止まるような歩幅で 参
「みんな、どこ」
「
未来視、突進の軌跡が見える。狙いは腐。白雪の心配を一瞬するもその場にいない事を確認して行動に移る。小さな盾とは思えない力強さで炎尾の巨体を押し留める腐を援護に向かう。短刀を構える。
「
鬼泣かせの二連撃、切り裂きが飛ぶ、腐に集中していた炎尾のどてっぱらに突き込む。一撃目で炎を剥がし、二撃目で肉体へ刃を刺しこむ。血飛沫の代わりに炎が噴き出すのが未来視で見えた。気にせず掻っ切る。炎が噴き出す。殻器はまともに喰らう。炎に撒かれて視界を奪われる。腐が前に出る。
「無茶しやがって馬鹿野郎!」
盾で炎尾の巨体を弾きながら殻器に纏わりつく炎を振り払う。焦げた殻器が出て来る。殻器は咳き込んで黒い唾を吐く。
「医療班もいねぇのに無茶すんな!」
「だけど……目の前にアイツがいるんだ……!」
怨敵、その二文字が殻器から離れない。炎尾は両親を焼いた仇だ。その仇を目の前に復讐の炎にその身を心を焦がされていた。立ち上がり短刀を握る。ゆらゆらと起き上がる炎尾。殻器も合わせるように立ち上がる。
「いたい、いたい」
「俺の家族はそんな事言う暇も無かったぞ!」
駆け出す殻器、大して炎尾は、逃げ出した。
「逃げるなクソ野郎!」
「こわい、こわい」
炎を撒き散らしながら逃げる炎尾を逃がさないように重い足を引きずりながら少年は全力疾走する。短刀を構え、跳躍する。
「空の型、壱式、
宙から真っ逆さまに落ちて炎尾の背を貫く。火柱が立つ。殻器は気にしない。それ以上、火傷を負ったら命に係わる。
そこで雪が降った。
「しんしんと」
炎が掻き消える。辺りが雪化粧に染まる。白い少女が現れる。白雪だった。炎尾が怯えて後ずさる。その背に乗る殻器は振り落とされる。新雪に埋もれる。クッションになり落下の衝撃が抑えられた。
「しんしんと」
雪の勢いが増す、吹雪に近くなる数日前の再現だ。居合わせた腐が盾を構えてその方向を向く。
「新手の
そこに居たほは白雪だった。少女を中心に吹雪が渦巻いている。しかし人間が異能を使うには媒介になる武器が必要だ。少女はそんなものを持っている様子はない。
「おい殻器、こいつ囚だ!」
「ちょっと待って、先輩……!」
盾を構え標的を白雪に変える腐、白雪は意にも介さない。眼中にないというか夢中になって気づいていないといった感じだ。
割って入ろうにも距離が遠い、炎尾に向かって走り出してしまった。その炎尾はというと――
「まって」
盾の一撃をもろに喰らっていた。そう殻器よりも先に腐と白雪の間に割って入ったのだ。
「こいつ、仲間を庇って!?」
「やっと、寂しくない」
そこに走り出す殻器、炎尾にトドメを刺すために。悲しみの炎尾、白雪を守った事に思うところはあるが、怨敵に変わりはない。短刀を構える。
そこで炎尾が腐に向かって炎の息吹を吐いた。それは足止めに十分だった。傷口は見えている。そう連鬼慟哭を打ち込んだ傷痕だ。そこにもう一度――
「――空の型、弐式、連鬼慟哭!」
切り裂きの二連撃、炎尾は悲鳴を上げ炎の血を吹き出し、そして、絶命する。しかし状況は好転しない。腐は白雪を囚だと思い込んでいる。
なにはともあれ事情を聴かなければ腐に彼女が殺されてしまう。
「白雪! 君は何者なんだ!」
「なにもの?」
「おい殻器! 囚を庇う気か!」
「君を助けたい!」
「……私のお父さんは人間だった」
「お母さんは?」
「かみさま、って呼ばれてた」
囚と人間の混血。あり得ない話ではない。囚とは神話時代からの生き物だ。人間と
囚の間に子供が出来てもおかしな話ではない。つまりは彼女は人間の世界で生まれた囚。それが白雪だった。
「クククッ!」
ビルの屋上、眺めるは「嘲り」の炎尾。
手を出すでもなくただ戦況を眺めていた。
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