無双ゲーってリアルだとこんな感じなのか

さて、規制線の内側に入る事は出来たけどこれからどうするか。

入ることは出来たけど入るために幽体離脱(仮)の状態で来てしまっているから何かを見つけても触ることは出来ない。


「とりあえず、何かないか探すか…」


触ることは出来ないがとりあえず探す事は出来る。

その後はなにか見つけたりしたら【飛翔】スキルで飛んで来て回収したりしても良いしな。


「境先生の話によると穴が掘ってあったりするらしいからまずはそれを確認したいな」


他にも草が結んであったりするらしいし、穴にも言えることだがそれらは確実に俺の視界の下の方にあるはずだし、かなり草も生えていてそれらに紛れているはずだから普通は見つけることは中々難しいと思う。

だけど俺は普通じゃない。

俺には心強いスキル【看破の魔眼】がある。

【看破の魔眼】は先日使ったとおり見えないものを見つけられるようにしたりする他に罠も見つけられるようにすることが出来る。

見えないものを見つけられるようにする方が駄目だったとしても、境先生の話によると掘ってある穴や草が結んであったりするのは人為的な行為らしいから罠と判定されて【看破の魔眼】が反応してくれるかもしれない。

そうすれば反応さえしてくれればこの辺一帯を丸裸にしてやることが出来るぜ!

………いやまぁ、流石にそんなに上手くいくわけがないんだけどね?

それでも何もしないよりかはマシだろう。

という事で早速探索開始だ。

あー、でも、もしこれが本当にただの穴だったら恥ずかしいな~まあ、そんなことは絶対に無いけど。

そして探索開始から数分後。


「おぉ……これは……」


予想通りというかなんと言うか、俺の目論見通りに罠が見つかった。

それも2つとも。

あった場所が赤く光っていてかなり分かりやすかった。

1つ目は穴。

確かに分かりにくく落とし穴というレベルの穴ではなく確かに気づかなかったら足が引っ掛かって転んだり足を挫いてしまうだろう。

具体的には直径約15cm深さ約10cmくらいの穴だ。


2つ目は草が結んである物だ。

これはかなり性格が悪かった。

他の背の高い草に隠れていて【看破の魔眼】が無かったら絶対に見つからなかったと思う。

しかも数本で結んであって簡単にちぎれるようなイタズラなどで使うタイプじゃなくて、何本も草を纏めて結んであったから引っ掛かっても簡単にはちぎれないタイプだった。

そして実際に見て確信した。

これらは確実に人為的に作られたものだ。

こんなものが自然にできるはずが無い。

こうなってくると事件現場が見たくなってくる。

こうやって罠と言えるものがこの辺に作られているんだからここで起きたらしいあの事件とまったくの無関係だとは到底思えない。

一応、確認のために事件の起こったと思われる場所に移動することにした。

そしてしばらく探しながら歩くと事件のあったであろう場所に着いた。

近くに多くの現場を見に来た警察関係の人が多くいた。

あの時規制線の中に入らないように見ていた警察官も、マスコミも見えていなかったし、今もこれだけ多くの警察の人がいて俺の姿が見えてないんだから本当にこの状態だと見えていないことが分かる。

ちなみに、当然ながら今の俺の状態は幽体離脱(仮)のままだから誰かから見えるわけもなく声をかけられたりすることも無かった。


「えっと確かこの辺りだったよな?」


周りにいる人たちに見つからないように少し離れた所に移動して事件について調べ始める。

人が集まっていたのでその辺を【看破の魔眼】で見れば簡単にわかった?

そして見つけた。


「あった………」


穴だ。

さっき見つけたような穴がここにもあった。しかも1ヶ所だけじゃなく2ヵ所もある。

どうやらこの近くで事件が起きたというのは間違いなさそうだ。

だけど肝心なことがまだ分からない。

何故こんな所に穴を掘ったのか。

この穴を作った犯人は何者なのか。

この穴を見ただけでは分からない………!


「そうだ!【鑑定】スキルを使えば!【鑑定】!」


そう思った俺はすぐさま【鑑定】を使ってみた。

すると――


名前:不明

詳細:ゴブリンによって雑に掘られた穴。

効果:獲物を転ばせる。


衝撃の内容がそこにはあった。

ゴブリン………だと?

いや待て、落ち着け俺。

まだ慌てる時間じゃない。

そもそも俺がここに来た理由はなんだ? そう、穴を見つけるためだ。

ならこの穴は俺の目的を達成するために必要なものだということになる。

それによく考えてみろ。

この世界にゴブリンなんて魔物はいないはずだ、きっと【鑑定】スキルが間違えてる………

………いや、待てよ。

確か境界の管理者さんからのメッセージにレッサーレイスだけじゃなくてゴブリンも入ってきたって…いって…た…よ、な………!

