Mon.2「私刑」

 ええ、酷い有様です。

 神代よりこの世を見て回りましたが、これほどまでに荒れ果てた文明は初めてだ。いえ、笑ってなどいませんよ。

 天命による思し召しは既に凶星にて報せが届いております。幾千の時を過ごしましたが、左様な物は初めてでした。緊急の信号ですゆえ、頭の片隅には常に残っておりましたが。いえ、常に願っていたとかそういう訳ではありません。エマージェンシーには常に対応出来なければ、私共の仕事に支障が出ますから。

 迅速な処分を。早急な世界の再編を。主はお怒りです。神の名のもとに狼藉を働く愚か者、無くならぬ争い、程遠い平和。これ以上は主の沽券に関わるのです、ご理解を。いえ、私とて罪悪感は感じています。

 それでは聖書マニュアル通りに手続きを。先ずは愚かな皆々様に罪の読上を。尤も成してきた善行なぞ背負って生まれた罪に比べれば些末なものです。そして裁定を。まあどうせ皆揃って消滅でしょうが。いえ、きちんと裁定は致しますとも。私とて鬼ではない、というより天使ですゆえ。

 そして遂に、失敬、残念ながら審判は下るのです。この世の全ては跡形も残りません。魂だけを掬う為、入れ物は全て壊さなければならないのです。ええ、跡形もなく。何処から行きましょうか、大陸の端? 真ん中からじわり広げていく? ……いえ、忘れてください。私も少々貴方達に毒されていたのかもしれない。残虐性に染まるなど、ポーズであっても恥ずべきことでしょう。

 そして無事善行にて振り分けられた魂は天上にて我々と共に暮らすのです。……生前の関係は続くか、ですか?

 両方選ばれれば多分続くんじゃないですか? 私この手続きも初めてなので興味が無、いえ、そのあたりは曖昧なのです。

 一人でも多く掬われる事を願っております。それではまた終末にてお逢い致しましょう♡

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