バカヤロウな部下と那覇の踊り子の悩み
さて、みなさま。
デストロイヤーとか破壊王との通り名がつくわ、やたら気が短くて手が早いわ、酒癖女癖が悪いわ、人の言うことをなかなか聞かないわという問題児を部下に抱えたとしましょう。
更にどうしても断れない人事で、そいつの教育を担当するしかない場合、どうやって調教すべきかと。
「かんのくーん。始末書が始末書になってませーん」
「うるせぇバカヤロー。ちょっと機首上げ早まっただけじゃねぇかバカヤロー。ケツ擦ったくらいで壊れるようなヤワな飛行機じゃねぇだろバカヤロー」
「ノズル開いてる状態で引き起こしてなかったらまだマシやねんけどなぁ…」
で、当の本人に機体診断レポートと修理費見積を見せてやります。
次の瞬間、流石のデストロイヤーもちょっと固まってましたが、すぐさま文句を言います。
「何でこんなにすんだよバカヤロー、ありゃ何か、帝国海軍の
「そらあんた、尾部セン…光学監視装置と後部光線砲砲口一式総とっかえに左右の三次元推力偏向噴射口一式交換と装着調整やで?これでも機体骨組みの歪み測定とか滑走路補修費用おまけしてもろてるねんで?そないなったら三桁億円余裕やで余裕」
うん、彼、頭の中に刷り込まれた諸々は基本的に大日本帝国時代の日本人です。
ですので彼に説明する際はなるべく横文字カタカナを避けてくれと本人から言われております。
ちなみに航空機というものを扱うとどうしても避けて通れないのが敵性言語ですが。
「言い換えられんものもあるとか言い訳して使ってた。実質的に俺らにゃ意味なかったよバカヤロー」だそうで。
で、往生際も悪く、本人は申します。
「なあ。この値段が本当なら、紫電改が10機は買えるんだがよ」
「だからあんたの時代の飛行機とバンシー、一緒にすなと前々から何度も言うてるやん。とりあえず、私が軽率でしたゲストモードなのに機首起こしを早くやりすぎましたすみません反省してますという感がもう少しみなぎるようにやね、ああ仕方ない許してやるかとおっさんが思うように書き直してゴルディーニ大佐に提出。それと千葉主任に泡盛の一本も渡しときや?」
…この事故、本当はあたしにも責任がなくはない話なのです…。
そもそも戦闘機やTAPPSに繋がる生体インターフェイスを内蔵してるあたしと、非身体改造者が着るゲストスーツ着用者の直ちゃんとでは、同じ戦闘機を操縦しても、その挙動が全く変わるのです。
機体側で正規のパイロットスーツを着て生体インターフェイスを接続しないと本来の機能が完全に使えないようになっています。戦闘機の機種によっては操縦すらできません。
そして、普通の熱核融合ターボファンジェットエンジンを2基搭載する双発戦闘機のF-300バンシーの場合は補助的なものなのですが、慣性・重力制御駆動装置ICD/Gも搭載しています。
で、ICD/Gの機能をフルに使えるあたしの引き起こしタイミングまんまで操作したら事故を起こし兼ねませんし、実際にやらかしてくれちゃったのですが…それを教えると絶対にオメーが悪いとか言い出すに決まっているので、本件の事故分析結果出るまで黙っとくつもりなのです。
ごめん直ちゃん、今度松○新地でも那覇の波の上でもおごったるから今は悪者になって。
で、デストロイヤーナオシちゃんの悪名は早くも那覇と嘉手納の両基地にも知れ渡っているようです。
今は那覇で
いや本当、訓練委託先を自衛空軍やなしに宙兵隊にしといてマジ正解。
とりあえず日本に戻ってきたアークロイヤルに飛び乗り嘉手納上空にとって返してもらう事僅か10分。
ゴルディーニ大佐あてに航空診断医の定期健診報告が来てるか確認して、予備機のババヤガーを借りようとしたら待ったがかかりまして。わざわざ嘉手納に呼びつけたのは一体何やねんと暴れかけるあたしに、とりあえず菅野君を説き伏せてくれと言われて10分。
技能維持飛行についてはどうすんねんと言うと、こないだとは打って変わって少佐はえらく丸くなっていてですね「クリスマスまでには何とかしてやる、アルザスの男を信じろ」と自信満々に言う訳ですよ。
まぁ、フランスにいる大佐の奥さんにちょいと連絡して「うちの娘を学校に行かせる話で揉めてるのに、旦那さんがこんな話を…」とか裏で手を回したわけですが!
