【書籍化&コミカライズ】勇者パーティーを追放された俺だが、俺から巣立ってくれたようで嬉しい。……なので大聖女、お前に追って来られては困るのだが?
第68話 ~VS.モンスター・ビビア・ハルノア その③ 勇者 対 勇者パーティー 悲しき戦い その1~
第68話 ~VS.モンスター・ビビア・ハルノア その③ 勇者 対 勇者パーティー 悲しき戦い その1~
68.~VS.モンスター・ビビア・ハルノア その③ 勇者 対 勇者パーティー 悲しき戦い その1~
~モンスター・ビビア・ハルノア視点~
許さねえ許さねえ許さねえ許さねえ許さねえ許さねえ許さねえ許さねえ許さねえ許さねえ許さねえ許さねえ許さねえ許さねえ許さねえ許さねえ許さねえ許さねえ許さねえ許さねえ許さねえ許さねえ許さねえ許さねえ許さねえ許さねえ許さねえ許さねえ許さねえ許さねえ許さねえ許さねえ許さねえ許さねえ……。
「ゆ"る"ざね"――■□え"ぞて"め"え"ら"あ"あ"□―――■□■あ"あ"あ"あ"――■□あ"あ"あ"□―――■□■あ"あ"あ"あ"あ"――■□あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"!!!!!!」
裏切りものがあああああああああああああああああああああああああああ!
俺は余りの怒りに我を忘れて絶叫する。確かに俺の見た目は今は化け物だが、そんなことは関係ねえ!何があろうと俺様に尽くすのが、パーティーメンバーの役割なんだからなぁ!
そう、それは、デリア、エルガー、プララ! てめえら3人のことだぁ!
ローレライやバシュータはしょせん臨時でパーティーに加えただけだ。
だが、てめえら3人はダメだ!
てめえら3人が、俺のおかげでどれだけ甘い汁を吸って来たか! 俺の活躍があったから、てめえら程度の実力でも勇者パーティーのメンバーだとチヤホヤされてきたんだろうがぁ! なのになのになのにぃ! その恩を忘れやがってええええええええええええええええええええ! あああああああああああああああああああああああああああああああ!!
……にも拘わらず、3人は俺の方に武器を向けて、
「かかってきなさい化け物! この『祝福の拳』の使い手! 無敵のファイターであるこのデリアが冥途に送って差し上げますわ!」
「あきらめろ化け物! 王国の盾の防御を抜けるとは思わぬことだ! 仲間たちには指一本、触手一本、触れさせはせんぞ!」
「魔王すらも超えるって言われるアタシの魔力に絶望したらいいじゃん!」
などと吼えやがったのだ。
まじで許せねえええぁぁああああああああああああああああああああああああ!!!!
「□■あ"あ"あ"あ"あ□―――■□■あ"あ"□■あ"あ"あ"あ"あ"□―――■□■あ"あ"□■あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"□―――■□■あ"あ"□■あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"!!!!!」
思わず絶叫を上げてしまう。
「くっ、なんて禍々しい……」
「もう完全に人の心をなくしているんだな……」
「どうしてこんなことに……」
俺の雄たけびに3人が怯えたように言った。
俺はそれを見下ろして、
(ん? ……待てよ)
ふと冷静になった。
(元々しょせんこいつらは俺がいたからこそやって来れた、ただの金魚のフンじゃねえか……)
それに……、
(小せえなあ)
よく見るまでもなく、俺の眼下でほえる奴らの姿が、まるで
(雑魚……いや、こーんな蟻みたいな卑小な存在に、なんで俺様レベルの上位の存在が、怒りを覚える必要があるんだ?)
俺は気づく。
そう。
そうだ。
そうだよ。
今の俺はワルダークから託された『切り札』を使って化け物になっちまったものの、アリアケやラッカライの野郎どもに、卑怯な技で受けた傷や疲れは完全回復している。
それどころか、強大な力が体中にあふれ、無尽蔵の魔力に臓腑が満たされるのを感じているんだ。
おそらくあのアイテムによって、俺様の真の力が発揮されたんだろう。
つまり、
(俺にふさわしい、万能の力を手に入れたんだ! 俺は神だ! 崇め奉られるべき存在になったんだ!)
勇者も無論悪くなかった……。だが、それはしょせんは人の枠にはまった存在。
だが、こうして神のごとき力を手に入れた俺は、もはや人間なんていう、ちっぽちけな枠にとらわれるべき存在じゃねえ!
(まぁ、もちろん、醜悪なモンスターに変貌しちまったが……。だが、なあに、万能になった俺に不可能はねえはずだ)
きっと良い解決策があるに違いねえ。
んな些末なことに悩む必要なんてねえ。
俺は……。
俺こそがっ……!
俺様こそが『完全存在ビビア・ハルノア』なんだからなあ!
「ぎ、ぎひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひ!!!!」
俺は思わず出っ張った眼窩をグリグリと動かしながら、口から嘲笑を漏らしてしまう。
ひぃ!? という声が下から聞こえる。
その悲鳴に俺は思わず哀れんだ。
おおいに。
哀れんだ!
(ざっまああああああああああああああああああああああああああああああああ)
内心で嘲笑を上げる!
なぜなら、なぜなら!
この裏切り者の金魚のフン3人は、これから俺になすすべなく、蹂躙され、痛めつけられ、何度謝ろうとも許してもらえず、恥辱の限りを尽くされることになるからだ!
