進んだ時は戻らない 肆
世界は二色に振り分けられた。九尾の赤と
「うああああああああああああああ!!」
「ククッ! クククッ!」
短刀を軸にして地面に身体を縫い付けている
(どれだけ未来を見ても……死ぬ未来しか無い……!)
死で埋め尽くされた未来の視界、
(白雪の理の中ならまだ……?)
その可能性に賭けようとするも凍り付く大地に身体が進まない。あの場所に入ったらどうなるのか、いやでも予想がついてしまうからだ。
しかし、そこで少年は壊れた。
――世界が死で埋め尽くされているのなら、死んでもいい準備をすればいい。
そんな思考で埋まった。短く息を吸う。肺が温度差で
「
殻器の瞳が
「この小童! こんな場所に降ろすとは何事か! これをなんとかせいじゃと!?」
目まぐるしく変わる未来を見ながら狐狗狸は隙を探す。逃げる隙を。そこに。
「おっと動くな、死にたくなかったら言う事を聞け狐狗狸」
銃を殻器の、狐狗狸のこめかみに突きつける男、それは
「またお前か! どいつもこいつも!」
「いいから答えろ、俺が九尾に『逆鱗』を撃ち込む未来は何処にある」
「逆鱗じゃと? まさかその銃、竜神で出来ているのか!?」
「だからなんだ、さっさと答えろ」
動けない両者、動いたら死ぬ狭間、そこである一点の未来を見つめる狐狗狸。重々しく頷く。
「み、見えた……」
「どうすればいい」
「次の吹雪の時、あの童女が喰われる」
「……それで」
「説明が必要か!? そこが隙じゃ! そこを狙え!」
狐狗狸のこめかみから銃の感触が消える、ただ腐は去る前に一言、「逃げたら背中を撃つ」とだけ言った。
狐狗狸は結局、立ち往生するしかなかった。
――吹雪が来る、境が侵される。腐が動く、リボルバーにとっておきの弾を込めて、撃ち放つ。
その前に、大火炎が白雪を襲う、神が神を取り込む、九尾の大顎が少女の小さな影を飲み込んだ。その瞬間、九尾の首の一点が穿たれる。九尾の首が転がる。炎と氷の地獄が止まる。終わった――
――かに見えた。
パキパキパキ! 氷で九尾の首が繋がる。火柱の半分が氷柱に変わる。氷炎の化け物が生まれる。
「クククククッ!! これが神の味か! 面白い! 面白い!」
腐は絶望で膝から崩れ落ちる。狐狗狸はと言うと――
「……聞こえたぞ」
そう呟くのだった。
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