第2話 庭の冒険
“お~い太郎―?”
伸びるカラスノエンドウが生い茂る草原のジャングル。蝉の抜け殻の帽子を被り、辺りを見回すワレ。
“キュル~ル!”
“ナ!?”
上を見上げれば青藍の空にデブ!そしてカラスノエンドウの蔦をターザン如くハムスターザン!何かぶり落ちて来た!
“びよーん!ブランブラン…”
“なんだ、絡まったんか。”
ハムのドジには困った事だ。にしても良い伸び縮みをする蔓だ。巻きひげと言うやつか...実に面倒くさい。
“朝から動いたせいでお腹すいたよ~”
ギュルルー!ゴロゴロ...
巻きひげを取った後、猛烈にお腹が鳴った。朦朧とする意識、夏バテの疲れと謎の空腹感のせいで全てが可食物品に見えるのは何故だろうか?
“そう言えば、カラスノエンドウって食べられるよね?”
“キュル?!”
食べ物と聞いた瞬間起き上がるハム。だが私は気付いてしまった…
“ギエェ~まっず!苦い、それになんか生っぽい味。恐らくレクチンと呼ばれる植物由来独特の防衛成分…加熱すればよい物の直で食うのは無理が有るな。”
一気食いした口の中が一瞬暗黒の湖の味になったが、中毒する前に吐き出したのが幸いである。一方太郎は気にしない様子でなんとも悔しい!!
レクチン、タンパク質で有る限り熱には敵わない。しかし、どこでどう熱を手に入れるのか分からないからパス!!
“お腹すいた~甘い物食べたーい…ヌオ?!”
蔓影に何か緑色の風船みたいな生物が一瞬隠れたように思える。
“フムフム....ソコダァァ!!”
隠れ鬼ごっこなら私の上に出るものは無い!さあ!出てこい!
“むぎゃ!”
“ピュー!”
顔を滴る液体、そして鼻に漂う糖分と緑の香り。
ごっくん!
“甘ーい!!”
顔をにやけさせる程の甘さ。これが甘露と呼ばれる成分か。
“オラオラオラァ!もっと出せもっと出せえ!!”
“キューッ!!”
逃げまくるアブラムシと追いかけまくる私。だがしかし急に目の前に何か黒い生物が降って来た!!
“フン!フン!”
デッカイ顎に軍隊の様な動き、これはまさかの…
“クロオオアリだあ!!逃げろー!”
全力で逃げる私と背後に迫る巨大なアリたち。そして絶望だと思った瞬間!
“ズゴーン!!”
ムシャムシャ!バリバリ!
飛び交う虫の体液と蟻酸、さっきまで殺伐してたアリが全力で逃げて行く!そしてその後を高速で追いかける丸い背中。
白黒の模様、鋭い牙に猛烈な超越力!ハンミョウだ!
“フッ!東京ヒメハンミョウのテリトリーで良かったぜ…ゲロロロ!!”
危うく吐き過ぎてで死ぬ所であったが、運よく帽子の中にある甘露は零れてない。しかし食欲がもう失せてしまった!
何故だろう、意外と動ける私は再び探索を始めたのであった。
“何だ?地震か?”
“キュルキュル!ドタバタ!!”
遠くで何かがガサゴソ言っている。そして私は衝撃的な光景を見てしまったのである!
“ト、トカゲ!?”
なんと私の知らない間に、太郎がデッカイトカゲと喧嘩してたのだ!
ニホントカゲは肉食だけじゃなく気性も荒い!素早い尻尾で打ち巨大な鋭い爪を扱う猛者!此処のボスだ!まあ、今回のはまだ子供みたいだけど...
それでも私の目の前じゃジュラシックパークキングコング!驚異!!
しかし勝負は早く着いた。草を数十本なぎ倒した後。トカゲはハムの驚異的身体能力を交わきれず、デッカイ前歯で喉をグシャリ!勝負あり!
ヒイ!!何とも凶悪な世界…
“ウオオオ!!”
“…。”
隣の家のワン五郎をも驚かす獣の様な雄叫びをするハムで有った、そして私は太郎が太ってるのが筋肉で有るのか脂質なのかより一層分からなくなってしまった。
一難去って又一難。だがハムの驚異的な戦闘力で、私は新たな装備を手に入れる事が出来た。
“ジャーン!トカゲ戦隊参上!”
黒と青色の装甲車みたいな私。トカゲの鱗はカナヘビの鱗と比べ非常に光沢が有り傷付きにくい。この装備が有れば周囲の草木によって怪我する事はもうないだろう!
但し問題なのが有る、それは…
“熱い!!”
全身黒タイツはヤメだ!!こんな灼熱の太陽下で黒色を纏うのは死も同然!
“せたこらせっせ!せたこらせっせ!…”
だがしかし私の天才的創造力には敵わない!小さくなって動きやすくなったのか...それともただの天才なのかは分からないが。
あっという間に又新たな装備を作り上げたのだ!
“トカゲ爪と筋を使った鍵縄、高い場所や遠くの物を引き寄せる時に最適(引っ張られる)!そして重要なのがこのレアバッグセット!キラキラ光るレアな脱皮皮と防御力の高い頭部の鱗を使用!例え又アリに襲われても心配ない(むしろ目立ってる)!”
バッグと道具を手に入れた!これで多少高い所へも行けるし少々無茶も出来る。
持ち物はバッグ!他の物は全てハムに持たせて、再びレッツゴー!世界を探索するぞー!
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