2回目のコンタクト
昨日買った鎌3本のせいで俺の財布が素寒貧になった。
「……はぁ」
このまま普通の鎌を買い続けたら本当に
これからあのダンジョンを攻略することを考えると確実に普通の鎌2本では足りない。
だからこそ早急に武器をなんとかしなければいけないのだが………
「どうするかねぇ………」
一応、今ある鎌2本で何とかできないか考えてみるが無理だな。
買うにしても売ってるわけないし。
新しく作るにしてもそんなノウハウは俺にはない。
一応鍛冶師の職業には就けたはずだから鍛冶師にでもなれば作れるのだろうが、今転職はできないし転職できたとしても今は明らかに生産系の職業である鍛冶師じゃなくて少しでもステータスを上げるために今は戦闘職に就きたい。
……この二つの条件を満たした職業があれば良いんだけどそんなものは今の俺の転職可能な職業の中には無かったんだよなぁ……
「あーもう!どうすりゃいいんだ!」
俺はそう言いながら頭を抱えるとその時だった。
『オ困リデスカ?』
いきなり目の前に現れたステータスとよく似た半透明のボードに思わず飛び退いてしまう。
そして改めて文字の書かれている半透明のボードを見た瞬間、それが何か分かった。
というか見覚えがあった。
「え~っと………もしかして、境界の管理者さん?」
『ハイ』
やっぱりそうだよな!?
どうりで見たことがあるわけだよ!
何でまた境界の管理者さんがコンタクトをとってきた事や今回はメッセージじゃない事とか疑問が残るけど取り敢えず話を聞こう。
「それで?どうしてまた俺とコンタクトを?」
『アナタガ悩ンデイルヨウナノデ助ケニ来マシタ』
「助けに来たって……どういうことですか?」
『コノ世界ハ私ノ管理スル世界ダカラデス。私ハ私ノ世界ト別ノ世界トノ境界ヲ守リ続ケテイマシタ。デスガ、私ノミスで境界ヲ越エタモンスター達ガ侵入シテシマイマシタ。ソレニ、犠牲者ガ出ルマデゴブリン達ノ位置ヲ把握デキマセンデシタ。ソレカラ、見ツケタゴブリンヲ倒シ続ケテイマシタガソレデモ倒シキレナクナッテシマイ………』
なるほどね。
つまり、この世界の境界線と世界を守っていたのはこの世界の管理者である境界の管理者さんだったという訳だ。
確かに俺が狩っているゴブリンの数より罠の数が多すぎることには気づいていた。
それに、俺以外に発見者がいないことにも。
だけどまさか答えがこんなところにあるとは思わなかったぜ……
「なるほど、俺が倒していたゴブリンが………」
『………ハイ。私ガ倒シキレナクナッテイタゴブリンデス』
被害が出てしまったがなんとか押さえられてはいる。
だけどこのままじゃいずれ更なる犠牲者が出るかもしれないということなのか。
『デスガ、貴方ノオ陰デゴブリンノ巣ガ見ツケルコトガデキマシタ。………ダンジョンハ予想外デシタガ………』
「………だけどダンジョンとはいえ場所が分かったのならゴブリン達と同じように対処できないんですか?」
『イエ。ダンジョンハ1ツノ世界トシテ独立シテイマス。ソウナッテクルト私ノ力デハ干渉スルコトハデキマセン。今ヤッテイルヨウニダンジョン周辺トコノ世界トノ繋ガリヲ細クシテゴブリン達ガ出ルコトヲ防グ、ソレシカデキマセンデシタ』
………境界の管理者さんでもダンジョン本体に干渉できないのか………
まぁ、それができたら今の時点でもう解決してるか。
「分かりました。それで?俺を助けに来たってどういうことですか?今の会話から全く関係ないように思えるんですけど」
『……本当ニ申シ訳アリマセン。本来ナラバコレモ私ガデキテイレバ………』
「…これとはどういうことでしょうか?」
『……ハイ。実ハ助ケニ来タトイウノハ理由ノ1ツデ実ハモウ1ツ、貴方ニオ願イガアッテキマシタ』
「お願い……?」
『ハイ。単刀直入二言ウト、アナタノチカラデアノダンジョンを潰シテホシイノデス』
そう言った瞬間、半透明のボードに映る文字が変わる。
それは、まるで懇願するかのような文章だった。
「……その話、詳しく聞かせてもらえますか?」
俺はそう言って半透明のボードの言葉に驚きつつもそう言う。
……だが、これは俺にとっても良いチャンスだからな。
ダンジョンを攻略すれば俺はもっと強くなれるし、境界の管理者さんの手助けにもなるはずだ。
この一石二鳥のチャンス逃すわけ無い。
「……まず、ダンジョンを潰せば良いというのは?」
『言葉通リデス、アレ自体ガ、ダンジョンカラコノ世界ヘノ通路ダカラデス。ダカラ、壊シテシマエバイイノデス。ソウスレバダンジョンハ崩壊シゴブリン達モダンジョント一緒ニ消滅シマス』
なるほど、そういうことか。
それならばあのゴブリン達をダンジョンに閉じ込めて纏めて一網打尽に出きるな。
「……それで、どうやれば潰せるんですか?というか、そもそもそんなことができるんですか?」
『……ダンジョンヲ攻略スルコト。ソレダケデダンジョンノ崩壊ハ始マリマス』
……なるほど。
つまり、あのダンジョンを攻略しろってことなんだな。
……よし!
