第3話:王妃マージョリー
「待ちなさい、ロジャー」
「お前にも一度だけ機会をやろう、マージョリー。
お前も国王陛下が選んだ正室だからな。
だが、次にもう一度第一王子である俺を敬称もつけずに呼び捨てにしたら。
王家の血が流れる、王位継承権がある王族に対する不敬罪で斬り殺す。
さあ、たった一度のやり直しの機会だぞ、マージョリー」
いつも通り、王妃の身分をひけらかすような態度で、ロジャー第一王子よりも身分が上だと言わんばかりの言葉を吐いて、舞踏会場に入ってきたマージョリー王妃を、
血塗れの剣を手にしたロジャー第一王子が咎めました。
しかも血塗れの剣が、いつの間にかマージョリー王妃の首元に有ります。
ロジャー第一王子がほんの少しでも力を加えたら、マージョリー王妃の首は簡単に胴から離れる事になります。
「みっ、みっ、身の程も、身の程も弁えない不敬な言葉を、口にしてしまい、本当に申し訳ありません、ロジャー殿下」
「一度だけ許してやろう、マージョリー王妃。
だが、次は警告なしに斬り殺す、覚えておけ」
「あ、あ、あり、あり、ありがとうございます、ロジャー殿下」
マージョリー王妃でなくても、あれは恐ろしいでしょう。
出来のとても悪い第三王子でしかない自分の息子を、弱冠十九歳で近隣諸国に勇猛果敢と評判のロジャー第一王子を差し置いて、国王にしようと画策していたのです。
国王陛下が言葉をも発せられないほどの重病で、周辺隣国との戦いを避けなければいけない状況でなければ、とっくの昔に殺されていたのです。
そのくらいの事は、欲で曇った眼でも見えていると思っていたのですが、どうやら見えていなかったようですね。
「『待ちなさい』と言った理由を聞かせてもらいましょうか、マージョリー王妃」
マージョリー王妃の首に剣を突き付けている、ロジャー第一王子の背中から殺気がもれてくるのが分かります。
恐らくですが、わざと殺気をもらしておられるのでしょう。
マージョリー王妃に、返答次第では殺すと警告しているのだと思います。
私も大して戦略が分かるわけではありませんが、ここでマージョリー王妃一派を皆殺しにしてしまったら、領地に残った佞臣奸臣悪臣の家族や家臣が、近隣諸国に寝返ってしまい、激しい内戦になる事をロジャー第一王子は避けたいのでしょう。
「え、ええ、ええ、ええ、そうでしたね、うっかり忘れてしまいましたわ。
いったい、わたくしは何を言いたかったのでしょうか、オホホホホホ。
歳はとりたくないものですわ、ロジャー殿下」
「では、こちらから聞かせてもらおう、マージョリー王妃。
返答次第では、この手に力が入るかもしれないから、覚悟を決めて答えられよ。
俺が何度訪ねても、いや、誰が訪ねても言葉を発する事ができない国王陛下が、アグネス嬢とヘンリーとの婚約破棄だけは明確に命令を下せた事、命がかかっていると理解したうえで答えてもらおう」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます