第12話:暴露
私が王家医師をやると決断したので、ライアンは素直に引いてくれました。
デヴォン伯爵家の令嬢として、国王陛下が謀殺されるのは見過ごせません。
ロジャー第一王子とビゴッド第二王子が、看病疲れで倒れるのも見過ごせません。
王家医師という大役を受けるのは今でもとても怖いですが、一度は受けたのです。
ライアンが文句を言ってくれたのを幸いに、役目を返上するのは卑怯です。
デヴォン伯爵家の名誉と誇りに泥を塗るわけにはいきません。
だから、ロジャー第一王子と直談判した翌日から登城しているのですが……
「ロジャー殿下、早くお休みになられた方がいいのではありませんか」
ロジャー第一王子とビゴッド第二王子がされている、夜の国王陛下看病ですが、今日はロジャー第一王子が遅番だったようです。
私とライアンが国王陛下の寝室に入ると、ロジャー第一王子がおられました。
深夜から早朝にかけての看病と警護で疲れておられるでしょうから、直ぐに自室に戻って休まれると思ったのですが、なかなか戻られないのです。
正直に申しますと、迫力のあり過ぎるロジャー第一王子が同じ部屋におられると、緊張して疲れてしまうので、自室に帰っていただきたいのです。
「国王陛下は目を覚まされないが、何も聞こえていないとは限らない。
目を開ける事ができず、話す事もできないが、全てを聞いておられるかもしれないのだ。
だから、できる限りこの部屋で政務を行おうと思っている。
それはビゴッドも同じ考えだ、覚えておけ」
「本当に宜しいのですか、ロジャー殿下。
この国王陛下の寝室で、食事の介助や下の世話を行うのですよ。
ロジャー殿下には耐えられないような、強烈な臭気だと思われますが、本当に宜しいのですか」
「その程度の臭気、ダンジョンに潜って魔獣や魔蟲を狩る時の悪臭に比べれば、臭いうちに入らない事は、ボリングブルック女子爵なら分かっているであろう」
「もしかして、ロジャー殿下は私がダンジョンに潜った事をご存じなのですか」
「俺とライアンが気安い理由を聞いていないのか。
俺とライアンは何度も一緒にダンジョンに潜った仲なのだぞ。
王位継承の問題から、危険なダンジョンに俺とビゴッドが一緒に潜るわけにはいかないが、ライアンや他のパーティーメンバーは同じなのだ。
だからこそ、デヴォン伯爵家の事も、ボリングブルック女子爵に事もよく知っていたのだぞ。
そもそも、ボリングブルック女子爵がヘンリーの糞野郎から婚約破棄された絶好のタイミングで、俺が現れた事を何だと思っていたのだ。
ライアンに頼まれていなければ、あれほどのタイミングで助けられるわけがないだろう、聞いていなかったのか」
「ライアン、どういうことなの」
「どう言う事もこういう事もないよ、姉上。
ヘンリーが糞野郎なのは前から分かっていた事だろう。
必ず我が家を切り捨てて、もっと金回りのいい家に乗り換えるのは分かっていた。
それをダンジョン仲間のロジャー殿下とビゴッド殿下に相談していたのだよ。
そのタイミングに助けに入れば、今まで支援してきた金と物資に加えて、賠償金も毟り取れるとビゴッド殿下が教えてくれたのだよ」
なんですって、何も知らなかったのは私だけなのですか。
まさかとは思いますが、この陰謀には父上まで加わっていませんよね。
母上まで私を騙していたという事はありませんよね。
いえ、お人好しの二人が、こんな謀略に加わっている訳がありませんね。
全ては二人の王子とライアンが企て直でしょう。
危険なダンジョンに挑戦し過ぎると、性格が捻じ曲がってしまうのでしょうか。
だとしたら、ライアンと一緒にダンジョンに潜っていた私も……
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