Dia.13-1「(un)lucky encounter」

「はい、はい。

 すいませんでした、先方には此方から謝罪させていただきます。本当に申し訳ありませんでした。すいません、失礼します」


……。


「……というわけでございます。本当に申し訳ございません。

 今回の補填は弊社の方にて行わせていただきます。

 重ねてお詫び申し上げます。……はい、はい。本当に申し訳ございません。

 失礼致します。」


……。


「……今からですか!?

 ……いえ。はい、今から向かいます。すいません、ではまた」


「……はあ……なんで俺がこんなことしなくちゃなんですかね……。

 つかれたなぁ……とりあえず……座りたい……。」


──────


『なーんかさ、つまらないのよね、貴方。』

《はい?》

『いや、だから。つまらないのよ。何もかも』

《は? 急になんだ? そもそもッ》

『だからさ、そういうトコ。女の子に一番嫌われるタイプよ、貴方。自己中心的で、溢れんばかりの自信を香水と一緒に振り撒いて? ……その実、有り金以外は大したことのないオトコ。それで引っ掛けられるのは学生ぐらいのものよ?』

《……ッ》


───────


〈一名様ですか?〉

「あー、はい。一人です」

〈かしこまりました。カウンターの方、ご案内いたしますね。〉


───────

『もういいかしら? お会計はしてくれるのよね?』

《え、帰るのか……? さっき予定はもう無いって》

『今の流れで帰らないと思ったの? というか口実要る?

 ……はーあ、ほんと妙なところで硬い坊ちゃんだわ〜。

 そうね、じゃあ……、』


───────


〈お決まりになられましたらベルにてお知らせください。〉

「あー、はい、ありがとうございます」


───────


『……決めた。あの子とデートするから、帰るわ♡』

《はァ!? 何言ってんだ、アンタ!?》

「……?

(なんかモメてるな。あんま見んとこ)」

 ……。

『ハァイ?』

「……」

『無視しないでよ〜』

「……? 、?! いや俺?!」

『貴方以外に誰が居るわけ?』

「いや、そうじゃなくて、いやそうですけど、なんですか?!」

『そうね〜、この後時間あるかしら?』

「えっ、いや、ありますけど、あ、じゃなくて、無」

『じゃあ決まりね!』

「え」

『じゃ、行きましょ♡』

「え? どこへ?」

『もー、無粋ねぇ。女の子の誘いには乗るものよ』

「いや、そんなつもりは、じゃなくて、あの」

『? もしかしてこの店の名物パンケーキを食べ損ねたり?』

「いや、珈琲を飲みに来ただけですけど、だから違」

『じゃー気兼ねはなし! 行くわよ〜〜!』



 疲労感と破天荒の合わせ技というのは、どうやら想像以上に凶悪らしい。

 断りきれなかった私は何故か見知らぬ不審な女とタクシーに乗っている。

 果たして私は生きて帰れるのだろうか。

 ……まあ既に、もう生きている心地はしないが。

 東京湾の底にコンクリートを抱いて沈まなければ御の字、である。

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ナイチンゲールは夜に啼く Garm @Garm

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