そうそう、大佐の奥さんですが何と姉さん女房で、しかもついこないだまで嘉手納基地の主計局衛生課勤務のナイチンゲールな方でらしてですね、定期健診他であたしも毎度毎度お世話になっていた方でしてね。
加えてあたしの左遷騒ぎがあった際に、何かの力になればと相談に乗ってもらいーの連絡取り合いーので、退官後もこちらの状況を差し障りのない範囲で伝えていた仲でしてね。
んでアークロイヤルどないすん嘉手納の上に浮かしとくんかいという話になりまして、とりあえず嘉手納の沖に着水させておいて臨時上陸半舷ずつ明日夜出港なと、乗組員の英気を養う指示を艦長から出して頂きまして。
ちな地球航路任務者は全員、英国籍の身分証を発行してもらっている上に、密かに構築している本国ポンドとNBポンドとの両替システムを使って日本国通貨が入ったおさいふID証兼軍用時計を持っているので、ハメさえ外さないなら支払いトラブルはない筈です。多分きっとMaybe。
で、オバノン艦長には事情を話してクリス・あたし・少佐・なおしちゃんの4人で馴染みの店に行って相談会をしようと決めて、官舎区画から大佐の車を出してもらって那覇市内に来たわけです。
でぇ。
開店ちょい前の「馴染みの店」に顔を出したらですね。
ドア開けて顔を出すなりママ曰く「ジーナちゃああああん、いいとこ来てくれたね!今日は早番2人も休まれて困ってたんね!お給料出すからヘルプ入ってくれんね!」
「ままま待ってぇなママ、今日、大佐と直はまだしも旦那おんねんで!それにあたし衣装持ってきてへんて!」ここに慣れてる大佐やクリスはまだしも、菅野くん固まってるし。
「大丈夫ね!サンダルもパンツも新品あるから出てくれんね!」と袋押し付けんのやめてくれませんかマジに。
「くりすぅ…」助けを求めるわたくしを向いて、天使が悪魔の判決を言い渡しましたよ、ええ。
「事情は理解しました。ママ、妻の賃金は僕たちの席料で相殺してもらえれば。それと妻を2時間程度で開放して頂きますと助かります」
「いや1時間でいいね!7時んなったら5人来るね!ほらジーナちゃん、クリスちゃんOKしてくれたから化粧するね!なんなら旦那と二人で踊るね!」待て待て待て。
いや、数日前にアレーゼさんが連行されるサマを爆笑してざまぁのポーズ取ってた祟りですか、これ。
「なあ高木少佐どの。俺の常識が古いのかどうかわからんがなぁ、軍人たる者だなぁ、副業に従事したり私腹を肥やす事まかりならずが軍紀以前に常識だったと思うんだけどよ」
「やかまし。ここで踊ってる経緯は前にこんこんと説明したでしょうが。それにめっちゃ恥ずかしかってんからな。時間が惜しいのと身バレ嫌やからコレのままなだけで、あたしは今すぐ着替えたいんや」うん。今、チチ丸見えです、あたくし。
更に先ほど、ママはサラッとパンツと片付けましたがですね、今着用しているのは、いわゆるスリングショットという水着というか下着というかな放課後に赤と青の電磁波を放ちそうな代物なのです。
更に魔改造されておりましてね、極限までに面積を縮小した三角形の上から、あたしの場合は黄金色の茂みがこんにちわする前提で履く「ヘアパン」という恐るべき代物ですねん。
とどめにこれ、リストバンドやカウンターからの遠隔操作で水着の紐や、果ては「そもそもアワビ隠すだけの三角形」を発光させるとか色を目まぐるしく変化させる派手派手な機能だけでなくですね、リストバンドからの微弱給電をOFFにしたり、ヒモ内蔵のチューブ電池が切れたり故障しますとですね。
透 明 に な り ま す 。
