時代に取り残されかけてる人達と未来に行き過ぎたお嬢様の悩み

皆さん。

天の声が高校時代に同級生と飛行機の話になった際、ホーカーシドレー・ハリアーという垂直に離着陸できる飛行機の話をしたところ「垂直に飛ぶ飛行機なんかある訳ない」と、VTOL機というものをどうしても信じようとしなかったのがいて頭を抱えたそうです。

その頭の固いのに今、オスプレイを見せたらどうなるか見ものだと言ってましたが、確かに現物を見せないと納得しない人というのはいつの世にもいるのでしょう。もしも貴方のまわりに「マスクをするのは、自分が菌を貰わない自衛のためよりも、自分が菌を持ってて撒き散らすのを防ぐ意味の方が高い」のを信じない人ですとか、実際には安全なのに核と名がつくだけでエンジンもかけていないのに危険だ被曝すると頑なに言い張る人ですとか、俺ルール私ルールで世界を回そうという人がいたらどうしますか。


ええ、わずか1分でNBに行けるというのを信じてくれない人が今、目の前にいます。


仕方がないので実力行使しようと思います。

…と言っても、アークロイヤルはNBへの帰投準備や帰り荷の積載でてんてこまい状態真っ只中です。入れ違いに来るハーミーズが地球圏に到達するのはもうちょっと先になります。そしてアークロイヤル級は全艦、地球大気圏内にいきなりスティックススタート&アウトする事が出来るレベル3対応のスティックス・ドライブ機関を搭載しています。


まぁ、いきなりこんなもんが地球の空中に出てくると、連邦の防空問題上ものっすごくまずいのですが、NB側からしてみると衛星軌道の方が怖いわと、何をどう聞いてもショートカットしたい気満々でした。

仕方がないのであたしが間に入りまして「大使館とか領事館の真上やったら治外法権扱いでええんちゃいますの。NB側にしても大気圏突入時にまさかの攻撃が嫌やから直接スティックスアウトしたい訳やねんし、高度500m以内なら伊丹関空神戸のニアミスも防げますし、そんな高度で下手な事はNBも出来ませんて。あたしがアークロイヤル操船してても、対地攻撃ならもっと上空からやりますわ」と、実艦の指揮操船経験から来る話をして連邦側を何とか説き伏せまして、地球大気圏内への出現はロンドンまたは大阪市内の指定空域に限定する話で落ち着きました。

確かに「公式的には」いまだNBは連邦の敵ですが、その敵が本気出したら危ない上に「その敵の技術資源が死ぬほど欲しい」連邦側にしてみれば、かなり譲歩してでもアークロイヤル級による密輸を黙認しないと困る訳でして。

結果、大阪市中心部の除染再開発が進んでいないのを良いことに「なんか浮いてるけど見なかった事にしよう。市民の通報も一切シカト」という処置で今の今まで押し切っている訳で。


ちなみにバンシーもドゥブルヴェもババヤガーもカリバーンも、全て垂直離着陸は出来ます。

出来ますが、ババヤガー以外は排気温度一千度を超える熱に耐える地面を必要としますので「ICD/Gを使いまくってアイドリングに近い状態で降ろす」か、散水設備のある地面を用意する必要があります。


そして。


「論より証拠と言いまして。実際に1分かからんのを体験してもらおうと思います。武内部長は既に体験済みなので、ここは一つ当社営業の舵取り役たる竹崎取締役副社長兼営業部長にご体験頂きましょうか」


で、ちょっと鋭い人なら気付いてたかも知れない話。「この場に営業関係者がいないのは何故か。この会社は営業部門が貧弱なのか?」んな訳ありません。重要部門です。


そしてこの竹崎という名のタヌキと、うちの親父がズブズブってる理由です。ほいでもって、なんか運輸現業部門と副社長の仲が悪そうな予感を抱いた方もいらっしゃるとは思いますがね。


うん、このおっさん、もともと阿川急便の人間で、親父いわく「三顧の礼を尽くして来てもろた」人物でしてね。ウチが阿川の…例えば大阪と東京の間で毎日走らせてる路線便という大型トラックの仕事の下請けに入れてるの、タヌキのコネだったりする訳です。ちなウチの会社の制服とジャンパーは緑色基調でして、竹崎のおっさんも社内ではこれを羽織ってるのですが。

