【サイドストーリー】恋敵と愛憎と【クレア過去編】

好きな人がいる。

でもその人は高嶺の花だ。

いや、花ではないんだけど。

むしろその人の花になりたいと思っている。

その人は王子様で、私はメイドだ。

叶うはずもない恋。

そんな話を、一人だけ話せる友達がいた。


「ウェルシィ!」

「クレア、お仕事お疲れ様!」


その女の子は、ウェルシィという名前だった。

その子は娼婦の子で、将来母のようになりたくないとメイド見習いに来ていた。

とっても可愛くて、とっても気が利いて、大好きなお友達。

私は先にメイドをやっていたから、先輩と後輩という立場。

だけど、その子とは対等に接していた。

ほんとうに大好きだった。恋バナを聞いてくれたから。

すごく楽しそうに聞いてくれた。

私は王子様の特徴をずっと話していたが、ある時王子様の名前を言った。

その時、彼女の笑顔は崩れてしまった。

彼女は泣き崩れて、「私も彼が好きなの」と言った。

私は「大丈夫だ、彼には見向きもされていない」「ただの私の片想いだ」「お互いライバルとして頑張ろう」と伝えた。

彼女は「ごめんなさい、ごめんなさい」と繰り返しながら走り去った。


彼女はその日、メイド見習いを辞めた。

私はショックで続け様にメイドを辞めた。

それ以来、私は彼女と長く会っていない。

後にわかったことだが、彼女は王子様の子を身ごもっていたのだ。

なんだ、彼女も立派な娼婦じゃないか。

私はそう思ってしまった。

彼女のことは今でも大好きだけど、それと同じくらい憎かった。

どうして言ってくれなかったのだろうか。

友達なら言ってくれても良かったのではなかろうか。

(もしかしたら、一人で悩んでいたのかも)

どうでもいい。

私は考えるのが苦しくなって、考えるのをやめた。


「なんだ、現実だって悪夢じゃないか」


そんな声がした。


「かわいそう、かわいそう」


そんな声がした。


「夢の中へおいで、ボクの手をとって」


そんな声がした。


少女のような少年が現れた。

銀色のおさげ髪、前髪で片方の目が見えないが、黒い瞳と金色の瞳のオッドアイ。

黒い変わった服を着た少女の姿だったが、不思議と女の子だとは思えなかった。

私は迷わす、その手をとった。

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