で、こんな物騒なエロ衣装に着替えたら着替えたで、開店の景気付けにいきなりステージ上げられて、よりによってクリスはまだしも直と、更に駆けつけてくれたドメちゃんが悪ノリリクエストしたせいで、みんなの前できっちり五分間×二回、大開脚でポールダンスとかね、もうね。ええ。ちょこちょこ透明にされました。泣きそうです。
ママこれ絶対飲んでなかったら足元狂うからあたし泣いて座り込むから飲んでから上がらしてと、泣きながら強奪した泡波の瓶があたしを助けてくれました。ついでに、化粧や下の毛の処理の間にマリアの学校行きで悩んでる件を手早く説明しといたのはよかったのか悪かったのか。
更に調子こいてついつい昔のノリで営業入れてしまいましてね。マイク強奪して、さあさあ今ならカーテンルーム全室空いてるから待ったなしですよ女の子3人だけだけど選び放題だよ、普段はご禁制の連荘指名もOKかも知れないよとか煽ってみたら、リクエストしてきた客…あの、クリスちゃん。何で君は真っ先にわたしを呼ぶのかねという事で仕方なくカーテンルームに旦那を引っ張って行ったのを皮切りに、物好きな客を何人かカーテンの向こうに連行いたしましてですね、指だけで八重山海底火山大噴火させてプロの技の成果をミリドルに聞かせて呆れられたりしましてね。
なお、さすがに今の立場でカーテンの向こうにしけ込むためのチップ代わりのチケットはあたしが貰うわけにもいかず、あたくし達の飲み代や、もうどうせならという事で衣装を買い取る費用に充てる事にしたので、他の女の子の客を食い過ぎない範囲で営業しましたよ。酔った勢いで。
そして酔いが覚めてるのに真っ赤な顔してボックス席の隅っこで反省体育座り寸前な女、一名。
ちなみにクリスのクリス君をどうしたか…内緒にさせてください。
語ると検閲食らう以前にですね、ものごっつい恥ずかしいのです。
酔っ払って暴れて素面になった瞬間より恥ずかしい話なのです。
「乗せた俺も悪いとは思うんだがよ、仮にあんたの今の姿を辻のおっさんが見たらだな、あのおっさん、その場で軍刀抜くと思うぞ。あいつが並外れた芸者嫌いでビルマと言わず南方と言わず、着任した場所全てで悪名轟かせてたの知ってるだろ。俺らもあれでどれだけ被害を蒙ったか」いや、あたしこそ辻ーんに言いたいんだが。あんたが赴任地の置屋を軒並み取り潰して回った恨みを400年経っても引きずってる奴がおるぞと。
「まぁまぁカンノ君。昔、彼女は実家への仕送りを強要されて困っていた話は聞いただろ?」
「大佐どの、それが信じられんのですよ。そんな般若のような女が何故、それなりの会社の経営者の妻に収まるなどと。まージーナよ、俺がおめーの立場なら怒って家を出るよな。うちの母親知ってるだろ?あの人は死ぬほど厳しかったけど、そこまで鬼畜じゃなかったし、むしろ人格者だぞ人格者」
「そーですよージーナさーん、そんな士官学生俸給まで巻き上げようとする超絶ドクズなクソ親なんかですね、殴って縁切ってブッチしちゃえばいいんですよー。世帯分離っすよ世帯分離ー」
で、言ってる内容の正当性はともかく。ものすげぇ酔っ払いの姿でドメちゃんが喚いています。ですので、あたしより自衛軍の軍人にこそ軍人精神の何たるやをいうべきじゃないかな、酒好きのなおしちゃん。
「まぁ、今は復讐の真っ最中や
「うわージーナさん悪い顔ですーふふふー」
「しかし、ナオシ君。君の時代の日本人の女性というのはどうだったんだね。こんなのばかりだったのかね」
「えーっとですね大佐殿。東京市と他では異なる傾向はありますが、
「だそうだぞ、君達」
「ええええええええええ」
「待てや、かほるさん引き合いに出すん反則やろがこのシスコンがぁああああ」ええ、こいつのお姉さん知ってますけどね。
「え、菅野さんってお姉さんいたんですか」