つまりこの穴は【鑑定】スキルの間違いでもなんでもなく俺に統合されたレッサーレイスと同じ異世界から来たゴブリンによって作られたことになる。

それってつまり…… レッサーレイスに続いてゴブリンもここにいてこの穴とかを使ってなにかをしていて、この事件にほぼ確実に関係してるって事だよな………


「嘘だと言ってくれよ……」


俺は思わず呟いていた。

昨日からの俺の嫌な予感とあのメッセージを受け取った時の俺の嫌な予感は合っていた事がこれで証明された。

だが、いくら嘆いても状況は変わらない。

とりあえずもう一度穴を見てみる。

効果は『獲物を転ばせる』か……。

多分だが、転ばされただけでは特になにもないんだろう。

恐らくだが、転んだ際に頭を強く打ったせたりして殺したり、足を挫かせてその場から動けなくするのが目的なんだろう。

または警察みたいに張り込んで罠にかかった獲物を狩ったりな。

そして、これがあるって事はこの近くにはゴブリンがいる可能性がある。


「うわぁー……マジかよ……」


もしいるとしたらこの近くなのは間違いないだろう。

そしてこの付近には他の人はほとんどいない。

警察関係者以外はほとんどいない。

つまり、この付近にゴブリンがいた場合、目撃者はほぼ0人になる可能性が高い。

いや、仮に誰かいたとしてもゴブリンのステータスが分からないが魔物である以上一般人よりはステータスが高いだろう。


「ヤバいな」


下手したらこのままだと被害者が出るかもしれない。

それだけは絶対に阻止しなければならない。

警察や自衛隊が倒してくれるのがありがたいが不確定要素が多いから俺がやった方が確実だ。

俺には魔法があるしこの状態ならゴブリン達も見えないだろ。

そう思い俺は急いでこの場を離れることにした。

しかし、離れようとした時にふと思った。


「あれ?別に急ぐ必要無くね?」


と。

今俺は幽体離脱(仮)の状態だから、誰にも気付かれずに移動することだってできるのだ。


「よし、じゃあ行くとするかな」


というわけで、俺は早速移動することにした。

場所はさっきの穴があった場所の近くにする。

理由はさっきの場所が穴が掘られた場所だから、次に穴が作られたと思われる場所に行けばまた穴が見つかる可能性が高いと思ったからだ。

そんな感じで移動すること約30分ほど。

穴が見つかった。

しかも3つもだ。

穴を見つけた瞬間、【鑑定】で確認した。

1つ目の穴はゴブリンによって雑に掘られた穴。

2つ目の穴はゴブリンによって雑に掘られた穴。

3つ目の穴はゴブリンによって雑に掘られた穴。


う~んスリーアウト!

チェンジ!

今すぐ帰って!

