第147話 邪神 VS 魔王 その1

147.邪神 VS 魔王 その1





(前回の続きです)


~魔王リスキス視点~


『どういうつもりだ? 魔王リスキス・エルゲージメントよ?』


そのしわがれた声はどこからともなく聞こえて来る。


大方、異次元に潜んでいるのだ。


でも、あてぃしは怒っているので、そんなことはどうでもいいのだ。


「どうしたもこうしたも無いのだ、邪神様」


あてぃしはムカムカしながら言う。


「あてぃしの部下どもを不死にしたな?」


唇を噛んで続きを言う。


「一度殺して操り人形にしたな?」


キッとどこに潜んでいるかも知れない邪神をにらみつける。


「よくも我が同胞を人形のように扱ってくれたのだ! 邪神!」


あてぃしはその名を叫んだ


邪神シングレッタ・・・・・・・!」


その言葉に、


「「「「はい?」」」」


人間どものポカンとした声が聞こえた。


無理もないのだ。なぜなら、


「シングレッタっていえば、旅の神様として慕われた穏やかな神様じゃないか……」


そんなつぶやきが案の定聞こえる。。


けど、実態は違うのだ、こいつは……。


「この代償は高くつくのだ! この魔王リスキスの、可愛い馬鹿な同胞どもの死を凌辱した罪を償ってもらうのだ!」


その言葉に、


『く、くくく』


しわがれた声で、


『わーっはっはっはっは! 何を言い出すかと思えば! 貴様などわしの駒に過ぎぬ。そして分からぬか』


姿は見えないが、ニヤリと邪神が嗤うのが分かった。


『貴様ら魔族も含め、この星に住む全ての命を消し去ることが我の目的よ! この星辰せいしんの力を取り込み、わしが更に高次元体へ至るためのな! そのためにお前たちを利用し、もっとも邪魔な人類を抹殺した後は、今度はお前たち魔族すらも消し去るつもりだったのだ。ゆえに今回のことは、単に順番をはやめただけよ』


そう言いながら、傀儡かいらいごときが吼えるなと、邪神はあざけった。


だけど、あてぃしも負けじと、魔王らしく醜悪に笑った。


「へえ、邪神様。なにゆえにスケジュールを早めたのだ?」


『……なに?』


「1000年もかけた計画が、どこぞの賢者にでも邪魔されたからなのだ?」


『貴様……』


邪神の怒気が伝わってくる。


でもあてぃしは言葉を緩めない。


「お前こそ何も分かっていないのだ。邪神。星を侵し旅する・・・・・・・故郷なき・・・・寂しき神よ・・・・・


ピシリと、空間の一部があたかも割れるかのようにヒビが入った。


「ひいいいいいっ!!!!!!」


「な、なんだ!?」


「急に寒気が……うう」


勇者の大げさな悲鳴や、一般兵たちのうめき声が響く。


だけど、あてぃしは躊躇ためらうことなく更に続けた。


「1000年前、人類に敗北し絶滅しかけた魔族をここまで復活させるために、あてぃし達、歴代魔王はずーっとお前を利用してきたのだ。服従するフリをし、敬うふりをしてきただけなのだ! 誰が! どこの誰がすき好んで!」


あてぃしは大きな声を上げる。


「次々と星を渡り歩き、生命エネルギーを吸いつくして破壊して回る、寄生虫のお前などに心を許すと思う、邪神シングレッタ! いや!」


あてぃしは邪神の本当の名を呼ぶ。


死を謳うシングレッタ宇宙癌・ステラ・キャンサー『ニクス・タルタロス』!!」


バキバキバキバキバキバキ!!!


真名に呼応するかのように、大質量の神性と悪意が空間を破砕させながら、目の前に出現したのだ。


(続きます)

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