第4話

お母さんに聞いた話で、この地区に住んでいる大きな農家さんの◯◯家にはお爺さんが奥の部屋に居て外には決して出ない家があると聞いた。

昔からその家は女系の家系で赤ちゃんは女の子しか授からなかったんだって。

だから、子孫を反映させる時はいつもお婿さんをもらうらしいんだけど、それが親戚の親戚とか近しい男の人を迎えるから、それはそれは恐ろしいことにもなる事があるそうと聞きいた。

なぜ、近しいそれも親戚の人と結婚するのかと私はとても嫌だったのを思い出すけど、大きい農家さんやお金持ちの家ほど、沢山の土地や家や田畑や財産を持っていて誰にも渡したくないからだとお母さんも聞いたということを話てくれた。

強欲と言えば強欲。ご先祖を守るといえば守っているのかなとも思えるこのお話だった。そういえば、大きな農家さんの畑などには自分のところのお墓を建てている地域もあるみたいで、私は小さいながらもとても複雑な気持ちでこの話を聞いていたことを広い畑を見ると時々思い出す。

話を戻しますが、そのお爺さんが何故、奥の部屋から出てこないのか、お母さんははっきり聞いてないみたいでしたが、私もだいたい、そういう所の感が働いてもしかして、他の家で見たあれかなと思い、またこの話も思い出した。

おばあちゃんちに行った時に、近所の大きな農家さんの家にお邪魔した。おばあちゃんの茶飲み友達のおばあちゃんがいて、2人で煉炭コタツでずーっと話しているので、私はみかんやら羊羹やらたいらげて、だんだん飽きて。

その家もとても大きい広い畳の部屋がいくつもあって、隣の仏壇がある部屋には人の顔の絵や写真が並んで額に入って神棚の隣から古い順に飾ってあった。

その隣には、賞状も飾ってあった。

中には、胸に星がついた軍服を着て帽垂という耳みたいに布がついた帽子を被っている人や背広を着た男の人や、黒い着物の女の人があって、部屋の真ん中の私の事を見ている様で怖くなった。だから、その部屋の裏の廊下に出て廊下を反対側に歩いて少し探検しようとずんずん台所をすぎて、その奥の外に土間がある屋根のかかった渡り廊下を進んだら、また細い廊下があったから行ってみた。トイレがあって、小さい物置が階段下だから斜めの三角の部屋で、箱だの、ほうきだの色々入ってた。

奥にも小さい部屋があって、そこは、窓がなくて暗かったけど、ロウソクの明かりが床の間に付いていた。

その前に布団が敷いてあって、誰か寝ていたみたいだけど、誰も居なかった。私は、廊下を戻って歩いた時、さっき来た方から大人の女の人が裸でウロウロして歩き方もちょっと変だった…。足を痛そうに引きずっていた様な歩き方だった。私はとっさに開いていた階段下の小さい物置部屋に入って通り過ぎるのを見ていた。

髪が伸び放題で、顔には大きな紅いあざがあって、何か叫びながら、グルグルと回っては、歩き、回っては歩きして、奥の部屋へと静かに入って行ったのを、黙ってじっと見ていた。

目が合ったのに、その事はなかった様に通り過ぎた。

それから、いままで誰にも話したことはない。

何故かその時南無妙法蓮華経と思ったことは今でも覚えている。

それから、おばあちゃんの隣でだまって煉炭のコタツでみかんを食べた。

私は、昔から見える者は怖いと思うことはなかった。

この世に本当に怖い人などいないと思うのが、私であった。

だから、いつも騙されることも多かったのかもしれぬと思う時もある。

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