そうと決まればさっさと行こう。
いつまでも考えていても仕方ない。
………ってダメじゃんまだ武器問題解決してないじゃん。
「すみません、ちょっと待ってください。実は武器をなんとかしなきゃいけなくて……」
『武器ノ事ナラオ任セクダサイ』
俺がそう言いかけたところでまたも半透明なボードが現れる。
そのボードには【錬金Lv.3】【鍛冶Lv.3】といったスキルが書かれていた。
「えっと……これを使えと?」
『ハイ。これを使えれば貴方様ニピッタリノモノヲ作レルハズデス。』
「あ、ありがとうございます!」
『気ニシナイデクダサイ。私ハ元々コノスキルヲ渡スツモリデ来タノデスカラ。コレガ貴方ノ助ケニナレバ幸イデス』
これで、今問題の武器問題を解決することの出きるかもしれない新しい
………だけどこういうのって専用の設備がないと使えなくない?
『申シ訳アリマセンガコレガ限界デス。今、他ノモンスター達の侵攻が多クナッテイルタメコレシカ余裕ガアリマセンデシタ』
「まあ、そういう事なら大丈夫です。こっちでなんとかしますよ」
聞いた感じあっちはあっちで大変そうだし、【錬金】と【鍛冶】のスキルがあれば武器はなんとかなるか。
「それで、俺の武器は現時点でどんなものが作れるんですか?」
『……』
「……あれ?聞こえませんでしたか?俺の武器はなんなのか教えてください」
『……』
「……もしもーし」
おかしい。
いくらなんでも反応が無いのは不自然だぞ。
まさか本当に壊れたとかじゃないだろうな? 俺がそう思っていると、半透明のボードに新たな文字が現れた。
『申し訳アリマセンガコノ辺リデ失礼シマス』
「ちょ!?どういうことですk……」
『マタ』
そして、それだけ書かれる半透明のボードが消えた。
「ちょっ!?ちょっと!もしもーし!?管理者さーん!?」
俺は急いで管理者さんを呼ぶがまた半透明のボードが出てくることは無い。
……マジかよ。
「管理者さーん!!ちょっとー!」
……返事はない。
どうやら完全に連絡は切られてしまったようだ。
……まぁ、こうなった以上仕方ないか。
俺はとりあえず管理者さんのことは諦めて、早速スキルを使って自分の身を守る為の武器を作ることにした。
「………さっき貰ったスキルを確認するか………」
俺はそう言って先程貰ったスキルを【鑑定】する。
すると、そこには確かにスキルの説明が書いてあった。
【錬金Lv.3】
・素材を加工する。
・素材を合成したりすることができる。
・スキルレベルが上がると品質が高い物ができやすくなる。
【鍛冶Lv.3】
・金属を鍛える事ができる。
・金属を加工することができる。
・スキルレベルが上がると品質が高い物ができやすくなる。
どうやらこの二つを使えば俺でもそれなりに戦える武器が作れるみたいだな。
よし!
じゃあ早速やってみるか!
俺はさっそく手に入れた二つのスキルを使う為にまずは【鍛冶】の方から試してみる事にした。
やり方はっと………ふむふむ………は?
いや、待て待て待てい!
何じゃこれ!
どうやってやるんだよ!
まずはハンマーを持って?
そんなんねえよ!
炉に火をつけて?
炉なんかねえよ!
こちとら普通の一般的な一軒家だよ!
………はぁ………じゃあ次は【錬金】にしよう。
え~っと………はあ。
えっと…… まずは材料を用意?
昨日買った鎌とホブゴブリンの斧で良いかな?
そして次に魔法陣に素材を置いてと。
………はい、無理ですね。
「………スゥー………ふざけんなー!!!」
俺は思わず叫んでしまった。
いや、だってこんなのいきなりできるわけないじゃん!
さては管理者さんこれを見越してやがったな。
絶対そうだ。
間違いない。
俺は心の中でそう確信していた。
だがしかし、だからと言ってこのまま何もしないという訳にもいかない。
なので仕方なく俺は【鍛冶】を諦めて【錬金】スキルを使って1から魔方陣を作っていくのだった。
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