愛のリング(前半)
カチカチとタイピング音が耳をくすぐった。
ここにきて何日目だったろうか…。時間はおろか、あの日から何月何日なのかも教えてもらえない生活が続いていた。
「ん、起きたのか。おはよう、ゆっくり眠れたみたいで良かった」
目覚めたことがばれてしまったみたいだ。瞼にキスが降ってくる。いつもの足枷が今日はやけに俺をいじめてくるので返事はしなかった。
それでもまた熱心にパソコンに向き直り仕事をしている。いつもは自分が抱きつぶされ、半分気絶している状態でこの人は外へ出かける。
その隙を突けば何とか…と、いったところだろうか。何が目的かは体を毎日のように求められれば嫌でも答え合わせしているようなもんだ。この人は自分の部屋で仕事をせず、一緒にいられるときは一緒にいようとする。この人が異常なのは明らかだ。何より監禁されている自分が一番よく分かっている。壁一面貼り巡らされた自身の写真や、落としてなくしてしまったとばかり思っていた恐竜のキーホルダーだったりが飾られていたりする。
「ふう、そろそろ時間だな…悪い燈真(とうま)。行ってくるな」
頭をポン、とされ食事やらなんやらの話をされる。まあ、いつもと変わらない話だろう。
「あ、あと今日は遅くなるから早めに寝るんだぞ??」
遅くなる…これはいい情報だ。そこだけ覚えておこうかな?早めに寝かせないのはどこのどいつだ。と異議を申し立てたいが、言わない方がいいのは明白だ。
「…燈真、あの、なっ、名前読んでほしい、あと、キス」
「……、行ってらっしゃい。百目鬼(どうめき)さん」
軽く触れるだけのキスをする。
そのあとは満足したのか、顔を赤くして足早に部屋を出て行った。
「意味わかんね …」
寝返りを打ち、天井を見つめる。
……俺はあの人、百目鬼が言うことを拒みはしない。それこそはじめは拒んでいた。だが、違う。そうではないことに気付いた。たかがキスだけ拒んでみろ、その日は向こうが帰ってくるなり朝までコースだ。しかも中出し。信じられない。女の子誘拐とかじゃなくて男にこんなことしちゃってんだから、ほんっと異常。
「……、よっし」
玄関の扉を開ける音が聞こえたし、 早速逃げられそうだな。今日は起きていられそうだ。さんざん昨日は可愛がってもらったから体が鉛のように重たいけど。
「まずは力行使だな…いや、でも流石のぴちぴちDKでも窓の鉄格子はちょっとこわせないかなぁ…ははは」
ここで暮らし始めてから気が付いたが危険物は一切ない。まあコード類とかはあるけど。
というか……あの人俺がいないとさ、掃除もなんもしないから参る。初めて連れてこられた時は、目の前が真っ暗になるほど絶望した。よくここまで綺麗にしたなあの人。
「そういえば、リビングにカーテンがあるって事は…」
鎖の長さがギリギリだったが、何とかカーテンを開ける。
「あった!!これじゃん。ラッキー!!」
これに気付けないほど抱かれていたなんて認めたくないけど…。恐らく鎖が届かないと想定してここまで考えていなかったのだろう。
そこには一般家庭にある出窓があった。奥にはベランダも見える。開けて助けでも呼べばきっと誰かが気付いてくれる。今は絶好のチャンスだ。出窓の鍵に手をかけようとした、その瞬間だった。
________小さなレンズと目があった……。
後ろにあとず去ろうとした、その瞬間だった…
「悪い子、見ーつけた」
後ろから優しく振れるように抱きつかれる。殺気のようなものを感じる。心臓が痛い、冷たい汗が背中に滲むのを感じる、何か良い言い訳を考えているが、全くでてこない。
終わった______。
「………あっ、お、おれ、っっ!」
そこからは相手の表情の分からないまま、腕を痛いぐらいに引っ張られ、ベッドに投げ捨てられた。その上から逃げられないようにスーツ姿の百目鬼が馬乗りになる。
「ぐっ、ぁ…………」
「はは、は、は。…………ああああああああああ…………!!そうだよな、やっぱり、やっぱり、俺はこんなやつだから………どうしていつもこうなんだ、俺の想いは伝わってなかったのか、いつもいつもそうやって俺から逃げようとする」
