第148話 邪神 VS 魔王 その2
148.魔王 VS 邪神 その2
(前回の続き)
「く・ら・う・のだあああああああああああああああああああああああああああ!」
あてぃしは右手に魔力を込めて、空間をガラスのごとく破って現れた黒いローブを着込んだ顔の見えない邪神。
『ニクス・タルタロス』に不意打ちをぶちかます!
魔力の奔流が、現れたばかりの邪神を巻き込んで炸裂した。
大地が鳴動し、亀裂というか谷が出来る。
「うひゃあああああああああああああああ!?」
「ひいいいいいいいいいいいいいいいい!!? に、逃げろおおお!」
後ろの勇者パーティーから悲鳴が聞こえたかと思うと、遠ざかって行くのだ。
やれやれなのだ。
さて、
「自己紹介の時間など与えぬのだぞ、邪神! あてぃしは魔王だから、こんな外道も許されるのだ!」
「ふむ、ではこちらからも。
「ぐぎっ!?!??」
あてぃしどころか、一帯の空間をまるごと圧縮されるような重圧がかかる!
めきめきと空間自体が歪曲し、風景が実際に歪む。ほとんど天変地異のごとき力。
ぶしゃあああああああああああああああ!
当然、空間ごと圧縮してねじ切られようとするあてぃしの体からは大量に出血が生じた!
「その程度か?」
「
あてぃしは大量に出血した血液を出来るだけ圧縮して、敵の目前へ放った。
「我が血肉一片は魔族一万の魔力と同等! それを圧縮すれば空間に穴くらい空けてやれるのだ! お前こそ、特異な空間の彼方に吸い込まれて消失してしまえばいいのだ!
「ふむ?」
ゴッ――――――――!!!!
無音。
すべての物質。音すらも吸い込む空間の穴が、周囲一帯のすべてを飲み込んでいく。
さきほど生じた亀裂どころではない。邪神の立つ場所を中心に奇麗な球体のような断面が大地にえぐられていた。
そこには邪神の姿はない。あえなくその穴へ飲み込まれて行ったのだ。
そして、その穴は徐々にふさがり、やがて完全になくなった。
「どうだ!」
「ふむ、なかなかよく出来た技だが……」
「!?」
あてぃしは驚く。
その声は、先ほどあてぃしが生成した、今は何もない
だが、
バン!
「!?」
まるで乱暴にドアをノックするかのような音。
だが、まるでこの世界そのものを震わせるような衝撃が、身体を、魂を、震わせた。
バン! バン! バキ!
「まさかっ……!」
あてぃしは身構える。
「戻ってくるのか!? 空間を破壊して! 捻じ曲げて! こじあけて」
「無論だとも。こんな風に」
バキイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!!!
「!?」
空間に大きなヒビが入る。そのヒビの中心には、邪神の灰色の手が見えた。
そして、
ベキベキベキベキベキベキベキベキベキベキベキベキベキベキベキ!
その手を少し動かしただけで、空間が連鎖するかのようにヒビが広がっていく。
「ぬっおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
だけど!
「あてぃしはそれを固唾をのんで見守るタイプではないのっだあああああああああああああああ!」
全魔力を両手に込める!
「
両手に全てを氷つかせ二度と溶けぬ氷槍を掲げて、異空間よりこの世界に戻ろうとする邪神の片腕へと振りかざす。
ドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!
バキ!
バキバキバキバキバキ!!!!!!!!
その当たった場所から、氷結は開始され、辺り一帯が氷の大地へと変貌するほどの冷気に満たされる。
「これなら、どうだ! なのだ! 凍って、身動き一つ取れないはずなのだ!」
「ふむ、そうか? せいぜい宇宙よりもやや寒いくらいではないかのう」
「なに!? まだ!?」
「しょせん
完全に氷結されたはずの手が、何事もなかったかのように氷を破壊しながらぬるりと動く。
それと同時に、
「星々をわたり、精気を喰らい、滅ぼし尽くしては漂流する宇宙最強たる我を舐めるでない」
「!?」
あてぃしは離れようとする。
だけど、
「お主も一度、次元の割れ目にその身を持っていかれるが良い」
「があああああああああああああああああ!?!??!?」
ありえないほど広域の空間が、まるで網の目のように寸断される。
それは空間そのものが、邪神の手によってバラバラにされたために、防御など絶対に不可能!
「はぁ……はぁ……」
「ほう、確かに手足どころか首も落としたはずだが、生きているか?」
「死んだのだ。だけど、
「ふむ。瞬間的な死であれば無効化するスキルか」
「はぁ……、はぁ……、お前こそ、魔王を、なめるなよ、なのだ。油断しているとお前、絶対後悔することになるのだ」
その言葉に、邪神は淡々と口を開く。
「お主こそ先ほどから勘違いしていると思うがな」
「なに?」
あてぃしは
「儂はまだ力のほんの数パーセントしか出しておらん」
「なっ……」
あてぃしの驚く声に、邪神はやはり声のトーンを変えずに続けた。
「それに、こういうのは油断とは言わぬ。こういうのはな、小娘」
「『余裕』というのだ」
その瞬間、空より轟音が鳴り響いた。
あてぃしはそれを見上げ、
「あ、あはは。これはちょっと反則なのだ」
さすがに苦笑を浮かべてしまった。
なぜなら、
「驚くほどのことではあるまい。我は星を滅ぼし支配するもの。ならば」
天を仰ぎながら言った。
「小星の一つや二つ、降らせようぞ」
轟音とともに、かつて邪神が破壊した星々の極大のかけらが、この地表へと降り注ぐ。
かつてないほどの熱量が、星の地表を全て焼き払うのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます