姉をもてあます妹と弟をもてあます姉の悩み

皆さん、いきなり個人情報機器を取り上げられて薪でご飯炊いて生活しろと言われたらどうしますか。

あなたの生活水準をよくて明治時代、悪ければ江戸時代の水準に引き下げられますか。

「あの弟が耐えられるか、あたしすっごい不安やねんけどなぁ」TAPPSを親父が入院してる病院に向かわせながら、あたしは後席のクレーゼさんに質問してみます。

「まぁまぁ、姉様の時のようにいきなり無人島に島流しする訳じゃございませんわよ。わたくしどもに、諸国から預かっている訳あり者を使う労働奴隷の制度がありまして」

「ふんふん。でもさぁ、そっちなら基本、どの国も何かの形で奴隷使ってるん違うん」

「まぁ、ある程度の身分のお家の方で、跡継ぎに相応しくない事をされた、しかし自国で投獄したり奴隷に落とすのはまずい場合、わたくしどもに預かりを打診されますの」

「あー、うちらで言う島流しとか高野山送りか!」特に2回も流されたGODAIGOなお方をイメージしてみましょう。

「まぁそんな所ですわね。で、姉様の首輪に近いものを付けて頂きまして、聖院の下町での雑役などを致して貰いましょうという訳ですわ。ほれほれ、わたくしどもが罪人と言っておりますあれ」

「ところでアレーゼさんの首輪、どないするん。あれ毎回毎回ぶつぶつ言うてるけどな」

「無視しておいて下さいまし。姉様が謀反を企てないならば、何もあんな扱いをする必要なぞ全くございませんのに、ああ思い出すだに腹が立ちますわ、少々の咎人扱いくらい我慢して頂きたいですわね」ええ、アレーゼさんの首輪…罪環というそうですけど、単にゼンカモンに嵌めるものではなく、あの人クラスを束縛するための特殊仕様だそうです。

「まったく、他国なら死罪ものですわよ。あたくし個人としてはまだまだ島流しにしておきたかったのですわ、あの不肖の姉は」


そうです、クレーゼさんがぷんすか怒るのにはそれなりの理由がありまして…。


要は姉妹の仲が悪かった上に「姉より優れた妹などいねぇ」と、黒堕ちの儀式をやってウチらの宇宙から航宙駆逐艦一隻を召喚しやがったんですよ、アレーゼさん。


それも、偶然たぁ言え、地球圏防衛艦隊麾下の悪名高い名物艦長で、NB侵入の際のあれこれの責任取らされて左遷されたワイズミューラーっておっさんの乗った船を呼び込みましてね。で、重要宙域の新鋭防空艦だった東風級V D E駆逐艦を取り上げられたおっさん、悪い事に型落ち型遅れで航路哨戒などに使っていた獣帯級駆逐艦を与えられてまして。

まだ東風級の方がまし言うたらましやねん、何でアレーゼさん、よりによって獣帯級引っ張りやがったと。

そして、型遅れなのに何が問題と言うに、獣帯級航宙駆逐艦というのは万一惑星や衛星の反乱が起きた際に、真っ先に駆けつけて初動作戦を行うための降下鎮圧用装備を積んでるんですわ…つまり、地球圏の防空迎撃を含めた航宙艦同士の戦闘に特化した東風級よりははるかに危険な存在だったんですよ、地面の上にいて迎撃手段を持たない相手にとっては…。


そして何で宙兵隊のあたしが獣帯級航宙駆逐艦に詳しいのかと申しますとですね、あたしが教導から外されて左遷させられた先が正にこれの同型艦でして。

で、具体的な兵装ですけど、個艦武装以外に戦闘機も最大6機まで積み込める上にですね、無人遠隔砲艦というべき大型航宙戦闘機のQCF-14RYDEENを2機「左右舷側に係留搭載」してますねん。

全長450mの紡錘形船体のどこが駆逐艦やねん思いますけど、陸戦分隊のTAPPSは言うに及ばず、全長80mの長距離対艦対惑星ミサイルのCHHM-02プリュトンを船体に2発、雷電1機に付き各2発積んどります分デカいんやと聞かされてはぁそうですかと。

このプリュトンというクソでかいミサイル、1回限りで短距離スティックスドライブを行える上に、1発に付きレーザー爆雷または破砕散弾爆雷の子弾頭を各6発入れておけまして。更に大気のない宇宙空間でそれなりの威力が必要やろと、子弾頭1発辺りの起爆核弾頭出力が100メガトンという無駄に大出力な代物なんですわ。

更に搭載戦闘機がバンシーの場合、同じく100メガトン弾頭を積んだルドゥタブルってミサイルを1機につき1発積めましてね。そうです、ゴルディーニのおっさんにいい加減引き取れ引き取れってあたしが騒いでたやつです。もっとも、うちにあるのは標準型のP1弾頭ではなくてF2という指向性純粋核融合弾頭で、爆発の仕方が通常型とは少し違うんですけどね…ま、洒落にならない威力なのは間違いありません。

そして天の声いわく「獣帯級1隻で、最大火力搭載時だとフルパワーモードに調整したツァーリ・ボンバを66発、攻撃対象惑星に落とせると説明しろ」と申します。


更にバンシー自体が積んでる空戦用ミサイルのテリブル、これは宇宙軍用だと大気圏内迎撃に使うので通常炸薬仕様のC型弾頭を積んでるのがほとんどなんですが、侵攻作戦がメインの宙兵隊では敵地で使うので遠慮はいらんとばかりに、PまたはF型弾頭タイプの核弾頭型の搭載がデフォルトです。うん、搭載10発のバンシーや8発のババヤガーだと搭載数×広島型原爆と思って下さい。

更にW字型主翼の内翼部ランチャーに左右10発ずつ最大20発のテリブルを積み込むドゥブルヴェの宙兵隊仕様だと、原爆20発です。ついこないだまで領事館の地下格納庫に、正にその宙兵隊仕様のドゥブルヴェが一機いてました。いくら何でもあんまりに危ないので、空戦訓練用のT弾頭仕様かき集めて積み替えて貰いましたが。ええ、こんだけの核弾頭積んでるのが領事館ビルの地下に2機いると考えたらですね、もう不安で夜しか寝れませんわ。

そもそも空戦用高速機動ミサイルなテリブルの飛翔速度、発射条件を整えたら大気圏内でもマッハ10から最大で20近く行くんです。訓練用の無炸薬弾頭でも対地モードで射ったら衝撃波だけでかなりの破壊力があるんですが、大出力核弾頭に比べたらこんなん充分に平和的じゃないかと思えるのです。しかし訓練用弾頭のついたテリブルをぶっ放して着弾してる広報映像が世間に出回ってるんで、それ引き合いに出されて苦情来たら困るので黙ります。ほほほほほ…。


ま。

あたしが乗ってたり乗ってる機材が実は大変に物騒なこともさりながら、どんなに楽観的に考えても獣帯級1隻で地球型惑星表面の面積の半分以上をですね、モヒでヒャッハーな世紀末状態に出来るというのは迎撃手段がなきゃ脅威も脅威やろと。

そらこんなもん召喚したら誰でも脅威に思うわという訳で、結論から言うと当該駆逐艦サテュルヌス012は撃沈処分、艦長とアレーゼさんは捕縛され、罪人環以外の一切を身につける事まかりならずのすっぽんぽんで恐竜がウヨウヨしてる無人島へ放逐刑に相成りまして。

その際に「くっ、殺せ!」とアレーゼさんが言いよったので、あまりのハマりぶりに正直吹きそうになりましてね。

なお、流された島に2人を降ろした際、砂浜と椰子林の境目に、これ見よがしに砂に埋まりかけた宝箱が置かれていたそうです。

そして箱を開けると短剣や弓矢や火打ち石や濾過用のザルとか、向こうのサバイバルキットみたいな感じの物ががっつり詰め込まれていたそうなのですけど…。クレーゼさん曰く「銀衣ならあれだけ渡せば絶対生き延びます。下手したら巨大な獣や竜を従えて村を作っておりますわ」と言った尻からですね、アレーゼさんがいい感じの木を使って作った槍をたずさえたワイズミューラーのおっさん、無謀にも狩りに出かけて恐竜に喰われたそうですわ…。