で、我々は陰でタヌキの事を「緑のタヌキ」と呼称していたりします。はっはっはっ。

とまあ、某即席麺に対する風評被害甚だしい社内敵性種別呼称をつけられているタヌキ。さっきからタヌキタヌキと、さながら農業関係者がモグラの名を口にするときみたいに憎々しげに言うてますが、タヌキ系某ヒロインは俺の嫁という方に申し訳ない気持ちに満ち満ちとる言うとけと天の声がなんか言うとります。

だが知らんがな。タヌキやからしゃあないやん。


「い、いえその、わたくしよりは田中部長か三田村課長に体験頂く方が」気付いたかタヌキ。お前しか適任者はこの場におらんのじゃ。この技術革新を経理や総務に経験させる必要性がどこにあんねん。今の会社の実質トップで営業部門の長たるお前しかおらんやろが。

そして竹崎なくば我が社の営業立ち行かずという事実を作るために、自分の椅子を守るために営業部の人材育成、わざと怠って来たやろ。残念やけど、身代わりにできるはずの営業課長と係長にはクレーム対応の業務が「なぜか」発生しとるからな。呼んでもすぐには来られへんで。


あ、タヌキが1分でNBの事実現認を拒もうと逃げ回る理由ははっきりしております。

外航航宙船操舵資格だの色々持ってるあたしがこの場で言い切るという事は、NBまで1分が事実なのです。

それをタヌキ、本当は理解していますよ。


ですがそれを認めてしまうと、会社の営業方針についてあたしが口を挟みーの、いっちょ噛みしーのと介入しまくる口実を与えてしまう事になるのです。


ですから絶対に瞬間移動をここで体験したくないのです。


経験してしまえば証人多数のこの場で「いや私は経験していないから、そんな絵空事に耳を貸して経営判断を左右する事はできません」と逃げを打っても、竹崎さんあなた経験しましたやん、部長連中も見てましたで終わってしまうのですよ。


で。往生際の悪いタヌキ風情、ここで一発ぶん殴ってカリバーンの後席に積んで経験させる「菅野直式解決法」を実践してもよいのですが、とりあえずタヌキに現実を突きつけてあげましょう。

「まあ、竹崎副社長がこの場で経験なさらなくとも良いのですよ。実は、我が社の代表取締役社長の高木義夫と、フットワークホールディングス株式会社代表取締役会長の高木アレサンドラ。この二人は既に経験しておりまして、当該技術が如何に今後の連邦内運輸業に革命的な革新をもたらすかを理解しています。要は、あたくしとクリス・ワーズワースの結婚式の時にこの二人と武内部長もアークロイヤルに乗ってNBに行って挙式に参列してるんですよ」うん、1分でNB、実質ほぼ瞬間移動が出来る事が、いわゆる運送屋の業界にとってどんな驚異かつ脅威になるか。最低でも距離運賃の概念、吹き飛ぶねんぞ。

地球表面で瞬間移動の技術を民間開放なんぞしてみい。ガチにど◯でもドアを売り出すようなもんやぞ。宅配とかの形態も全く変わるぞ。

で、せっかくなのでこの場でバラしてやるか、クレーゼさん譲りのあたしの能力。

(武内さん武内さん。あたしの方見んと答えてね。口に出さんでええから)

(な…なんですか?頭の中にお嬢さんの声が?)

