ふむ………眼福眼福………
そして家が見えてきた所で減速していつも降りている路地裏ではなく庭に降りる。
「はい、到着」
「はぁはぁ……カミヤマ様……一体何をされたのですか?」
「はぁはぁ……急に飛び上がってびっくりしました……」
2人とも息を切らしながら質問してくる。
俺は2人に微笑みながら答える。
「ごめんね、驚かせちゃったみたいで。でも、これで分かったと思うけど俺は空を飛べるんだ」
「はい……それはもう、よく分かりましたわ……」
「すごいですねぇ」
2人は少し呆れ気味な感じで言ってくる。
まあ、普通は信じられないだろう。
だけど2人はこの世界の常識が通用しない異世界から来たであろう存在だ。
俺が使えるのなら2人もスキルを使える可能性だってあるだろうしステータスだってあるだろう。
だから俺は2人に対して簡単に説明する。
「俺が使ったのは【飛翔】っていうスキルだよ。これは翼が無くても飛べるようになるスキルなんだ」
「なるほど。そんな便利なスキルもあるのですね」
「ええ、そうですわね」
とりあえず納得してくれたようだ。
「それじゃあ、2人とも入ってくれ」
「わかりましたわ」
「失礼いたします」
俺は2人を連れて家の中に入る。
勿論、家には誰もいないから人がいるわけがない。
2人はボロボロになった靴を玄関で脱いでついてくる。
リビングまで案内した俺は椅子に座ってもらって飲み物を用意………しようとしたのだが………
先に風呂に入ってもらった方が良いかな?
オースターさんもアーニャさんもどっちも服がボロボロだし多少なりとも汚れているだろうだしな。
「え~っとオースターさんもアーニャさんも先に風呂に入って汚れを落としたいよね?」
「お風呂があるのですか!?あるのなら是非とも使わせてほしいです!」
「お、お嬢様?落ち着いてください」
「あっ!す、すみません………」
アーニャさんに窘められたオースターさんは顔を赤くして俯く。
それにしても、やっぱり女性としては風呂って大事なんだろうな。
オースターさんの方は慣れた様子だがアーニャさんは自分も入って良いのかという感情が透けて見える。
やっぱりオースターさんは王女って言ってたし王族としてのお風呂事情はかなりいいみたいだな。
対してアーニャさんはそんなに自由に風呂には入れないっぽいな。
「わかったよ。今すぐ準備するから待っていてくれ。オースターさんとアーニャさんは今から居間に案内するからそこでくつろいでてくれ」
「はい、ありがとうございます。お言葉に甘えさせていただきますわ」
「お待ちくださいカミヤマ様。私も手伝わさせてください」
アーニャさんが手伝いを名乗り出てくれたが俺は首を横に振る。
「大丈夫だよ。1人でやれるからさ」
「しかし……」
「それにほら、手伝うって言っても使い方が分からないだろうし」
「うっ……確かに………わかりました。では私はお嬢様と一緒に待たせて頂きます」
アーニャさんは渋々と言った感じで引き下がってくれた。
良かった。手伝ってくれると言ってくれたのはありがたいが流石にやり方を教えながらだと時間がかかるからな。
その点、俺だけならすぐに終わらせられるからな。
俺は2人を居間に連れていってから飲み物を出して直ぐに風呂の準備を始める。
まあ、普通に浴槽を洗って水を入れてお湯を張っていくだけだから大したことは無いんだけどな。
「よし、こんなもんか」
10分くらいかけてようやくお湯張りが完了したので2人が待っている居間に向かう。
するとオースターさんはソファの背もたれに背を預けて座っていて、アーニャさんは落ち着かない様子でオースターさんと同じソファーに座っていた。
改めてそんな2人の格好を見てみると結構汚れていたのか薄汚れていて所々破けている箇所があった。
特にアーニャさんのメイド服なんてもう穴だらけだ。
一応、破れていない部分を使って応急処置をしているみたいだけどかなり痛々しい。
やっぱりダンジョンの時はじっくり見てなかったからわかりづらかったけど2人とも結構酷い状態だな……
服も着替えてもらわないと………って2人の服どうしよう………とりあえず服は後で買いに行くとして今日は俺の服を着てもらっておくしかないか。
「2人とも、風呂ができたから入ってきて良いぞ」
「本当ですか!?」
「カミヤマ様、本当によろしいのでしょうか?」
「もちろん。遠慮せずに入って来ていいよ。………おっと、その前に使い方も教えなきゃか」
「はい、わかりましたわ」
「ありがとうございます」
2人は立ち上がって俺についてきてそのまま浴室に向かっていく。
「そういえば2人共ソファーはどうだった?」
「そうですね。私の家にあるベッドよりも寝心地が良さそうな気がします」
「とても座り心地が良かったです。本当に私が座っていても良かったのでしょうか?」
2人とも気に入ってくれたようで何よりだ。
「大丈夫、そんなに気にしなくていいよ」
「そうですか……それならよかったのですけど……」
「それより、まずはここが脱衣所でこっちが風呂場だから。タオルとかはここに置いてあるから使ってね」
「わかりましたわ」
「はい、ありがとうございます」
俺は2人に軽く風呂場の使い方を説明してから2人の着替えのための服を取りに俺の部屋に向かう。
勿論、女性物の下着なんて無いのでそこは我慢してほしい。
俺は自分の部屋に入ってタンスを開けて適当に見繕った服を取り出していく。
………オースターさんの方はまだ何とかなるかもしれないがアーニャさんは胸部装甲の破壊力が凄そうだな。
……って何を考えているんだ俺は。
取り敢えずこの辺の服でいいかな。
俺は適当なTシャツやジーンズを選んで持っていくことにした。
TシャツはLサイズでズボンはMサイズのものを用意した。
「オースターさん、アーニャさん。これ………を……え?」
俺は持ってきた服を置くために脱衣所に入る。
そこにはオースターさんとオースターさんの体をタオルで拭いているアーニャさんがいた。
俺はそんな眼福な光景を目にしてしまい固まってしまい、目を逸らすこと事もできなかった。
だが、オースターさんとアーニャさんも突然入ってきた俺に驚いたらしく、お互いに見つめ合ったまま動かなくなってしまった。
「「き……きゃぁああああ!!」」
「すみませんでしたぁぁぁぁあああ!グボァッ!!!」
反応は2つに分かれた。
まず、アーニャさんが繰り出した右アッパーが俺の顎に直撃した。
そしてオースターさんは悲鳴を上げてその場にしゃがみ込み、俺は殴られたことによって後ろに倒れてしまう。
やばい……意識が…… 薄れ行く視界の中でアーニャさんが慌てている姿が見えたがそれも直ぐに見えなくなってしまう。
ああ、アーニャさん。
これは素人でも分かる………世界、狙えるよ。
俺は薄れゆく意識の中そんなことを考えながら意識を失ってしまったのだった。
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