どうやらゴブリンは複数匹いるらしいしかも確実に2匹とかいう甘い数じゃない。

しかも全部雑に掘ってあるのか……穴の形が微妙に違う。

まぁ、それは今はいいとして。

問題はここがどこなのかということだ。

穴の数が多いからここの近くなんじゃないかなと思うんだけど、どの辺りなのか分からない。

しかも調べるのに夢中になってしまい夕日のオレンジ色の光が見えてくる。

時間的にももうすぐ暗くなるだろう。


「クッソ!仕方ない、今日はこの辺にするか」


たが、俺が帰ろうとしたその時、そいつらは現れた。


「グギャァ、グキャ」


「ギャギャグギャ!」


「ギャグギャギャギッ!」


声の方を振り向くとそこには身長140センチほどの緑色の肌をした醜悪な小鬼達の姿だった。

その手には全員棍棒を持っている。

その姿はまさにゲームや漫画などで見るゴブリンそのものと言えるものだった。

ゴブリンを見た俺はすぐに【鑑定】を発動する。

【鑑定】の結果はこうだ。


------

名前:なし

性別:♂

種族:ゴブリンLv.6


HP:160/160 MP:10/10

攻撃:110

防御:40

俊敏:20

器用:10

知力:5

幸運:10


所持SP5

魔法スキル:なし

取得スキル:【棍棒術Lv.1】

固有スキル:なし


称号なし

------


------

名前:なし

性別:♂

種族:ゴブリンLv.6


HP:160/160 MP:10/10

攻撃:115

防御:45

俊敏:15

器用:5

知力:5

幸運:10


所持SP5

魔法スキル:なし

取得スキル:【棍棒術Lv.1】

固有スキル:なし


称号なし

------


------

名前:なし

性別:♂

種族:ゴブリンLv.6


HP:160/160 MP:10/10

攻撃:100

防御:35

俊敏:35

器用:10

知力:5

幸運:10


所持SP5

魔法スキル:なし

取得スキル:【棍棒術Lv.1】

固有スキル:なし


称号なし

------


これがゴブリンのレベルか。

思った通りゴブリンは複数匹いた。

同じレベルでもステータスが結構バラバラだ。

そして、ステータスを見て分かったことは、やはりゴブリン達はステータスが低いという事だ。

しかし、レベルだけは高い。

恐らくだが、このゴブリン達も俺と同じでレベルを上げたら進化するんだろう。

何レベルで進化するか分からないからできれば進化してステータスが上がる前に倒しておきたい。

それに、もし進化したとしてもステータスが高ければ倒すのに時間がかかるかもしれない。

そんなことを考えている間にもゴブリン達は俺に気づくことなく俺の横を通っていってしまう。


「あ、ちょっと待て!」


そう言って俺は慌てて後を追う。

考えるのは後だ今すぐこいつらを倒さないとまた犠牲者が出る。

そんな予感がした。

俺は急いでゴブリン達の後を追った。

今すぐ倒さなかったら他にいるかもしれないゴブリン達と合流してしまうかもしれない。

だけどできるのか俺に?

確かに魔法はあるし姿は見えていない。

すり抜けてしまうから俺の高い攻撃ステータスが無駄になってしまうがそれを気にしている場合じゃない。

ここで仕留めなければまた被害が出てしまう。

そんな考えが頭をよぎる。

でも、本当にそれでいいのか?


「……」


一瞬立ち止まって考えた。

その隙をついてゴブリン達が更に俺から離れて行きついに追加の2匹と合流してしまう。

ダメだ!

迷っている暇はない!

このままだともっと多くのゴブリンが集まってしまう。

そう思った俺は右の掌を突き出しながら頭に浮かぶ魔法をそのまま唱える。


「クソッ!【ウインドアロー】」


覚悟を決めた俺はとりあえず1番近くにいるゴブリンに向けてレベル1の風魔法を放つ。

【風魔法】のレベルは1だが、それを抜きにしても俺は知力のステータスが高いからそれなりに威力は出るだろう。

そう考えながら俺の手からは風の矢が現れ、それがゴブリンに向かって飛んでいく。

よしっ!

狙い通りに飛んでいった!

そう思った次の瞬間【ウインドアロー】が背中に当たったゴブリンは体が吹き飛んだ。


「え?」


なんとレベル1の魔法のはずの【ウインドアロー】が当たったゴブリンはそのまま倒れてしまったのだ。

どうやら俺の知力が高すぎて【ウインドアロー】が当たったゴブリンは死んだのか確認する必要もないくらいだった。


「ギャギャギャッ!!」


「グギギャギャ!」


「ギギャ!」


「グギギャッ!グギャッ!」


これならいけそうだなと思ったその時、後ろの方にいたゴブリンが仲間の死体を見つけてしまい怒り狂ったように叫び仲間を殺した奴を見つけまいと辺りを見回す。


「2匹目…【飛翔】、【ウインドアロー】!」


2回目の【ウインドアロー】を今度はゴブリンの真上から発動する。

すると、さっきと同じように【ウインドアロー】が当たり、今度は体ごと地面に叩きつけられ絶命する。


「3匹目【ウインドアロー】!」


3匹のゴブリンを倒したところでやっと残りのゴブリンは逃げることを選択したようだ。

だが、逃すわけにはいかない。

そう思って4回目を発動する。


「4匹目!【ウインドアロー】!」


4匹目のゴブリンは声も出さずそのまま倒れた。

これで残りはあと1匹だ。


「グギャァアアッ!?」


1匹残ったゴブリンは恐怖を感じたのか今までにないスピードで逃げていく他のゴブリン達とはスピードが違ったからさっき【鑑定】したときにいた俊敏のステータスが高い個体なんだろう。

しかし、その先には運悪く崖がありゴブリンはそこから落ちていった。


「6匹目は流石にいないか……」


俺はホッとしてその場に座り込む。

結果的に見れば5匹全て倒しきった。


『ピコン』


『種族レベルが上がりました。レイスLv.2になりました』

『スキルポイントを2獲得しました』

『種族レベルが上がりました。レイスLv.3になりました』

『スキルポイントを2獲得しました』

『種族レベルが上がりました。レイスLv.4になりました』

『スキルポイントを2獲得しました』

『種族レベルが上がりました。レイスLv.5になりました』

『スキルポイントを2獲得しました』

『種族レベルが上がりました。レイスLv.6になりました』

『スキルポイントを2獲得しました』

『種族レベルが上がりました。レイスLv.7になりました』

『スキルポイントを2獲得しました』

『種族レベルが上がりました。レイスLv.8になりました』

『スキルポイントを2獲得しました』

『種族レベルが上がりました。人間Lv.25になりました

『スキルポイントを2獲得しました』


おぉ、一気に経験値が入ったみたいだな。


「それにしても、死体をどうするかな………」


倒したゴブリン達をどうするか考えていると、ふとあることに気づいた。

あれ?

