嫌な予感

「ただいま」


誰もいない和風の家に入る。

返事はもちろん帰ってくるわけがない。


「空!すまんがワシはこのまま弁護士の先生の所に行ってくるからゆっくりしててくれ!」


「え、うん……分かったよ」


爺ちゃんが俺の入院時の荷物を玄関に置くと慌ただしく出ていくと家は再びシンっと静まり返る。


「さて……何しようかなぁ」


正直なところ俺は今、何をすればいいのか分からないでいた。

事故の怪我は治ったけど体が痛すぎる。

先生の話によるとこれは筋肉痛らしいんだけどおかしくない?

俺は事故のせいで大怪我しちゃったせいで約1週間とはいえ動けてなかったし動いてたのは幽体離脱(仮)の状態だし。

まあ、いくつか仮説はできてはいるけど。

1つ目は俺が【飛翔】スキルを使って魔力切れで落ちた時痛みは無かったけど体に戻ったことで痛みが出てきた。

だけどこれはない。

そうだとしたらステータスを初めて確認したときに頬をつねっているからその時にも頬が痛くなってないとおかしい。


次に、2つ目は進化してレッサーレイスからレイスになったから。

これはまだ一回しか進化してないからわからないから考察することはできない。


最後に、3つ目はステータスが、得に攻撃のステータスが爆上がりしたから。

これならあり得るかもしれないけど確証はない。

でも、これが一番可能性としては高い気がするんだよなぁ……

筋肉痛ってことは幽体離脱(仮)した状態で種族のレベルが上がってステータスが上がったし、スキルもだいぶ取得したから色んなステータスが上がったからその状態で体に戻ったからそのまま慣れる前に爆上がりしたステータスによる負荷に耐えきれなくなって筋肉痛になっているんだと思う。

そう考えると納得できるけど確証はない。


っと、そんなことを考えているうちに日が落ちてきた。

時計を見ると6時半になっていた。

晩御飯作らないと……


「アイダダダダダダッ!!!」


動こうと思った瞬間激痛に襲われる。


「やばい……今日は大人しく寝とくか……」


そして翌日。


「おはよう」


起きて部屋から出ると朝ごはんのいい匂いがする。

匂いのする方に行くと爺ちゃんが朝ごはんを作ってくれていた。


「おう、おはようさん。今日の朝ごはんは和食じゃぞ!美味そうじゃろ?」


テーブルには白米に味噌汁、鮭の西京焼きに卵焼きというTHE・日本の朝食といった感じだ。


「うん、すごくおいしそう!」


「ふぉっほっほ!それでは食べるとするかのう!」


「うん!いただきます!」


2人で手を合わせて食べ始める。


「うん、おいしいよ!」


「そうか、それはよかったわい。ところで空よ、学校とかどうするつもりなんだ?転校するにしても手続きとかあるだろうしなぁ……」


確かに、そうなると面倒臭いことになるかも知れないしずっと通っている学校だから転校っていうのはできるだけ避けたい。


「うーん、しばらく休もうかな。流石に1ヶ月くらい休みが続くと怪しまれるかもだけどそれでも2週間以上休むわけじゃないからなんとかなるんじゃないかなぁ……」


「ふむぅ……それもそうかもしれんなぁ。だが一応担任の先生に連絡しておくとするかのう」


「わかったよ。ありがとう爺ちゃん」


「別に気にせんでええんや。それより今はゆっくり過ごすことだけ考えときなさい。あの大怪我が治ったとは言えしたら困るのはワシも心配じゃからの」


「うん、分かった」


その後は朝御飯を食べ終わると片付けをして俺はソファーの上で横になる。


(やっぱり体は動かした方がいいのか?)


そんなことを考えながら何気なしにテレビの電源をつける。


『次のニュースです。昨日未明、■■県楽泉市の楽泉山で男性の遺体が発見されました』


「……え?」


「む?なんじゃなんじゃ?」


今テレビの中でアナウンサーが言った地名は俺の住んでいる場所だった。

その音が聞こえたのか爺ちゃんもニュースを見に来る。


『警察の調べによりますと遺体は見るも無惨な状態で発見されており、警察は身元の確認を急ぐと共に地元住民に警戒を呼び掛けていくとのことです』


「………爺ちゃん、これって」


「…うむ。昨日先生が言っていた事じゃろうな」


俺と爺ちゃんがニュースを見ている間にキャスターは次のニュースに移っていた。


「死者が出ちゃったのか………」


「うむ…しかし普通の死体ではなく無惨な死体か………」


『楽泉山では穴が掘っていたり、森の草が結ばれていたりなどしており、人為的な犯行として調査を続けています』


「「……」」


俺と爺ちゃんは何も言わずにただじっとその画面を見ていた。

なにか嫌な予感がする………おかしいな俺そんな直感系のスキルは持ってないんだけどな………

だけどその日、爺ちゃんが弁護士さんとの話し合いが長引いたのと、俺が動こうとしてもまだ筋肉痛が酷くて動けなかったのもあって特になにもおきることもなく1日を終えた。

そして、その日嫌な予感が止まることは無かった。

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