「おったぞ!美人やったぞ!そらなぁひとみちゃん、この野郎がな、かなりええ年になるまで寝床に潜り込んで一緒に寝てただけのことはあったでぇ」
「えー信じられなーい!あの菅野直がお姉さんと添い寝…」
「ちょ、ちょっと待てお前ら!」
「うっふふー、あんたが日記燃やしとかんのが悪いんやー」
「ジーナさん、菅野大尉のそういう個人的な話というのは、何故後世に伝わっているのですか?」ちょっと洒落ならん恥ずかしい過去のあるクリスが真剣に聞いてきたので、会心の笑顔で答えて差し上げます。
「うん。なんせ大日本帝国海軍の誇る撃墜王でしょー?彼の死を惜しむ人がようけいたみたいでねー。故郷のお父さんお母さんとことか、結婚して名古屋に住んでたかほるさんのトコまで聞き込み取材して本にした人がいてねぇ。いやー伝説の男はつらいねぇ、ひーっひっひっひっ。いやもう、このエピソードが本になって出版されているのを知った時のなおしちゃんったらもう大変が変態で、今すぐ俺をその本の著者のところに飛ばせ、ぶん殴ってでも阻止するとか言ってたもんねー」
「えええええ本になってるんですか!それちょっと今度探してみます!」
「ま、待ってくれ百目鬼少尉…だっけ?」
「三尉でっすぅ。うっふふーもう遅いですよ〜ほらー」
で、ドメちゃんが時計を操作して検索した書籍の表紙画像を見せてきました。
そしてあたくし、「おーそれそれ」と当たりを引いた事を教えて差し上げます。
で、天の声いわく、興味がある人は菅野直+最後の撃墜王で検索すると良い事があるそうなのですよバカヤロー。
さらに、第502戦闘航空団の管野直枝の画像を表示して差し上げました。はっはっはっ。
モデルの本人が「おおおおお俺を女にするんじゃねぇ、しかも何だこの破廉恥な姿は!描いた奴の所に連れて行け!話があるぞバカヤロウ!」と悶絶死するのはもはやお約束ですね。誰が紫電改のタカなんか見せてやるかい。
「ところでジーナさん。マリアちゃんの件なんですが、ちょっとルテナン・カンノにお聞きしたい事が」
「ほえ」
「何だいクリスくん、言ってみたまへ」
「今思いついた話なのですが、日本は昔、南洋諸島や東南アジアで日本語を普及させようとしましたよね。では彼らの中で若く優秀な人材を日本に招いて教育した事例はないのでしょうか?」
「うーむ、そりゃあ俺には答えるのが難しいな。当時の南洋庁の担当大臣って誰だったかなぁ…」
「この思いつきには根拠があるのです。かつて本国はアジア戦線にネパール兵士を投入して戦果を挙げましたが、彼らの中で優秀な者には、本国の市民権を与えて教育を施したのです」
「あー、グルカ兵ってやつか」
「つまり、大日本帝国が同じような事をしていたのであれば、生活文化様式の異なる民族を受け入れる教育施設があったのではと推測しました」
「え、何、つまりクリスの言うには、マリアを大日本帝国に送れと」
「これはマリアに意思確認をしなければならないと思うのですが、マリアは教育内容よりも人の成長する経験を積みたいのではないでしょうか。それならば文化ギャップを乗り越える政治的主張が支持されている環境の方が希望に沿うのではと考えます」
「なるほど。確かに当時の帝国は五族共和を掲げていたからなぁ。加えて、辻のおっさんとか石原参謀はマリアちゃんを知ってる訳だし…待て。あいつらなら政治に利用する危険があるぞ!」
「なによ菅野ちゃん。陛下に止めてもうたらええやん」
「それが出来りゃ米帝に戦争ふっかけてねぇよ。おめーも知ってるだろ。当時の帝国なんかそりゃもう伏魔殿も伏魔殿よ。賭けてもいいが、あんな力のある子を利用しようとする奴が、そりゃもうシラミのように湧いて出るぜ」
