第3話聞かなきゃよかった…

「いつ見せてくれんの?恥じらう姿に興奮しちゃうよ、たまんなくてさぁ……もう〜ほんと可愛いんだから、茉奈夏って」

「捕まってほしい……この変態。キモすぎなんだけど、相変わらず……」

「辛辣ぅ〜!辛辣な茉奈夏もいいなぁ……そのも興奮しちゃ——」

ため息混じりに吐き捨てた言葉も効果なしの京堂。

恍惚とした表情で私を見つめてくる。

彼女こいつぅ……


ガラスのコップに口をつけ、麦茶を啜り、クッキーを一口齧り頬杖をつく彼女。

「以前から気になってんだけど、いつからそんな感じなの?」

「そんな感じって?」

首を傾げ、きょとんとした瞳で訊き返す彼女。

「だからさ、その……キモい返しするようになったのか聞いてる」

「キモいキモいって言うけど、茉奈夏だって周りから言われてきたでしょ。アニメを熱く話し始めたときとかさ……まあ、私のはアウトちゃあアウトかなぁって思うけど、やり過ぎてるの否めない。抑えらんないんだから仕方ないって解ってほしい……茉奈夏には。茉奈夏に会う前はこんなんじゃなかったよ」


「……」



——。


カチカチ、と壁に掛けられた時計が刻を刻む音だけがリビングに響く。


ダイニングテーブルを挟み、向かい合う彼女の返答に相槌すら打てず、ダイニングテーブルの下に隠していた手が僅かに震えた。


「そう……」


リビングの静けさに息が詰まりそうだった。



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