(一種のテレパシーや思て。それより前の緑のタヌキ、逃がさんで。タヌキ狩りしてタヌキ蕎麦でもタヌキうどんでもええけどいわしたるからな。援護頼むで)

(はぁ。しかし往生際悪いですな、タヌキ)

(当たり前やん。あたしの話を聞いた体験した信じたら、あたしに今後の営業計画どころか事業計画を練ってください私みたいな年寄りに出来る仕事やおませんいう結果になってまうの、自分で理解しとるでタヌキ)

(つまり今、あのタヌキは逃げようと悪あがきしてると。お嬢さん、あれ殴ってよろしいか)

(やめときやめとき。やるならあたしがやったるから。条件整えたらこの場でタヌキ射殺しても一切不問やで、今のウチやったら)

(ほなどない追い込みますん)

(ま、ちょっと聞いといて)

「えー。竹崎副社長のみが経験頂いていない現状では、流石に高木義夫が退院して現業復帰した場合には社の方針と竹崎副社長のお考えが乖離する状況にもなりかねないかと。武内部長。仮に地球表面に転送ゲートのようなものが幾つも作られた場合、どのような懸念が予想されますか」

(わしらの商売上がったりや言い!わはは)

「えー、ちょっとお話を聞いただけでも長距離貨物トラック輸送をする必要がなくなる気はしますな。あと内航海運とロールオン・ロールオフ輸送も」

(ワシもなかなか言いますやろ)

(よっしゃ上出来や、ほなあたしが引き継ぐで)

「ありがとうございます。なぜユニオンキャリー社がNBとの関係を緊密にしているかお分かり頂けますでしょうか。そして、これもオフレコですが、日本郵運、福島通運、東濃運輸、ミケネコ、そして阿川急便といった企業のトップについては既に国交省や連邦交通局主導の会合に呼ばれており、当該技術解禁に伴う激変緩和措置の内容についての審議を繰り返しています。つまり、いきなり解禁したら世界や宇宙が変わるから、どの段階でどのレベルまで世に広めるか、既に検討中という事ですわ」

(えらい上も上の方の話ですなぁ)

(あたしもコレに呼ばれてんねんで。しかも、軍事技術としてもエラい事やから宙兵隊の上でもてんやわんやになっとんのよ。ま、あたし役職としたらNBで今度少将に上げてもらうしー、向こうやったら将軍さまやから敢えてNB側として話するでー言うて大佐に振ってるけどな)

実はこの措置、あまり連邦側に引き込まれると後々かなわんということでこないだワーズワース卿に相談しまして…結果、円卓会議で特務少将昇進を決めてくれたのですよ。

連邦側としては、こんな小娘に地位を与えてでかい顔させたくない本音があるのを承知の上で「どや、ウチは息子の嫁を大出世さしたったぞ。お前らは彼女に何をしてやるんや」と椅子のグレードアップを迫る形で連邦側をいじっているのですね。


…さすがは大英帝国の末裔、ぶぶ漬けや嫌味も一味違うわ。


(あとな、タヌキがこの話握って阿川に戻ろうとしたり、他所に移るのを防いでるん理解しといてな。仮にタヌキがそれやっても感謝されるどころか、政府の外部委員会扱い機密のコンプライアンス違反になって、お前それどこで聞いたいう話になるから。けけけ)

(あの…お嬢さん、逆に私らがそれ知ったらまずいん違いますの。私らみたいな中小が知る話やない気ぃして怖なりますがな)

(知ってもまずない。問題ない。我が社はユニオンキャリーと業務提携した企業や。ウチから他所に漏らさんなら情報通知レベル基準は満たしとるから安心しぃ)

(わかりました。しかし、ほんまタヌキ、逃げ場のうなりましたな)

(よし、もう一つ話を振るで。聞いといてや)

「武内部長並びに三田村課長につきましては…当該事案に関連した対応に関する特命研究を指示させて頂きたいと思います。資料は後日別途用意しますので、それに目を通してからの開始という事で、それまでは内密に願います。あと本件予算が必要であれば財務支援を行う用意がありますので、田中部長も対応をよしなにお願いいたします。よろしいですね、副社長」

「い、いや…高木取締役に勝手に決められても…」

「竹崎副社長。ちょっと失礼します」言うなりあたしは時計を操作してから、会議室のリモート会議モニタを点灯させました。


映っているのは我が親父、高木義夫。


「今までの会話、失礼ですが父にモニターして頂いていましたの。視点はあたくしですが」自分の目を指差して差し上げます。あたしが改造で生体インターフェイス搭載してたり、バッグやアクセサリーに盗撮盗聴機器忍ばせとる可能性、考えんかったんかい…。