「あー、確かにグッダグダやったからなー。でもアレや、ほら、皇族とか貴族の子供しか行かさん学校あったやん。あそこやったら石原さんはまだしも、辻のおっさんが簡単に手ぇ出されへんちゃうん?」
「おめーは甘い。海軍の偉いさんは異口同音に言うと思うぞ。辻の人脈は侮れんと。石原さんだけならともかく、満州の甘粕理事とかいるだろ。あの辺の怪しい伝手を使えばよ、帝都に色々工作を仕掛けるくらいは普通にやるだろうなぁ」実はこの席の全員が、当時の日本のめんどくさい現地実態をナマで経験していたりするのです…諸事情で撃墜された菅野くんを救い出した後で大日本帝国に戻った事があるのですよ。
その作戦時に航空自衛軍から助っ人を出してもらったメンツにドメちゃんも入っていたんですが、いやもう当時の日本人のめんどくささには同じ民族のはずの彼女もアタマ抱えてたよなぁ。
「ふむふむ。では帝国に送るのは反対と」
「ああ。それならまだ、ニューブリテンってのかね。クリスくんの家のある土地の学校に入れる方が無難じゃねぇか?」
「いや、そちらはちょっと良くない気がするぞ」異論を唱えたのはゴルディーニ大佐。
「クリス君。そもそもNBはなぜ、連邦から独立したのか説明出来るかな?」
「はい大佐。端的に言うと、連邦の入植政策に反発したからです」
「それだよそれ。俺の認識だが、NBは難民を主体とした他人種の流入で混乱を極めた英国を離れたアングロサクソンが主体で開発した国だ。だろ?」
「はい、概ねその認識でよろしいかと」
「ところが我が連邦は、加盟国総出で惑星開発をしようとした。もっとはっきり言うと、各国のあぶれた人口を無理やりに押し付けようとした訳だな」
「ええ。それに反発して連邦脱退と独立を主導したのが、僕の父を中心とした現在のNB首脳です。政治経済体制が整ってないのに変なのを押し付けたら某流刑地のようになり治安他で悪影響しかないではないかと」
「クリス君、それだ。そして…気を悪くしないで聞いてくれよ。つまり、俺としちゃあ、マリアちゃんがそちらの学校の制服規定を守れないという事で迫害する奴が出てくるんじゃないかと思ったんだ。せっかく価値観や倫理観を同じにする人々で建国しようとしたのに、なんでまたそんな子を受け入れるのかとかな」
「はーい先生先生」
「何よドメちゃん、誰が先生よ」
「まあまあ。あたし思うんですけどー、マリアちゃんってそもそも頭は大人じゃないですかー。どれだけ本人が子供っぽくしてもですね、ぜーったいに同い年の子供たちの輪に入っていけないんじゃないかなって。だったら最低でもですねー、小学校の上のほーか中学あたりから始めたほーが回りに溶け込めるんじゃないかってー」
「…やっぱそっちに思考が行くかー。くりすー。マリアを大学の地衣研に連れてった時あるやん。あん時に先生とかと普通に話せてたっけ?」
「ええ。プロフェッサー・ニシウラでないと答えられないくらいの専門的な話を」うわちゃー。教授クラスでないと話が噛み合わない可能性高いって事やないか。
「マリアに保母さん属性があればいーんだけどねー。周りがマジもんのお子ちゃまでも生暖かく見守れるからなー」
「とりあえずどこかの学校に体験入学させてもらってですねー、生徒さんたちと仲良くやれるか見てから考えてもいいんじゃないですかー?何だったらあたしの上官に事情話すかー、いっそゴルディーニ大佐から連邦の日本地区駐留司令部の人に頼んでですねー、日本に来てる外国の人が行く学校とか東京にあるじゃないですかー。あんなトコ紹介してもらってそっちに行くほーがマリアちゃん楽じゃないかなーって」
「あ、それならクリス、大使に頼めばインターナショナルスクールに話入れてくれるかも知れんね」
「そーですよー、当たって砕けるにしても砕けそーな場所狙うのが普通ですよー」
