第14話:激突

「我が愛しの令嬢を闇討ちにしようとしただと、絶対に許さん」


「やれやれ、情の深い男というのは始末が悪い」


「お前こそあの令嬢に未練があるから追いかけているのだろうが」


「未練がないわけではないが、それよりも大切な事があるのだ。

 私的な事など後回しにしなければいけない、とても大切な事があるのだ」


「ふん、自分の想い以上に大切なモノなど存在せん。

 特に女性ほど大切にしなければいけない存在はない」


「ふざけた事を言ってんじゃねえぞ、こらぁ」

「俺達を舐めてんじゃねぇぞ」

「ギタギタに叩き殺してやる」

「死にさらせや、おんどれ」

「盗賊団を舐めてんじゃねぇぞ、われ」


 ギャアアアアア


「ゴミ虫が騒ぐのではない、耳が腐る」


「ちっ、俺様も負けてられん、ウォオオオオオ」


 ギャアアアアア


「うぁあああああ、くるな、くるな、くるな」

「ひぃいいいいい、やめろ、やめてくれ、ころさない、ぎゃっ」

「うしろだ、後ろからかかれ」

「弓だ、弓を射かけるんだ、グズグズするな」

「槍だ、槍をそろえて近づけさせるんじゃねぇ」


 ギャアアアアア


「ばけもんだ、こいつらはばけもんだ」

「にげろ、にげるんだ、逃げないと殺されるぞ」

「ばかやろう、逃げるんじゃね、逃げても王子に殺されるだけだぞ」

「一斉だ、一斉にかかれば勝てるぞ」

「だめだ、とても勝てぇ、にげろ、逃げるんだ」


 ギャアアアアア


「逃げる奴は俺が殺す、何としてもこいつらを殺せ」

「お頭の言う通りだぞ、逃げても王子に殺されるぞ」

「踏ん張れ、ここで踏ん張って貴族になるんだ」

「ひぃいいいいい、いやだ、死ぬのは嫌だ」

「貴族なんてどうでもいい、しにたくねぇ」


「じゃかましい、俺の令嬢を狙う奴は皆殺しだ」


 ★★★★★★


「ドナルド、戦利品は各々が殺した盗賊の分だからな。

 乗用馬も殺した盗賊の持ち物だぞ、分かっているな」


「ふん、偉そうに決めるんじゃねえよ、遊び人、いいかげん名前くらい教えやがれ」


「名前なんてどうでもいい、そのまま遊び人と呼んでくれればいい。

 それよりも俺の言う通りにするのかしないのか、どっちだ」


「ふん、俺様が殺すはずだった盗賊を、剣を投げて殺したのはどうする。

 あのような卑怯なやり方で殺した盗賊も遊び人の分だというのか」


「人殺しに卑怯もへったくれもない、死んだら負け、殺した方の勝ちだ。

 悔しかったらドナルドも剣を投げるんだな」


「ふん、俺様は騎士になるのだ、騎士らしくない戦い方はせん」


「では遠くであの令嬢が襲われている時はどうするんだ。

 走っていては絶対に助けられないぞ、それでも騎士の戦い方にこだわるのか」


「うぅううううう」


「まあ、いい、ドナルドがなんと言おうと、戦利品は自分が殺した盗賊分だ。

 俺が三十七人、ドナルドが十九人。

 馬は俺が三頭でドナルドが一頭だからな、いいな」

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