第156話 圧倒的な脅威

俺たちはラッカライの聖槍が作った次元のゲートを抜けて、第999次元階層までやって来た。


そこにいたのは無論……。


「よもや。このようなところまで。『無』と言われた次元までやってくるとは……」


その老人。


いや、既にその姿は老人ではない。


巨大な奇怪な文様をめぐらせた鎧を身につけた巨大な騎士に見える。


騎士は山よりも巨大な玉座に座り、こちらを睥睨へいげいしていた。


「実に愚かな。たかだか星の上を這う虫けらが来て良い場所ではない。それすらも理解できなかったか」


そう言って俺たちを睥睨へいげいする邪神ニクス。


それだけで、相当の重圧が俺たちにのしかかった。


「それが本来の姿、というわけか?」


「……ふ、貴様の質問に答える義理はない」


邪神は余裕なそぶりで、手にした大剣をひと撫でする。


「先生、危ない!!!!」


「≪ダメージカット≫!!」


バキイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!!!!


弾ききれない!!


「コレット! ビビア! エルガー!!! 支援しろ!」


「ぬおおお!!」


「俺に命令すんなうおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」


「鋼の肉体に不可能はないのだぁあああああああああああああ!!!!」


バキイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!!!!


邪神の軽々とした一撃を、アリアケパーティー全員の防御担当全員で防ぐことに何とか成功する。


だが、


「これが邪神の攻撃、というわけか……」


「攻撃……? くく、くくくくく」


邪神がいやらしい笑みを浮かべた。


「今のは攻撃などではない」


「何?」


俺が怪訝な表情をすると、邪神はそれが気に入ったのか、更に笑みを深くする。


甲冑の奥に口元は隠されているが、表情は如実だった。


「今のは貴様ら異物が侵入したせいで次元干渉が起こりかけたので、その流れをおさめただけだ。別にお前などいつでも殺せるし、無に帰すこともできる。うぬぼれるな虫けらよ」


「なるほど。攻撃ですらない、か。こっちは防御するだけで精一杯だったんだがね?」


「無理もあるまい。お前たちが星を喰らう神たる我に敵うわけがない。メインディッシュの女神も来ているようだ。ならばそなたらには前菜になってもらうとしよう……。とはいえな……」


邪神ニクスは初めて老人めいた声を響かせた。


「千年もメインディッシュを待たされたのだ。神代の千年は瞬く間であるが、しかしごちそうを前にした一瞬は長かった。ゆえに」


邪神はゴ・ゴ・ゴ・ゴ・ゴ・ゴとゆっくりと山よりも大きな玉座より立ち上がる。


「前菜はもう喰らおう。そのあとは惑星を喰らうとしよう」


それは圧倒的な威圧感と存在感。


邪神。


神。


人を凌駕する者。


次の瞬間に、俺たちの存在が消滅させられていることを確信させるほどの脅威が立ち上がるのを、俺たちは目のあたりにしていた。


しかし、


「さてと、もうこんな・・・・・ところでいいか・・・・・・・?」


俺はさっきまでとはうってかわった、軽い調子で言う。


「なに?」


宇宙癌ニクスの声とともに、


「アリアケさん?」


「旦那様??」


「先生????」


「主様????」


賢者パーティーの皆からも怪訝の声が響く。


しかし、俺は気にせずに、ある人物の方を向いた。そして、


「あとは頼んだぞ、勇者ビビア」


そう最も信頼する彼に、げきを飛ばしたのであった。


だが、俺の言葉に、なぜか面白いほど彼の顔が歪んだのはなぜだろうか?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る