「しっかし、五族共和とか言ってたけど、実際にこうして問題が出てくると帝国の石頭で対応出来たかどうかわかんねぇよな」
「そらしゃーないて、男女平等とか自由の価値観が広まるのは第二次世界大戦が終わった後やし」
「あ、大佐とジーナさん。いまフタマルマルマルですけどお時間大丈夫ですかー?わたしは外泊許可もらってますけどー」
「えードメちゃん明日も訓練あるんちゃうん?大丈夫なん?いけんの?」
「えっとねー、上官に外出届け出しましたらですねー、外泊にしといてやるから何かお土産貰ってこいって言われたんですよー。だからお土産くださいー」
「今の話でええやん。上手いこと言うたらウチらに恩売れる話やで。ひっひっひっ」
「もうちょっと何かくださいよー。菅野さんに聞いてもオラ知らねばっかりなんですもーん」
「おい何だよそれ、俺なんも知らないぞバカヤロウ」
「あー…。菅野ちゃん、ドメちゃんが何もなしに友達付き合いだけでココ来てる
「ってえと何か、密偵か。これがスパイの目かっ」
「えー違いますよージーナさんじゃあるまいし、そんな事あたし出来ませんよー。だってNBの首相の息子さんと奥さんですよー。普通にこうしてお話してる内容を上に報告するだけでもすっごく貴重らしいんですよー」
「ちょい待てドメちゃん。あたしはここで踊るハメになったのはこのおっさんがやな」うん、だいたい想像つくと思うけど、お金に困ったあたくしの話を聞いたゴルディーニ少佐(当時)が基地内の知り合いに相談したところ、物品調達汚職関係での人間関係を調べたかった警務が内偵の人脈を欲しがっておりまして。
で、基地内でも常連多数なママの店で擬装労働できる対象をという事で、時間外学習の代わりにフタイチマルマルまで踊り子やってこい。稼ぎもまるまるお前に渡るようにしてやると段取りをつけて頂き、昼は士官学生夜は那覇の踊り子爆誕というわけで。
お仕事内容も「リストの中の顔がいたら気付かれないように客として来た日と時間を覚えて報告。他に軍関係者がいたら金遣いをチェックして報告」だけだったので楽なもんでした。
なんせこの店、ミラーボールが輝き始終何かのダンス系音楽が流れている上に、一部のボックス席に遮音防音設備が装備されております。で、今のあたしらみたいにあまり第三者に聞かせたくない話も割と普通に話せるかわりに、盗聴がかなり難しいわけで。
後で聞いたら、単に対象の足取りや接触者をつかむ以外にも普段から遊んでて不自然に金を使う奴がいないかとか、傷害や性犯罪などで隊外風紀を乱す奴のアタリをつけておこうとしていたらしいのです。
で、ママも「軍協力業者とすることで那覇警察署の取り締まり対象になるのを回避したい」と、利害が見事に一致した模様。
ついでに言っておくと、うちらの時間軸では第三次大戦後の都道府県整理で九州各県は統合されて九州道になっていまして、沖縄以外の旧各県は支庁扱いへ。で、種子島アンド屋久島から南は新設の奄美支庁・沖縄支庁・八重山支庁に分かれています。
警察組織もそれに合わせて九州道警になり、那覇は道警那覇広域警察署の管轄下となったと言えと。
ほいでもって貴様は自衛軍のスパイだなこの目が自衛軍の目だ疑惑のドメちゃんですが。
自衛軍側との繋がりも持ちたいわたしら宙兵隊やNBと、せっかくNBの拠点が国内にあるのだから、今後の国際情勢を鑑みて密かにNBと仲良くする方向もやぶさかではない日本政府の思惑が一致しまして、ドメちゃん他数名と「連邦宙兵隊アンド日本国自衛軍黙認・あたしらはおともだち」の交流を黙認されている訳でございます。
「ふむ。じゃあマドモアゼル・ドメキはクリス君やジーナとこの後外泊で、として…カンノ君は悪いが俺と帰営してもらうぞ。君は明日、確か後席装備運用実習だったはずだが」