(どうも姉様が止めたのに、男を見せるとか言って張り切って出て行ったそうで…そして、罪環の聖で姉様の能力、それなりに制限されておりましたでしょ…悲鳴を聞いて駆けつけた際には後の祭りだったそうなのですよ…)

で、クレーゼさんとしてもですね、とりあえず頑張って銀衣の跡継ぎを作ってくれたら、姉は世間から隠しておけると考えていただけに、まさか某ユダヤ系国防軍男性兵士の主要戦死因みたいに「ああも女性に対し見栄を張って早々と死ぬとは…」と報告を受けて崩れ落ちたとかなんとか。


「しかし、あんたまた何でアレーゼさん生かしといたのよ」

「それはお義姉様、諸国に被害が出たり問題が広がる前に解決できたからに他なりませんわ。あの船とやらが地上に害を為しておれば、流石にわたくしと言えど厳しい罰を与えなければ示しがつかぬ事になっておりました。具体的には聖院宮の地下の処断場送りにせざるを得ないかと…まぁ、皆から嘆願が多数寄せられましたのが大きかったですわねぇ」

「そうそう、アレーゼさんの銀位ってさ、誰か別の人間に引き継がされへんの」

「出来なくもございません。例えば、銀位なら銀位の血縁が絶えた場合の方法は伝わっております。おりますが…はっきり申し上げて姉様に孕んで頂く方が楽ですの。もんんんんんんのすごく。とっても。多分、あの真面目なマリアでも、姉様をつがわせる方が簡単だと言いますわ」

「そんなにクソめんどくさいんかいな」

「…えーと、何でしたか、ぶっきょうとかいう宗教の一派で、お経の書かれた車をくるくる回すアレ、あれですわ」

「あー、ダライ・ラマ」

「そうそう、あの尊いお方のように生まれ変わりを探す必要がございますの。生まれ変わりというよりは記憶の源を繋がれたお子、と申しましょうか。これ、わたくしの金位も同じ事でして、マリアが生まれなければ皆様のお手を煩わせますし、聖院に諸国が介入する原因にもなりますわ」

「はいはい、私ら金位を今まで育ててました保護してましたから、後見人として聖院にいっちょ噛みさしてなと言いかねんと」

「まぁ、もう一つ方法がございますが、これが今回のアレーゼ姉様の件に繋がっておりましてですね、あたくしとしてはこの方法は封印したく」

「…あ!もう一人産むんや!」

「さすがご明察ですわお義姉様。ですが、これですと金位の適性者が二人、同じ世にある事になりましてねぇ」

「あーあーあー、ジャ◯様になるわそれ。ぜっっったいにどちらが金位を継ぐかで揉めるわ」

「金位から生まれた事を隠していても、子が育てば己の資質に気付きますの。しかも、姉様の時は後から産まれたわたくしの方がより金位向きとされて…わたくし共も人の子ですから、やはり人としての恨み妬みは全く皆無ではございませんし」

「まーねー、あの人も不憫言うたら不憫かなー」

「ただ、金位ともなれば人心の闇をも操らねばならぬ立場になりますわ。正直、姉様だと生真面目すぎまして…いずれはお苦しみになられたかと」

「ああ、いつか聞いた一日金位の話ね」

「もうアルトリーネと言わずクライファーネと言わず、騎士達一同から泣いて懇願されまして…クレーゼ様のおかげで気楽というありがたみが骨身に沁みて理解できました。時々にでもクレーゼ様に銀位をして頂けますと、我らの励みになるとまで言われては…」

「あー、それで時々金位させてる訳か」

「武官組も人の子ですわよ。まして日頃から体を鍛えて健康な者がですわ、何の息抜き気晴らしもなければそれはもうそれなりに溜まりましょうに。お義姉様の世界でもですね、船が港に入れば船乗りが酒を飲みーの女を買いーのと致しますでしょ?アレですわよアレ」アレの発音時に力込めてゆーなよ。義妹よ。


「しかしお義姉様。いつ見ても思うのですが、あの手の像などは一体何をどうすればあんな意匠を考えつかれるのでしょうか。あの、以前マイシマとかいうところで見せて頂いたゴミ焼き場といい、こちらの世界の方にはわたくしの理解の外にある考えのお人が幾人もいらっしゃるようで…」

