第15話:疑問

「そう、盗賊団はチェンワルフ殿下達が全滅させたの」


(はい、チェンワルフは最初の盗賊との戦い同様、圧倒的な強さでした。

 郷士も大剛と言っていいくらいの強さでした)


「チェンワルフ殿下とクウィチェルム殿下を戦わせるのが神の意志なの。

 それともわたくしが二人の王子を殺す事が神の望みなの」


(以前も言いましたが、俺に何を聞いても無駄ですよ。

 神が俺のような使いっ走りに真意を話される事などありません)


「だったらもう一度確認させてもらうけれど、私を死なせるなと言ったのは間違いないのね、ヒュー」


(それは間違いありません、オリビア嬢。

 どのような手段を使ってでもオリビアを死なせるなと命じられています)


「わたくしをクウィチェルム殿下の領地に戻せといったのも間違いないのね」


(はい、間違いありません)


「だったら、わたくしがクウィチェルム殿下を殺すために城に乗り込んだら、ヒューはどこまで助けてくれるのかしら」


(……殺される事がないように、助けさせていただきます)


「ヨハンが危機に陥った時にも、助けてくれるのかしら」


(神から命じられていない相手を助けるために、神使が力を振るう事はありません)


「そう、だったらわたくしが盾になってヨハンを助けるしかありませんね」


「マイロード、そのような事を言わないでください。

 私は、マイロードに命を助けられた御恩に報いるために騎士になったのです。

 その私を助けるためにマイロードが盾になるなど聞ける話ではありません」


「ヨハン、さきほど話して聞かせたでしょう。

 わたくしの家系は、神と初代国王陛下に選ばれた聖なる家だそうです。

 だからこそ、女系が代々ダグラス女伯爵家を継いできたのです。

 恐らくですが、神と初代国王の間で何か契約があったのでしょう。

 わたくしがこの国を見捨てたら、国が亡びるのだそうです。

 父に母を殺され、婚約者のクウィチェルムに裏切られた以上、もうこの国が滅んでも構わないと思っていたのです。

 ですが、それを神と神使が邪魔するのです。

 だったら、神と神使を利用して復讐したくなるではありませんか。

 ヨハンがわたくしを庇って死んでしまうようでは、後々困るのです。

 神も神使も絶対にわたくしを死なさないと言うのであれば、それを最大に利用するのは当然ではありませんか。

 主としてヨハンに命じます、全力で戦うとともに、わたくしに助けられなさい」


「……主命謹んで受けさせていただきます、マイロード。

 ただ一つだけ確認させていただきたいのですが、マイロードが滅ぼすと言われた王国は、初代国王が征服された範囲なのでしょうか。

 それとも、今クウィチェルム殿下が支配下に置いておられる範囲なのでしょうか。

 それとも、クウィチェルム殿下とチェンワルフ殿下の支配下も含めた、キュネイルス国王陛下に臣従している範囲なのでしょうか。

 それによって、巻き込まれる貴族や騎士、領民の数が変わってくるのですが」

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