さっきまであったゴブリンの死体は………

辺りを見渡すがゴブリンの死体はどこにも見当たらない。


「え?どこいったんだ?」


倒したゴブリンの死体があった場所に行ってみる。


「やっぱり消えてるよな」


そこにはゴブリンの死体は跡形もなく消えていた。

どういうことだ?

俺が倒したから消えたのか?

その辺りを少し深く見てみる。


「ん?なんだこの玉みたいなの」


ゴブリンの死体がちょうどあった場所に球体のようなものを見つけた。


「これは何なんだろう?魔物の核とかそういうものなのか?」


まあ、まずは【鑑定】だな。


「【鑑定】」


------

名前:魔石(小)

説明:魔物の体内に生成される魔力の結晶。

魔力濃度が高く純度も高いため魔法を使う際の媒体などに重宝される また、加工することで様々な用途で使用される。

------


なるほど、これが魔石でゴブリン達の体内にあったという訳か。

確かによく見ると綺麗な球形をしているし、大きさもビー玉くらいしかないから使い道によっては色々と使えそうだな。

とりあえず持って帰って売ってみよう。

でも、どうやって持っていこうか……

今の状態じゃ物に触れないからどうしようもないんだよな………

他の死体も見てきたがやっぱり魔石があるだけだった。

まあ、とりあえず試したい事があるからそっちから試してみようかな。


「【看破の魔眼】」



そう言って自分の目に魔力を回すと見えるようになるものがある。

見えたのは青白く光る物体。

そう、魂だ。

試したいのは【吸魂】スキルを魔物の魂に使ってみたらどうなるのかだ。


これを使えば範囲内の魂全てを吸収するから近づかなくてもなくても試せるるはずだ。


「【吸魂】」


すると、付近にあったゴブリンの魂が俺に飛んできて吸収される。


「おっ!できた!」


『ゴブリンの魂の吸収を確認。経験値を548、【棍棒術】のスキル経験値を獲得』

『ゴブリンの魂の吸収を確認。経験値を548、【棍棒術】のスキル経験値を獲得』

『種族レベルが上がりました。レイスLv.9になりました』

『スキルポイントを2獲得しました。』

『種族レベルが上がりました。レイスLv.10になりました』

『スキルポイントを2獲得しました。』

『ゴブリンの魂の吸収を確認。経験値を548、【棍棒術】のスキル経験値を獲得』

『種族レベルが上がりました。人間Lv.26になりました』

『スキルポイントを2獲得しました』

『ゴブリンの魂の吸収を確認。経験値を548、【棍棒術】のスキル経験値を獲得』

『【棍棒術】のスキル経験値が一定に達しました。【棍棒術】スキルを獲得しました』

『種族レベルが上がりました。レイスLv.11になりました』

『スキルポイントを3獲得しました。』

『ゴブリンの魂の吸収を確認。経験値を548、【棍棒術】のスキル経験値を獲得』

『ゴブリンの魂の吸収を確認。経験値を548、【棍棒術】のスキル経験値を獲得』

『種族レベルが上がりました。レイスLv.12になりました』

『スキルポイントを3獲得しました。』


う~んすごいなこれは。

一気にレベルが上がったぞ。

それにしても、この魂は本当にすごいな経験値がゴブリン本体より多いんじゃないか?

これなら他の魔物も倒せば簡単にレベルを上げれそうだ。


「よし、次はこの魔石をどうにかしないとな」


この魔石も色々使えるみたいだし持って帰りたいところだけど、持ち運べないしな…

それに日も落ちてきた。

…そろそろ帰らないと不味いか。

【飛翔】スキルで飛んで俺の体がある所まで全力で飛ぶ。

途中で魔法を使っていたのもあって魔力切れを起こしかけたがなんとか飛びきれた。

そして、俺は自分の体に戻ってきた。

その後は全力で自転車をこいで爺ちゃんが帰ってくる前に家まで帰ってこれたのだった。

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