あー、あれは確かに説明に困るっちゃ困るな。多分、ダリとかマグリットの絵を見せても頭抱えられるな。

「うん、アレはああいうもんやから。ちな巨人の姿になって怪しい光を腹から吐くねんで。怪獣…でっかい竜が攻めて来た時の最終兵器やで」

「本当ですの?しかし、あれを人の象徴とか神の使いというにはなにか…違和感というものが」

「嘘や嘘嘘嘘!アレが仮にそんなんで動いてたら大騒ぎしてるて!」


…すんません岡◯太郎先生。いわゆる異世界系の人にはたまらなく不思議に見えるそうです。

先生の名作をアレ呼ばわりして申し訳ないんですが、アレ扱いさせて頂きます。

その昔にどこぞ人民共和国が通天閣もろともですね、市内中心部を核ミサイルできれいさっぱり整地して下さったおかげでですね、今やアレが大阪のシンボルの座についてんですけど、一応アレと呼ばせて頂きますわ、アレ。


そしてですね…アレの周りの土地を使ってニュー新世界とかいう再現型歓楽街を造ること考えた奴ちょっと来いやと。ほんまマジにちょっと来いやと言いたくなるくらいベタな街になってるから恥ずかしいのです。そして、件のニュー新世界とか言う町なのですが…実はクリスが特待研究生で実質助教か教授扱いされてる大学や、親父が入ってる病院の近所でしてね。

んで、大阪の事情や風土を知らんクリスとかクレーゼさんがね、ここの上空を通るたびに色々質問したりアレはおかしいとか言わはるんです。

なお、クリスには英国大使館に行くついでに東京浅草のアレ、ビルの屋上から近場の公園に移されて今なお金色に輝く異様を見せつけてるアレを上空から見せてですね「この国には昔から、時々こういうアホなもんを作るアホがおる。そしてこれを面白がる仕方のない国民性があるので、どうか外国の皆様におかれましては、昔から日本人は未来に生きてきたと生暖かく見守ってほしい」という説明で無理やり納得させまちた。はっはっはっ。


で、なんとか大学病院。


ここは親父の心の臓の病でたびたび世話になっております上に、初来日…というか分取られたサンプル奪還作戦当時に体調崩して倒れたクリスを担ぎ込んだご縁があります。当時の当直医や医局長が漢で「医療費とか保険とか国籍とか戸籍みたいなもんどうでもええ。そこにクランケがおるんやったら治せ」とばかりに診察治療に及んでくれたおかげでワーズワース卿がめちゃくちゃ感激して、惑星改造に関する共同研究を申し出た経緯がありましてな。

更に大学当局は言うに及ばず、話を聞きつけた大阪府知事の猛烈なプッシュとか英国大使館をフル活用したNB側の後押しもありまして、晴れて生物学関係の合同研究施設とか対消滅エネルギー研究とか、NBがらみの技術スピンオフセンターと化しまして。

どのくらいNBが食い込めたかというと、拡充された大学敷地内なら、上空にアークロイヤル浮かしておいても文句言われません。あと、駐車場にバンシー一機降ろして駐機しておけるヘリポート、用意してくれました。排気熱対策のスプリンクラーもばっちり完備してます。

で、そんな場所なんで、関係者も関係者なあたしが行くとVIP待遇でして、クリスの護衛名目で顔を出すことも多いあたしは警備部から学生部から生協から学食から病院事務局医局に至るまで顔が売れてしまってるわけでして。


そんな訳で面会室を用意して頂きまして、父親に状況報告だの今後の対策についての協議や提案をしとる訳です。

「確かに母さん、ちょっと若ボケ入っとったし、元々貴洋には甘いからのう、あれ」

「せやろお父ちゃん。ここは一つ、義妹の提案に甘えて、ちょっと行方のわかっとる行方不明になってもらおや。クレーゼさん云うたらやね、向こうやったらちょっとやそっとの金持ち違うで。総本山だけでバチカンくらいの街やでバチカン」