『竹崎さん。あんたに頼みたい事がある。この場はジーナ…いや、高木取締役役の指揮下に入ってくれまへんか。でないと流石に業務の人間は社についてこないやろ』

「い、いや社長。そない言われますが…」

『すまんがわしが今コレやし、あんたには申し訳ないがワシは会長に退いて、ジーナに社長やらしてもええと思うんや』自分のいるベッドを指差す親父。

『それと、これは他の者も聞いて欲しい話や。はっきり言うて、世に広まるかどうかは別として、NBが街中でもどこの淡輪たんのわとかみたいな田舎かいないう街並みの一方で、わしらがびっくりするような技術を持っとるんは、ワシがこの目で見てきた事実や』

『そしてNBは商売になるなら、ワシらにそれを提供する方針や言うのはワーズワース伯爵やったかいな、NBのトップの人自身から聞いて来たし、事実、荷物の付き添い名目で我が社の人間を寄越してくれたら、軍人には見せられへんもんも見せる事が出来る。その上で連邦の技術レベルをNBの水準に近いところまで引き上げる方が我々にも利益が出るとはっきり言うてくれはったわ』

『まぁ、うちの娘…高木取締役が言うた通り、既に連邦上層部では、この際やからNBの提案に乗ってみる方向で世の中を変えるらしい言うのは事実やろ。ユニオンキャリーの協力企業いう名目で、ワシもそれなりに娘の話が事実やとわかる資料を見る事ができたしの』

『で、今後どのくらいで社会が変わるんかはわからんが、我が社はそれに備えんとあかん。誰が聞いたかて会社存亡の危機やないか。むしろジーナがおった事で、ワシらも大手とスタートラインを同じに出来た訳やし、事によると大手より先回り出来るかもわからん。ワシは竹崎副社長ともあろうお人が、かかる商機を逃す人物やないと固く信じるわ』

「では高木社長。この場で申し上げるのも少しばかり酷な話になりますが、今後の懸念を申し上げます。お父ちゃん…いや高木社長、正直、大手のケツ追いかけてたらウチ潰れますよ」

『お、お前いきなりやぶから棒になんやねん』


いや、親父だけではありません。

全員が驚愕と恐怖に満ちた目であたしを見ました。


そして、この場で少々の嘘やハッタリを言ってもみんな信じそうなくらい不安に満ちた顔で、あたしの話の続きを待っております。

そうよ、この「救いは、救いはないのですか」という流れで一気に畳むわよ。

「高木取締役て言い。一応記録取ってんねんから、親子の馴れ合いにならんようにな。うはは。で、我が社が活路を見出せる市場につきまして、実は腹案があります」

で、何か言いたそうな親父を手で制して続けさせて頂きます。

「わたくしの申し上げたい要点ですが2つ。まず一つ目は、他ならぬNBの実態です。まぁ、当たり前ですがNBには、どこの企業も食い込めてはいません。国交回復しない限りはいくら向こうで商売したくとも出来ませんわな。しかし、武内部長。NBへの公式上陸こそ叶いませんが、向こうの船に同乗する形で貨物扱いオブザーバーとして我が社の社員は非公式に現地を訪れていますね?」

「はい取締役。実際には上陸許可証を貸与頂いて向こうの道路事情などを視察してくれと言われていますわ。実際に現地ではかなり信頼関係を築けていると報告を受けていますし、私自身。軍艦の艦長さんと言わず向こうの輸送関係の方と言わず、様々な方々からお褒めと感謝の言葉を度々頂いています」

「つまり、NBでの物流事業は我が社に大幅なアドバンテージがあります。実際、ユニオンキャリー社からもNBでの現地法人設立の暁には我が社からも出向人員を頂きたいと、大変熱心な要望を頂戴しております。要約致しますと…NBで運輸業やるなら市場あるから来い、という事ですわ」

『しかしジ…高木取締役。向こうにも運送屋はあるんちゃうんか?』

「ありますよ。但し、日本と違っていわゆる個人や小規模顧客向けの事業を大規模に展開している業者はありません。かつての日本郵運みたいな大口主体の事業者や半公営の郵便事業と、あと中小ですね」

(武内さん、向こうは国策産業に関わる輸送を優先していて、民間や個人対象の貨物輸送分野は立ち遅れ気味や言われてたやろ?振るからその話してくれます?)

