第155話 ラストダンジョン・無の次元 ~ VS 宇宙癌ニクス・タルタロス~

155.ラストダンジョン・無の次元 ~ VS 宇宙癌ニクス・タルタロス~






「さて、全員準備は整ったな。ラッカライ、逃げた邪神の行方は追えているな?」


「はい、先生。会戦には参加できませんでしたが、ちゃんと次元断層を破壊する邪神の痕跡は、聖槍によって補足できています。地味ですが、こういうこっそり皆さんのお役に立てるのは、奥手なボクとしてはありがたかたったです!」


「ラッカライのああいうところ、ちょっとポイント高いと思うのじゃが、アリシアはどう思う?」


「コレットちゃんもそう思いますか? ああいうところ、いじらしいですよねえ。さすが元お嬢様です。ああいうところ、私たちも見習わないと」


アリシアとコレットが作戦会議だろうか、こそこそと言葉を交わしている。


こうやって仲間同士の連携がはかれていることは良いことだ。さて。


「さて、ではこれより泳がせていた邪神を追う。邪神は空間の隙間に潜み、この星に影響を与え続けてきた。今更だが、その邪神の隠れる次元への突破口を開くために女神により作られたのが、次元切断能力を付与された聖槍だ。聖武器は星の脅威を殲滅するための切り札としてイシスが用意した対悪星攻盾ヒュストリクスということだな。では、ラッカライ頼む」


「はい。では次元第999階層まで切除します。ただ、この辺り一帯にどんな影響が出るか不明です」


「ゼルパス将軍、退避は完了しているな?」


「はっ。人魔同盟盟主アリアケ様。軍人、民間人、ともに全員の退避を完了しています」


「よし、大儀であった。お前も下がれ。ここからは星の命運をかけた戦いをこの賢者アリアケに委ねよ」


「はっ、御武運を、大盟主アリアケ様!!!!!!!!!」


南部方面ゼルパス将軍は俺を尊敬の目で見ながら、見事な敬礼をすると、退室した。まるで王か何かに対するような態度だなぁ。


何はともあれ、ここに残っているのは、人魔同盟盟主である俺と、賢者パーティーの面々、ハイエルフのセラ姫、バシュータ、そして勇者パーティー、女神イシスとなる。


女神イシスより、かの邪神の脅威が語られた。






「あの邪神の姿は真の姿ではありません。本気ですらありません」


その言葉に、勇者ビビアが顔を青ざめさせて絶叫した。


「う、嘘だろ!?!?!?! だって、俺ですら手も足も出なっ……!!!! げふんげふん! あんたの攻撃ですらきかなかったじゃねーか! なので、全力じゃっ……! 全力じゃっ……! ねーなんて、ありえねえだろうがよおおおおおおおおぁあああああああああああああああ!!!!」


「はい、うるさいですよ。はいパン!!!!」


「うごふは!!!!??」


だんだん遠慮がなくなったローレライによって、大きなパンを絶叫する口腔につっこまれた勇者ビビアは目を白黒させてもだえているが、おかげで静かになった。


さて、続きを聞こう。


「1000年前の襲撃時、私は確かに邪神を撃退したと思いました。本体と思われる者を粉砕したのです。しかし、その本体はすぐに復活し、不意を突かれた私は大きなダメージを受けたのです」


「つまり本体は他にいる、と」


「そうです。ですが、狡猾な邪神はその本体の場所をこれまで秘匿し続けています。また、本体が『何か』なのすら分かっていません。まずはそれら本体の場所と正体を見つけ出し、そしておそらく、あの端末としての邪神すらも上回る本体を撃破せねばなりません。言っていて厳しい試練だと思いますが……」


「一筋縄ではいきそうにない、ということだな」


「その通りです」


女神は頷く。


「しかも、第999次元階層は人類が到達したことのない、『無の次元』と呼ばれる未知の空域ダンジョンです。もしかするとその影響を相殺するだけで、私の加護は精一杯のレベルかも……」


「だが、やるしかあるまい」


俺の声に勇者パーティー以外の皆が一斉に頷いた。


「では行こう。この星の、人類の未来を決める決戦の地へ。この人魔同盟・盟主アリアケのもと……」


ラッカライが槍を振るう。


次元が幾層も切断され、虹色に、不穏に輝く邪神が通った跡が目の前に顕現した。


死を謳うシングレッタ宇宙癌・ステラ・キャンサー『ニクス・タルタロス』の討伐クエストを開始する!! 報酬はこの星の救済と人々の日常を取り戻すこと!!! 千年の神話に終止符をうつことだ!!!!」


俺の声にときの声が上がる。


俺の率いるアリアケパーティーはこうして出陣したのだった。

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