【四】


 曜日感覚はなかった。今日は学校がない日かと気づいた時に漸く、昨日が金曜日だったことに気付かされる。私にとっては三連休の二日目がやってきたわけだ。


 たくさん寝たことで、朝にはもうすっかり体は元に戻った。昨日のような一日は異例な日だと言い聞かせ、朝には溜めてしまった佳菜子のメッセージに丁寧に返事をした。


 朝と言っても、太陽はまだ昇っていない。東の空がほんのり桃色を帯びつつあった。普段なら無性にやるせなくなる。けれど、今だけはまだ夜に酔っていた。


 私は外に出た。


 足がその場に行くまで、自分の気持ちに気付かなかった。期待していた、真島先生に会えることを。


 立派な家の中には、真島先生と妻と二人の子供がいる。温かい家庭なのが伝わってくる気がした。ぼうっと見ていると、急に家の外灯が光りを放った。誰かが起きている。私はそっとその場から離れて、曲がり角に身を潜めて暫く家を観察していた。案の定人が出てきた。真島先生だった。学校でみる教師の格好ではなく一般的な“父”の格好だった。続けて後ろから子供と女性がでてきた。子供は小学校高学年程の男の子と小学校低学年程の女の子だった。女性は、妻の様だった。安心しきっている子供の無垢な笑顔と、幸せを噛みしめるように笑う両親。胸が締め付けられた。


 真島家は出かけるようだった。遠出するのだろう、こんな朝から行くのだから。


 “僕は今幸せです” 一昨日の真夜中で言っていた真島先生の一言が蘇る。


 彼は一体、どれくらいの迷いや葛藤を乗り越えたのだろう。

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