(はい、振ったってください)

「つまり、工業といわず農業といわず、NBの国土開発のための産業輸送分野は必要があるからやってる業者が既にあるけど、民間向けの運送事業者はまだまだ少ないのが事実ですわ。武内さん、僻地とかだと軍隊が荷物運んでる場合すらあるて聞いたでしょ?」

「ええ。最初に肥料やら何やらを軍の輸送機に積み替えてくれとか言われて面食らった事ありましたけど、話を聞いて納得しましたわ。民間の航空会社すら少ないところに軍が連絡便飛ばしてるとか、どんなんやねんと」

『例の転送技術いうのんはまだ使うてへんのか』

「あ、これは説明しときます。実はNB自体でも惑星表面での転送移動は民間レベルだと試験段階です。なにせ、どこにでも行けるドアみたいなものを民間に開放するのはさすがにNBでも慎重論が出てまして、こちらでいう東京から名古屋や大阪みたいな感じの拠点都市間を結ぶ形で何箇所かで試験運用して問題を洗い出してる状況ですわ。あと現状やと設備が結構でかいんで、そこらにポンポン設置するくらい小型になるにはまだまだなんですよ。特に稼動電力がいるから発電所が必ずセットになるんで」ちなみにエオンやカリバーンのように多空間型外燃機関を積んでたり、MIDIのような対消滅機関を使えば小型化できるけど、円卓会議では全員一致で「まだ早い」と決めていたり。

「ま、そういう訳で、端的に言いますと来てくれたら仕事はある。来たいなら歓迎するとフォブリー円卓騎士伯爵…NB交通大臣から言質を頂いています。つかお父ちゃん、あたしの結婚式の時にフォブリーさんにも会うて話聞いとるやろ、忘れたんか?」はい、ここで一同爆笑。

『いや。あんな白人さんばかりの式やし、みんな英語で喋ってるからワシ訳わからんと上がりまくっとってな、あの話にしても社交辞令やとばかり』

「アホか…失礼。残念ながらと言いますか、仮にも爵位持ちが単なるリップサービスならもっと持って回った言い方で誤魔化します。あの人が来いと言うからには、本当に来いという事なんです。そして武内部長、NB側のトラクターヘッドの車種、向こうに行った際にチェックされてましたかしら?」

(ほら、結婚式で行った時に港で見たやん。日本ヂーゼルのヘッドが結構おるなとあたしらで盛り上がってたやん。それ言うて!)

「えー、日本ヂーゼルのトラクターヘッドが多数走っておりました。右ハンドルやし、私ら向こうですぐ運転できるなぁと」

「この車種普及状況は社長もご存知ですよね?つまり交通法規的には似通っている環境の日本企業が参入する分には、他国の企業よりは楽が出来るかと。手動運転する際に向こうの交通標識を覚えてもらう必要があるのと、ウィンカー出そうとしてワイパー動かさんといてなくらいですね、向こうの車動かす注意事項」

「あー、外車あるあるやな」これには一同納得。流石に運送屋におって車の一台も手動モードで走らせられんと恥ずかしい訳で。

「ま、NBに会社の軸足を移すべきかは別としましても、魅力的な市場があるというのは皆様納得頂けるかと。そして、もう一つ、当社が新規に参入可能な市場があります。ただ、こちらにはものすごく高いハードルが存在するんで、現状では現地状況をお話する程度にとどめますね。食い込めたらNBよりさらに巨大な市場になりますけど」

これは逆に、親父以外が何やそれという顔をします。

もっとも、親父はあたしから聞いてるから「あ、多分あそこやな」と見当をつけたようですが。


「では、当該地域の問題を申し上げます。陸上交通機関が徒歩もしくは馬車や荷車や象や恐竜、海に至っては帆船とか手漕ぎの船なんですわ。端的に言うと、地球の17世紀までのレベルなんです」

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