第2話 絶望

「どうか私を…助けて…もう耐えられない…」


「わかったとりあえず落ち着こう。何かあるんやったら俺にぶち当ててくれても問題ねぇから。言いにくいなら…全然いいんだが。」


とりあえず今にも泣き崩れてしまいそうな愛奈を宥める。


「…どうや…落ち着いてきたか…。」


「う…うん落ち着いてきたよ…グスッ」


「じ…実はね…パパが…しん…じゃったの…。」


「おお…そんなことがあったんか。」


「ついさっき先生から教えてもらって…ママも昔にどっかいっちゃって…兄弟姉妹もいない…もうどうしたらいいんだろう…。」


実際、俺も今の状況、どうしたらいいかわからない。


気の利いたことも言えない。


好きな子が今助けを求めてるのに、なにもできない。最悪なやつや。


「そうか…よし、俺が協力する。俺が絶対なんとかしたる。」


「うぅ…ありがとう…。…手握ってくれない…?」


「え?う…うんええけど…。」


ドキドキする、がしかしこんなことを言ってる場合じゃねぇ。なんでや、なんでこんな状況やのにこんな邪なこと考えてまうねん。クソや、俺はクソ野郎や。もう目の前のことだけ考えろ。せめて相手に応えてやれボケ。アホかホンマ。


俺は愛奈の手を握った。今にも折れそうな、細いか弱い、小刻みに震えてる手を優しく。


「どうや…?落ち着いたか…?」


「うん…ママを思い出すよ…すごく嬉しい。」


「そうか…そらよかったわ…。」


こんなクソ男でも役に立ててよかった。


「私…もし学校に来なかったらその時は…何してるかわからない…。その時はどうか…。」


「は…まさか…お前そんなこと考えてたんか!あかん!絶対それだけはあかんぞ!人生キツなってもそれだけはやめろ!…って俺に止める権利なんかないけどよ…クソッ。」


「わかった。そんときは俺が絶対助けたる。絶対お前を救ったる。今からでもお前のこと幸せにしたるから!安心しろ。」


「ありがとう…そんな言葉聞けて…嬉しい。私の家…わかるかな…。」


「あぁ、中学の時一回行ったから…覚えてるぜ。俺が助けに参るから。」


「わかった…信じてるね、私。」


「あぁ、任せろ。そうや、俺はここにおったほうがええか?」


「いや…申し訳ないし…いいよ。帰っても全然。」


「わかった。ここにおる。俺が家までとりあえず送ったる。」


「ありがとうね…迷惑かけてごめん…。」


「謝るな。今は俺を頼ってくれ。頼んない俺やけど今は頼ってほしい。学校にも伝えたほうがええか?この…こと。」


「う…ん…お願い。もう私の口から…いいたく…ない。」


「わかった。言っとくよ。じゃあ、そばにいるよ。」


そして俺は保健室の稲谷先生にこのことを伝え、学校中の先生全員に伝えた。


___________


「大丈夫か、愛奈…って寝てるか。」


学校から帰っている。疲れ果てて寝ている愛奈をおぶって。


今は幸せ、どころじゃねぇ。俺も手震えてんだ。父親死んじまって最後の頼りの綱なくなって憔悴しきってる好きな子抱えてんだ。


俺だって怖ぇさ。でもここで俺が頼んなくてどうすんねん。こういう時こそクソ野郎は立ち上がらなあかんねんぞ。



少しして、愛奈の家に着いた。


「愛奈…一応ついたぞ…。愛奈…。」


「うぅ…晃介…くん?」


「お前んち…ついたぞ…。」


「あぁそうだったね…ありがと。」


「この家1人で…寂しくないか…?なんか…トラウマ引き起こす言い方して悪いけど。」


「寂しい。どうしたらいいかわからない…。」


「よしわかった。俺…と電話繋げとくか?俺もここに長いこといれねぇんよ。やから俺が家帰ったあと、電話ずっと繋げとこうか?諸々親戚に連絡し終わった後でもええから。」


「お願い…そうさせてください…。」


「わかった…っと、姉ちゃんから用事頼まれてもうたわ。俺の家族にも相談して何かできることあったらまた言う。ごめんな長いことおれんと。」


「うん…いろいろ…ありがとうね。」


「じゃあまた…明日学校でな。」


「はい…。」


その声はどこか寂しそうで今にも崩れてしまいそうなものだった。


______________帰宅後


姉ちゃんに頼まれた用事も終え、夕食。

俺は今日あった出来事全て話した。


「…ってことがあったんや。なにやれるかな、俺らって。」


「そうか…そんな悲しいことあったんや…母さんたちもなぁ…できることあったらなぁ。」


「姉ちゃん、どう思う?」


「冴実はねぇ〜ん…そんなすぐ思いつかない。やけど、とりあえず様子見でいいんちゃうかな。クールダウンも必要やろうし。アタシらが首突っ込みすぎても愛奈ちゃんに負担かけるだけとちゃうか。」


「それもそうか…。もし…やで。もし最悪俺らの家に愛奈を泊めさせるってなったら…?」


「悩ましいけど、そんなことあったんやったら…検討しなくもない。」


「父さんがどういうかだね。アタシは全然いいと思うけど。そんな可哀想な子ほっとけねぇよ。」


「それもそうなのよねぇ〜。」


「まぁ仮の話やからな。」


…などと議論をしている。



さて飯も終わり風呂も入って通話も繋げて。


いろいろ話してくれた。彼女の胸の内を。

そして最後に一言。


「私はもう寝るね。ありがとう。また明日。」


と。


後は俺も寝るだけ、だが。寝られるわけもなく…。


どうしたら昔のあの愛奈を取り戻せるか、

どうしたら希望を持たせることができるか、

どうしたら幸せにできるか。


ずっと頭が回転していて、眠れない。


結局オール。

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