第3章 能力

ふつう怪物になってしまった人間に考えるという行為は出来ない。だからふつうは意思疎通もできないはず、だが実力にかかわらずたまに考えたりできるやつがいる。

今、僕の目の前にいるやつもそのうちの一人だろう。今のは僕が、切るということを相手は完全に読んで逃げた。つまり相手はこちらの攻撃をそれなりに躱してくるだろう。それまで読んで御世は僕に注意してくれたのか。あとでこいつ殺して何か買ってやるか。そう心中で誓い再び相手を見た。

<<こいつ弱いのにどうしてここに来た>>

相手の声が聞こえる、これも僕の能力だ。この声のONとOFFは出来ない。なのでこのように考えることができる怪物とあうと殺すのを躊躇してしまうことがある。

最近喋れる奴が増えてきてるのが少し不安だ。そうさ僕はほぼ無能力者だ。

それに意思疎通ができる奴だと今みたいに、手が震える。

刀を握る手があり得ないぐらい震えている。決して慣れることのできない怪物の肉をえぐる感覚。でも殺さなければならない。でなければ生活ができない。

先の奇襲が失敗したことを踏まえてやはり平野にいかなければなないと体に命令を送る。とその刹那さっきまで前にいた怪物がいなくなっていることに気が付く。

周りを見渡すが相手はいない。思考をフル回転させその場を飛ぶ。

ずこんという音とともにその場に怪物が姿を現した。

敵はその場に剣が刺さり硬直する。その隙に逃さず畳みかける。

「うおおおおおお」雄たけびとともに刀をいままでにないスピードで振る。

その刃は相手の手にあたるが鎧があり弾かれる。

<<その程度の攻撃>>

くそとしか言いようがない。最近稼がずにお金だけ消えてしまうから、いい刀が買えなかった。おかげで鎧に一回当たった程度で、刃こぼれを起こしている。

しかも手が鎧で守られているということは体全身がおおわれている可能性が高い。

とあるとここは逃げるしかないのか?いやここでまた逃げたら生活がもっと大変になる悪循環にはまってしまう。だからといって逃げなかったら死ぬ。

この思考を吐き気がするほどループしていた時目の前に現れたんのは、走馬灯のように思えた。もう既に腹を相手に刺されていた。

<まったく無茶しないでよね。>

それまで朦朧としていた意識がその声を聴いた瞬間戻ってきた。

こいつに戦わせてはいけない。体がそういっていうことを聞かない。

頭の中ではわかっているんだ。御世に頼らないと死ぬんだって。

「待てーーーーー」僕にはそういうことしかできなかった。




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