いま

 あれから、帰りは自然とあの場所に足が向いた。最早ベラドンナを観察することは日課だった。ただ見るだけの時もあれば、社や辺りの掃除を頼まれたり等して、別の事をして過ごす事もあった。友人というものも出来た。遊び人のような見目に反し、結構生真面目な奴だった。同じような大学生で、何年も信仰しているらしい。入信に至る経緯を話す時があれば、為来しきたりを教えてくれた時もあった。此処で出会わなければ、恐らく言葉を交わす事も無かっただろう。一緒に掃除をしたり、散策したりした。一度、家に招いた事もある。あまり人に見せられるような部屋ではなかったが、全く気にしてないようで安堵あんどに胸を撫で下ろしたのは、つい二日前の話である。

 今日は初めて教祖様にお目に掛かれる。今まで用事で空けていたらしい。その事を教えてくれたのも友人だった。

「初めてのお目通りは必ず、一人でじゃなきゃならないんだ」

 緊張するか、と尋ねられ素直に頷く。

「大丈夫、お会いすると不思議と落ち着くんだ」

 そうして案内されたのは、社に続く道から右に逸れたところにある、白壁の一軒家だった。一階の一番奥の部屋の前まで友人と共に通される。

「此処までだから、」いってらっしゃい、と軽く背中を押された。

 静かに部屋に入り、失礼の無いように一礼する。目線を上げた先にいた人物は、初めてお会いしたのに、何処か、懐かしい気がした。そう、まるで母のような──

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