小さい観察事件簿

カイ サン

第1話 ハムと一緒の冒険始まりである!

“カタン!ガサゴソ…”

変な音と共に目を開けたら視界がぼやけて見える。立ち上がってに天井を見ようとするが、何故か遠い。

“変だなあ…”

何やら変だと感じつつも体感上特に変化なし。それで油断していたら再び変な音が薄暗い闇夜から聞こえる。

“ガタン!ガサガサッ!”

“ヒッ!!”

急に巨大なモフモフの鼻が近づいてきた!食われるかと思い全力でギャーッ!!!

“ギャーッ!!って太郎?”

“プルプル…”

正体はハムスター、私のペットである。そして急な絶叫に驚いたのだろうか、太郎は反り返ってしまった。

“フムフムなるほど、これは小さくなった夢か。けどこの手触りと肌触り、それに時折鼻に来る獣臭さ。ウーン!カワイイ!!”

太郎はかわいい。ゴールデンハムスターの独特の短い毛とぷよぷよさ、ウーン!たまんない!

“おーいハム。ケージから勝手に出ちゃダメだろう?”

“キュルキュル?ゴロゴロ…”

寝っ転がるハムスターを見てやれやれと首を振る。こんなに肥ったハムスター、ただ寝っ転がっただけで風が吹く!

“さてと、電気を付けに行きますかって…ぐぬぬ!!”

何故だろうか、たかが布団の上から降りるだけだと言うのにまるで断崖絶壁を飛び降りるかの覚悟が感じられるのは。

“ソロリ…ソロリ…ブルブル…”

糸の節目を伝って降りようとするがシーツの針目がなんとも細かい!今更だが古代の粗い網目の物がよかったと感じるのは何故だろうか!

そうこうしているうちに…

“ダアース!!”

ポフンという音と共に落ちていった。

“フッ。ベッド下のホコリをチキってて良かったぜ。”

助かったあ!と内心叫びつつも、表面上では冷静さを保つ。

“綺麗なんだなホコリって意外と。”

よく見るとホコリには色とりどりの物が混ざっている。ハムスターの白い毛、キラキラ輝く毛糸のカス、そして…

“クッセエ!!”

モザイクを付けたくなるような自分の足爪。刺さらなくてよかったと今気付く。

“ミャアァーー!!!”

“ダニイ!?”

上を見た一瞬、吾身に何処かのアニキャラが憑依した。

“ズドキュンーー!!!”

火山灰のように降り盛るホコリとムクムクと起き上がるハムの太郎。

“フウ…”

謎のタメ息をつき、辺りを見回した後のそのそと私の前にやって来たハム。

“キラリーン!”

“?”

目線からわかった。彼はこう言っている。

…乗るんだ、ボーイ!…

“バキューン!!”

“ギャーッ!!”

ハムスターの速度は時速5キロメートル!しかし体感上はマッハ!これはヒャッハー言うしかない!

“ボテッ!”

“キュルル?”

痛てえ、吹き飛ばされたやんけ。そして心配してるハムの目がなんとも愛おしい。

“これで良し!レッツゴー!”

作戦立て直し!

布団の下から見つけたマフラーの端っこを使って手綱ゲットダゼそしてハムも私の落とした眼鏡でかっこ付けオッケー!ってカジルナア!!

“流石はハムスター、機動力は問題無し!”

“ビュンビュン!”

ゴッ!!

“ウギャ!”

コケタ!

スピードは上がった、しかし周囲は闇夜のまま。周囲の判断が鈍いせいか手綱を引く前に自分がイスとぶつかってしまった!

“高っか!九雲の上とは正にこういう事なのか…”

たかが電気スイッチごときが絶壁上のポツに見える!

それにしても困った、電気スイッチに届く前に私は机にすら上がらない。

“ズシン!…ズシン!!”

“!!”

地響きを立てるような振動、そしてバリバリと落ちるホコリ!

これは脳内をあの有名な巨人アニメの登場シーンのBGMが流れる。

“ママダアー!ママが入ってきたぞお!”

“ブシュー!!!”

ドア開けの風が竜巻となって周囲を吹く。吹き抜ける烈風!!!

“(ノ・ω・)ノオオオォォォ-!!!ネズミいいい!!!”

“ギャーッ!!!”

ハムの全力疾走アンド私の絶叫断末魔はすべてお母さんのネズミいいい!の叫びでかき消された。

“ハアハア!危なかった!”

逃げ込んだのは押し入れ、振動で隙間が空いたのが幸いであった。

しかし、困ったことに出口が分らない!隙間から出れれば間違いなくハントされてしまう!どうしよう!

“キュルキュル!”

その時、太郎が新たな道を発見した。そこにはハムの常習とも言える小さい穴が暗い道と繋がっていた。

“ヨシゆくぞ!”

風を感じて右に曲がって左へ曲がる、真っ暗なパイプの中を歩いて歩いてようやく外へ出られた!

“き、綺麗!”

“キュルキュル!”

飛び出したのは四葉茂る草野原。赤く光るナナホシテントウムシに空を扇ぐ愉快なモンシロチョウ。暖かい太陽の下で生き生きと育ってる大自然のお出ましだ!

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