確かに進んでいる 壱
悲しみの炎尾の死骸を「工房」に運び入れる
「さてと、何を作るかな」
「つくるかなっ♪」
「出来た、
炎熱を操る異能を持つグローブ、これで炎尾に触れる事が出来る。白雪の力もあれば炎尾に対してアドバンテージを得る事が出来る。
二人は頷き合うと、東京タワーの袂に向かう。
そこで腐と合流して、炎尾捜索を始める三人。今回はついでに
前者は囚を感知する能力者であり、後者は囚による怪我を癒す専門職である。今回も対炎尾を想定して用意した人選だった。取り計らったのは腐だ。
「全く世話を焼かせる後輩だよ」
「私達、戦闘班じゃないですからね!」
「わかってくださいよ!」
腐とサポートの二人組の女性が殻器に声をかける。索術師の女性は
名前的にツーマンセルでも組んでいるのだろかと殻器は推測する。
「ええと、よろしくお願いします」
「よろしくおねがいしますっ!」
殻器と白雪が頭を下げる。白雪は殻器と出会ってからすごく楽しそうにしている。特段、何をしたわけでもない。きっと「誰かといられる」ことが楽しいのだ。殻器は久しくそんな感情を忘れていた。自分といてくれて嬉しいと思われるのは悪い気分ではないだろう。殻器の心の器に確かに復讐以外の何かが注がれたのだ。
「囚反応検知!」
羅針盤のようなものを用いて輪が東京タワーの足の一つを指さす。そこには真っ赤な炎を纏った獣が居た。猛々しく、荒々しく燃える獣はこちらを四つ眼で睨みつける。
「私達下がりますね!?」
「っていうか聞いてたよりヤバそうなんですけど!?」
「ありゃあ『怒って』やがるな」
怒りの炎尾。その顕現だった。
「殺す! 殺す!」
「こっちの台詞だ……!」
短刀を構える。呼吸を整えて唱える
判断は一瞬、炎が辺りを覆う前に怒りの炎尾を止める。そのためには。
「先輩!」
「了解」
拳銃を抜き放ち、弾丸をリボルバーに込める、その銃の銘は「龍」そう荒神である囚、龍から作られた高等兵装。鱗を弾丸にして撃ち放つ。銃声が鳴り渡る頃には怒りの炎尾に弾丸が届いている。リボルバーとは思えない速度だ。
怒りの炎尾は弾丸を眉間に喰らい仰け反る。しかし。燃え盛る炎は止まらない。眉間に炎を集中させて弾丸を溶かしたのだ。
「こりゃあゼロ距離射撃じゃねぇと通らねぇな」
「接近戦なら任せてください!」
「えんご? するよ!」
しんしんと、そう唱えるだけで辺りが雪景色に変わる。まるで世界が塗替えられたかのよう。
「囚の
「こんな吹雪聞いてないんですけど!?」
「ちょっとこっちまで吹雪いてくる!?」
「了解!」
腐の喚起に殻器、輪、廻、それぞれ三者三様の反応を見せた後、散開する。怒りの炎尾は己の理を広げる。炎の海。と雪景色が拮抗し、平温地帯が生じる。そこに滑り込む殻器、そのまま炎の海に飛び込もうとする。
「ああもうあの子ってば無茶して!
囚の武器はその異能を反転させて使う事も出来る。子供に危害を与える姑獲鳥の力を反転させ保護に使う。何もつがえられていない弓から放たれた光の矢は炎から殻器を守る。未来視の短刀を携えて少年は駆ける。怒りの炎尾を目前に迫る。振り上げられた右腕、炎尾は殻器に尻尾を叩きつけた――
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