「はい大佐殿、その教程であります」
「よろしい。君の事故の件で後日、タカギ少佐から別途特別慰労を頂けるらしいからそれで我慢してくれ」
「はっ大佐殿。この女に慰労される以外ならば大歓迎であります!」
「菅野さんひっどーい、見てくださいよジーナさん体だけはぴっちぴちの十代ですよー。おっぱいぱんぱんですよー」言いながらあたしの乳を揉むな、チチを。
「ドメちゃん、それ援射してるようで完璧後ろダマや」
「あー、
「そーですよー。バンシーだったら後ろ取りに行かないだけですよー」話からすると自衛軍と宙兵隊合同でやってる
「では一旦解散とするか。俺はカンノ君に飯をおごってから帰るが、クリス君はどうするんだ?」要はお前ら夫婦水入らずしたいだろうから、邪魔者は消えるぞということです。まぁ、何だかんだ言って口は悪いのですが面倒見は良い。このハゲへの評価が高いのはこの辺りの人柄ですね。
「そうですね…ジーナさん、どうしましょう?」
「とりあえずあたしらはあたしらで飯食いにいこーよ。ドメちゃん外泊やからホテル探したらんとあかんし」
「よし、ではここで解散としよう。クリス君、ジーナにタクシーを呼ばせるといい。俺とカンノ君は先に出るからな」
「はい、大佐もお気をつけて。おやすみなさい」何か言いたそうな菅野ちゃんを引きずるようにして出て行くゴルディーニ大佐を見送った後、あたしらも店を出ようとして…。
「ジーナさんー。いくら沖縄でも12月にその姿は」
「そうですよー、それ以前に明日の琉球モーニングニュースのトップコンテンツになっちゃいますよー」
…ええ、完璧に今の姿がどんなんか忘れてました。はい。
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なおし「で、俺はこの話の数年後に築城基地に配転される事になる」
ひとみ「そしてあたしは飛行隊はすぐ隣…というか、同じ基地内の別部隊にされましゅ」
ジーナ「そしてこの時の飛行訓練の実績はのちのインドや中東や、そして数年後の北欧他で生きるのである」
クリス「つまり頑張って操縦や未来生活に関わる諸々を覚えて欲しい、ジーナさんはそう菅野さんに言いたい訳ですね」
ジーナ「付け加えておくと菅野君は死亡時の二階級特進は無効、大尉待遇となるのである」
なおし「おれにあそぶかねをくれ」
ジーナ「そして、なおしちゃんのおこづかい管理役も就任する模様」
クリス「どうしてもという場合は言ってください…」
ひとみ「あたしもクリス君に言っていいっすかー」
ジーナ「おまえらしばくぞ。…えーとね、クリス、一言で言うとかなり洒落にならないお金持ちです」
クリス「英国本国を経由しないと現金化できないんですけどね。ですから僕の全資産、全額を連邦側ではまるっと使えませんよ」
ジーナ「その制限された資産というか流動資産だけでもかなり贅沢できるのである。我々夫婦が浪費しとらんだけなのであるっ」
ひとみ「だからほんのいちおくえん」
ジーナ「あんたは変な趣味に使うからあかんっ」
なおし「なお、助平方向ではないんだよ…瞳ちゃんの趣味って…」
ジーナ「ヒントを出そう。この子が航空自衛軍にいる事自体がそもそも、一般的な新卒日本人女子が選択する進路ではないのである、この時代でもな!」
ひとみ「他にも歴女とか刀剣女子とか、おいおい出てきますけどね」
ジーナ「どんな趣味かはお楽しみに(ニヤリ)」
なおし「その趣味の腕前で俺をいじめるというか、尻に敷くんだよ…(泣)」
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