【序章】
おれはかつて龍を見た。
正確には、龍の鱗を。
虹色に光るそれは、まるで貴石のように陽を反射した。きらきらと。白く、黒く、赤く、青く、碧、紫、橙、群青、もっと……無数の色のプリズム。
子供の手のひらいっぱいに載った鱗を胸に抱いた時、おれは確かに見たんだ。
透き通った青空を横切る、奇跡の姿を――。
地響きのような鳴き声が山の間に木霊していた。
巨大な体が山と山を繋ぐかのように泳いでいる。虹のように長細い体。光り輝く鱗。
……なぜか、涙が止まらなかったのを覚えている。
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