「ほほ。そんな訳ですので一人や二人の方の面倒を見るくらい、何とでも出来ますわお義父様」

「まぁ、確かにこんな場所のトップやったら、母さんと貴洋を預けてもエエとは思うけどのぅ」どうでもええけど親父。まじめくさって言うとるけどな、義妹のチチをチラチラ見るんはやめい。認識阻害がなかったら絶対ガン見しとるやろ。

「せやからお父ちゃん、一応は義理の妹になんねんから乳を見んと、あたしの出してる向こうの写真みーや。写真やったら無修正でちゃんと写ってんねんし、生の本人見てもピント合わへん魔法使うてはるからなんぼガン見しても無理やで」

「警察はなんも言うてこんのか?」

ええ、誤魔化す我が父ですけど、確かに義妹の乳を見たい吸いたい揉みたい気持ちはわかるのです。

ただ、実行したが最後ですね、たとえ義妹がセクハラを辛抱してくれてもですね、医者の世話になるレベルの火傷を負うから絶対にやめとけ!という話を初対面の際にしております。

そして近寄ると実際にどうなるかを見せつけながら釘刺したからか、必死で我慢してるのが何ともはや。

「そんなもん、出てけえへんねんやったら諦めますわで済むがな。あとは死亡扱いされる年数までに戻すか一生向こうか決めさしたらええねん。ついでに言うとくけど向こう、ご飯美味しいし、エエとこやで。お父ちゃんにわかるように言うたらな、マキ燃やして飯炊いてるバリ島とかモルジブとかパタヤのノリやから」

「まぁ、お前が何遍も行って知っとるんやったら、ワシは別にかめへん。それか逆にワシが行きたいくらいや」

「希望するんやったら前向きに検討したるから、この件片付くまでちょい待ち。それより会社絡みの話しよや」

「よっしゃ。うちの社の資産保全についてはや、アレサンドラから切り離す事にワシかて異議はあらへん。事こないなったら銀行がアレサンドラの代わりの社長を送り込んで来ても不思議はあらへんしのぅ」貴洋のやらかしのショックからは早々に立ち直ったが、今後の混乱を考えると更に老けが早まりそうやと言う父。

「しゃーけどお父ちゃん。それされたらウチらも困んねん。正直、ユニオンキャリーから仕事もらえてる理由てさぁ、あたしの父親と母親の会社やいう信用あってやからね。それを急に社長の顔が変わりました言うたら、何やねんそれ言われて即解約すらあり得るからなぁ」

「つまりアレか、アレサンドラの代わりを出すか、フットワークの方に資産戻すかいう事か」

「そうそう。ただ、土地やら融資やら輸送契約が絡むから、下手に前の体制に戻したら話こじれるやん。出来たらおかん以外の神輿を据えた方がスムーズに行くねんけどさぁ」

「そうは言うてものう…竹崎はほれ、ワシがこないやから副社長としておって貰わな困るし、経理の田中も山内もなぁ」

「誰かアタマ出すだけでええのよ。実務はこっちで何とかするからさぁ」

「むー。お前もよう知っとるやろけど、うちの人間で机仕事が得意な奴がどんだけおるかちう話になるからのう」

「まぁ、貴洋のことは愚痴になるから言わんけど、今後はおかんや貴洋がアレやったらアレで、他所の買収合併とか新規事業展開くらいしときーや。部屋口さんとこ…部屋口運輸みたいにおっきいスーパーの関連事業受託に食い込んで配送だけやなしに弁当作るとかしたらええやん。とにかく会社に潰し利く人材抱えんとあかんて」

「いやもう、ワシとしたらお前に譲る方が話が早いと思うねんけどな、会社」

「アホゆわんときーな。あたし今NBの関係の仕事から一切抜けられへんねんで?連邦の軍人が向こうの軍隊の提督までする訳わからんハメになっとんねんで?」

「あの…お義父様にお義姉様、少しよろしいですか?」

で、日本の企業制度の話なので一歩引いていたクレーゼさんがご質問。

「その、何ですの…お義母様の商会のあるじと言いますのはお飾りでよろしいのでして?それとも何かしらの実務ができないといけませんの?」

「あ、お父ちゃん何か言うのちょっと待ち。義妹が向こうの地球最大の宗教団体のトップで、連邦の事務局長レベルのでかい仕事してて、支部入れたら何万人も使こてる人いうのん頭に入れてから聞きや」

実際は宗教団体ではないのですが、そういう事にしておきます。似たようなものですけど。

そして大阪の社長なおっさんな頭のうちの父親に、地球規模の松◯新地とか飛◯とか信太山な事してる尼寺とか真実を言うたら頭が煮えるか、逆にワシを上がらしてくれとばかりに盛るエロ親父になりかねません。うん、昔のキリスト教とかイスラムみたいな巨大な宗教団体という事にしているのが一番無難や!

