の計画の邪魔だけはしないで欲しいんだよね」
「ハ、ハイ。カシコマリマシタ」
「うん。それなら良いんだ。あと君にはもっと働いてもらうことになると思うけど」
「ハイ。マカセテクダサイ」
「ははっ。頼りにしてるからね。………そのためにも君には生きてもらわなくちゃいけない。それはわかるね」
「ハッ!」
「それで?勝てるの?彼に」
「ムロン!カッテミセマショウ!」
「………事実を述べろ。嘘はいらない」
「………オソラクムリカト。アノオトコオソラクワタシノブカタチヲタオシタコトデヨリツヨクナッテイルカトオモワレマスノデ」
「そうか。……まあいいか。君に任せよう。好きにやってくれたまえ。そのための力は与えよう」
「アリガトウゴザイマス!」
「ほら」
「グ、グオオオォォォォォオオオオ!!!」
「それじゃあ頼んだよ
「はい。………お任せください」
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