手で顔を隠しているからどんな感情から分からないけど、きっと怒って、るよな。大きな声に自然と肩が震える。
「.....ど、百目鬼さ、グッ、ごっ、ごめんなさぃっ」
「……黙れビッチ。俺の気持ちもしらないでっ……どうせ、どうせ……」
骨ばった手で首を絞められる。
息ができるか出来ないかで
「がっ、…ぁっ、…!!」
「もう、いっその事。一緒に……」
虚ろだ、ただただ虚ろ。紅い瞳が俺を捉えては、捕まえようとする。こんな所で死ぬなんて、嫌だ、イヤだ、イヤダ、いや、だ。
力はどんどん強くなり、意識が飛びそうになる。直前だった………
「ぁっ、…どぅ、め…、さ」
「ふっ、なんだ。最後の言葉くらい聞いてやるよ………」
「ぐっ、ぁっ、カヒュっ…、」
首を絞められながらも、俺は抵抗するのを諦め、腕を広げた。
「…何してる……」
「おか、ぇりの、っ…かはっ、ぁ、チュ、してな…ぃ、すっ、る…」
「…………//////?!?!」
一瞬で顔を赤面させる百目鬼。
「さっ、寂しくて……窓、覗こうとした、だけ。しんじて??はっ、はあっ、はっ、はぁ………っ」
勿論嘘だがここで殺されるよりはマシだ。
相手が慌てて目を見開き、直ぐに首から手を退けた。おそらく跡がついているだろう。息がまだ苦しい。生理的な涙が出てくる。百目鬼は頭を抱えて、俺に謝り続けている。怯えているようにも見える百目鬼の肩に手を置く。そして優しくキスをした。今日で二回目の触れるだけのキス。
「………ごめ、なさ」
「わ、悪かった。燈真、俺、正気じゃなかった。お、俺はっ…お前をっ………、悪かった、本っ当に………!」
またボロボロと涙を零していた。
本当に情緒不安定だなコイツ………。危なかった、本当に殺されるところだった。
安心しきっていたところもう一度向こうを見やればそいつはさっきとは打って変わってニヤニヤとした形相で馬乗りから自分の顔の前でボトムを下ろす準備をしていた。
「燈真の気持ちに気づいてやれなくて悪かった。…続き、しよう。寂しかったんだよな?♡ずっとシたかったんだよな??俺と……」
「………っ」
「……ほら、手は使わないで。俺に御奉仕してくれ……ふふっ、」
興奮した面持ちで百目鬼はカチャカチャとベルトとボトムのボタン外した。頭を優しく持ち上げ目の前にはボトムのチャック。従うしかないのだろう、自身の口でチャックをジー…と下ろしていく。唇で啄むようにしてボクサーパンツを挟み、おろすとペニスがぺち、と顔面に当たった。ムワッとした嫌な感じや特有の青臭さ。自分の物と大違いな赤黒いペニスに思わず顔を背けたくなる。
「よく出来たな、偉いぞ燈真」
あとはしゃぶる、だけ。あとは、我慢するだけ、死ぬよりマシ死ぬよりマシ死ぬよりマシ。
「ちゅ、っ…んぅ、ぅっ…ジュ」
ズロロ、と一気に咥えて行く。唾液を絡めて、だらしのない顔でグロテスクなペニスを奉仕するのだ。付き合ってくれている女の子にフェラをしてもらっていたがこんなに不味くて苦しいことをさせていたなんて、頭が上がらない。何か違うことを考えよう、そうすれば終わる。
「はぁぁっ……////」
舐めれば舐めるほど、張りのあるペニスがズレ、髪の毛や顔に先走りがベタベタとつく、それを楽しんでいるのか相手は恍惚とした声を上げる。
「っ、チュッ……んぶっ?!?!」
「上の空だな、燈真。本当に俺に会いたかったのか?まさか嘘じゃないだろうな…、やっぱり…」
「チュブッ……ンブッ、がはっ、ぉっ、ジュプ、んっんっんっ!!!」
ごちゅ、と頭を押さえつけられグポグポと喉を犯される。ブツブツとまた1人で会話を続けてはいるが頭に添えられた両手が避けられることはなく無遠慮に奥を犯される。
『_____そういえば、今日ニュースでお前のことを見た』
百目鬼さんが何を言っているのか、全く分からない。なんのはなしをしているんだろうか。
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