「うーん、クレーゼはん。こちらには税理士とか会計士いうのがおりましてな、例えば会社に出資してくれてる人らに金をこない使いました売り上げや利益はナンボでした言う説明をするための書類とか、こんだけしか儲かりまへんでしたから今年はこんだけという感じで国に納める税金の申告をする書類を彼らに作らしますねや。で、それを読めるアタマは最低必要ですねん」

「なるほど。法律の枠組みとか慣わしは違いますけど、だいたいこちらの大商人と似た事なさってますのね」うん、本当は…聖娼神殿ということはお布施の授受とかあるんですよね。つまり、会計システムが存在しますからね。

「お義姉様。いつまでもは無理ですが、わたくしかマリアなら出来ますわよ、商会の会頭。あとはお飾りさえ用意して頂けるなら、最低1年くらいは大丈夫でしてよ?」


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クレーゼ「まさかこの後、本当に義夫さんの会社を任せられる事になりますとは…」

ジーナ「しかもうちの親父は本懐を遂げるのである」

クレーゼ「まぁ、ねたばらしというものを致しますと、お義姉様のお父様との間に子供を授かる事に」

ジーナ「高木スザンヌ、という名前だけは出しておこう」

マリア「あー…かーさんネタバラシしちゃダメだって!クレーゼ母様も止めてよっ」

クレーゼ「これくらいは申しておきます方が親切というものですわよっ」

マリア「ちなみに本編に少し出て来ますが、当時はまだ罪人寮の罪人にさせていた事って、今と比べたら小規模なものだったのよねぇ…」

ジーナ「時は流れるのである(遠い目)」

マリア「あと、この時点の罪環と今の罪環は基本的に同じです。中身、というか制御の根っこは少し変わってるけど…」

クレーゼ「銀衣に罪環を装着するとか前代未聞でしたからねぇ」

アレーゼ「(恨みの目で)今ならともかく、当時の私には苦痛そのものだった…」

ジーナ「アレーゼさん質問。仮に今…そうやね、この話から10年くらい後やったら苦痛やなかった?」

アレーゼ「聞かなくてもわかることを聞かないで欲しいのだが…まぁ、多少はマシにはなった…」

マリア「で、おばさまはこの後恋する乙女モードを習得なさいます。しかしこの当時は…」

アレーゼ「売女。お前とアルトには今度、当時の話をしたいのだが」

ジーナ「あたしは代役を立ててかめへんかな」

アレーゼ「初代様ははおやか…」

ジーナ「いや、エマ子。それか家族会承認を得てからやけど、ベラ子に白金衣を着せて対応させようかと」

アレーゼ「まだ母の方がマシだな…マリアヴェッラはまだしも、エマニエルはな…」

エマ子「かーさま。あたしは手伝いまへんで。公正中立にさせてくださいっ」

アレーゼ「あ、エマニエル。誤解のないようにしたいのだが、私はいわゆる精気授受方面の肉体言語を駆使したくはないのだ。肉体言語では語り合いたいのだが」

ジーナ「うちをころすきか…(非常通報ボタンぽちっとな)」

マイレーネ「アレーゼ様。自粛願います」

アレーゼ「…仕方ない。手と足は使わないから!」

ジーナ「それでも勝てる気がせぇへんねんけど」

マリア「普通に話し合いなさいよ…二人とも」

ジーナ「まぁ、それはともかく、今出たお初な名前は忘れるか覚えておいてください。後々出てくるレギュラーメンバーですから」

マリア「後書きで伏線張らない方がいいわよ…かーさん…」

ジーナ「気を引くというのはこういう風にやるのやっ」

他全員「あまり気を引いていない気がする…」

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