これ以上の愉悦はねえ!
元々勝てる見込みのねえ俺が、さらにパワーアップしてるんだ!
負ける確率はまさにゼロ!
俺という神を裏切った冒涜者たちに、神みずから天罰を与えられる! 最高だ!
「ぎびびびびびい"い"い"い"い"い"い"い"い"い"い"い"い"い"い"い"い"い"い"い"い"い"!」
喜悦に思わず喉を鳴らしてしまった。
「くっ、何がおかしいの、ビビア……。いいえ、今はただの化け物だったわね……」
「い、今すぐ引導を渡してやるぞ!」
「一遍の欠片も残さないほど、や、焼き尽くてあげるんだから!」
(ぎゃーーーはっはっはっは! ほえろほえろ! 怯えろ! 怯えろ! 神にたてついた報いを受けろ! 心地いいぜえ! 負け犬の遠吠えってのはよお!)
俺は最高の愉悦に浸る。
ああ、だがもったいねえ。
俺は惜しくなる。
この瞬間を。
この時を。
この勝利の確約された快楽の時間を。
なぜなら、3人の遠吠えという名の心地よい音色も、もうすぐ聴けなくなるのだ。永遠に!
なぜなら?
(あああああああああああ、もう我慢できねえ!)
俺にささげられる供物になるからだ!
ああ、そうだ。神に我慢など似つかわしくない!
やりたいようにやる!
いたぶれるだけいたぶる!
それが上位者たるこの完全存在ビビア・ハルノア様の権利なんだからなぁ!
俺は弱者をいたぶれるという快楽の予感に腹の
「あ"ーばっ□―――■□■ばっばっば□―――■□■っば!!! ジネ"え"え"え"え"え"え"え"え"え"え"え"□―――■□■!! ザゴども"が□―――■□■あ"あ"あ"あ"あ"□―――■□■あ"あ"あ"あ"あ"□―――■□■あ"あ"あ"あ"あ"!!!!」
俺は数秒後にはぺちゃんこになっている3人を想像し、高らかな哄笑を上げながら飛び上がると、そのまま巨体を利用して押しつぶしにかかる!
コロシアムという限られた空間の中で、超巨大を誇る俺様の、この攻撃から逃れることは絶対に不可能! 必然の勝利! 楽勝だ!
「きゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
大衆どもの悲鳴がとどろいた。
んぎいいいいいいいいいい! 心地いいいいいいいい!
俺の勝ちいいいいいいいいいいいあああああああああああああああああ! ぎゃーっはっはっはっはっは!
俺の脳は勝利を確信して、最上級の美酒に酔うかのように歓喜に震えた。
しかし。
「甘いわあ!!」
キイイイイイイイイイイイン!
は?
何が?
俺の巨体を受け止め……。
「国の盾をなめるなよ! この化け物があああああああああああああああああ!」
バッキイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイン!!!!
「ふ"ぎゃあああああああああああああああああああああああ!?!?!?!?」
押し返されただとおおおおおおおおお!?
ドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン……。
「す、すごいわ」
「あ、あの巨体を受け止めた上に、弾き飛ばしてひっくりかえしたっ……!」
大衆の声が響く。
奴らが言っているように、なんと弾き飛ばされた俺はまるでカエルように無様にひっくり返っていた。
目玉をぎょろぎょろとさせて口をパクパクとさせる。
馬鹿な!
ありえない!
何が起こったんだ!
理解することを、完全存在たるこの俺様の脳髄が拒否する!
ありえないありえないありえないありえないありえない。
「あ"り"え"な"い"い"い"い"い"い"い"い"い"い"い"い"い"い"!!! あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"!」
なんで、なんで、なああああああああああああああんで!
「な"ん"でデメ"エ"ごと"き"ム"シ"ケ"ラ"に"、こ"の"ガミ"た"る"オ"レ"のコ"ウ"ゲキがウけドめ"ら"れ"る"ナ"ン"て"こ"と"がオこ"る"ぅ"う"う"う"う"う"う"う"う"う"う"う"!?!?」
俺はありったけの怨嗟の念をこめて、その名を叫ぶ!
「エ"ル"ガア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"!!!!!」
その絶叫に、俺の超巨体を、たった1枚の大盾で弾き飛ばした男は、あろうことかニヤリと笑うと、
「俺の名はエルガー! この国の盾! いや……」
男は筋肉を見せつけるように仁王立ちすると、
「人類の
そう高らかに宣言したのである。
なっ……!
なっ…………!
なああああっ…………!?
雑魚のくせに! 雑魚のくせに! 雑魚のくせに! 俺の金魚の糞ごときが!?!?!?!
俺は唖然としてまた口をパクパクとする。
だが、それだけではなかった。
愕然とする俺とは対照的に、余裕をもった様子で、エルガーの後ろから、
「やれやれ」
そう言いながら、
「たかだか化け物の一匹や二匹、防げる程度の支援スキルを使用することなど、俺にとっては大したことではないんだよなぁ……」
杖を携え一人の男が悠々と歩いてきたのであった。
俺は一瞬頭が真っ白になる。
だが、
ア……。
アアアア……。
アアアアアア……。
アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!
その名を叫ぶ!
「アビアベ・ビババア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"!!!!!」
知らぬうちに俺の口から、その最も憎い男の名前が、怨嗟の絶叫とともにコロシアムに轟きわたったのだった。
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