第24話 義妹と目覚めの朝
朝、ふと目を開ける。そこにはいつもと違う景色が広がっていた。
ここは莉緒のベッドだ。そして何故か、天井には俺のヌードの写真が貼ってある。
「――この写真、今すぐにでも燃やしたい」
どうして目覚めてからすぐにこんな写真を見なければいけないのか、俺は複雑な感情に駆り立てられる。
しかし、この写真は一体誰が何の目的で撮ったものなのだろう……。しばらくの間、天井を見つめた俺は気持ちを落ち着かせるために再び目を閉じることにした。
――――ムニュッ……。
目を閉じてすぐに俺の右手に何か柔らかい感触があることに気付く。
「なんだ……これは……?」
俺は不思議に思って軽く揉んでみる。
それはとてもマシュマロのように柔らかく弾力のあるものだった。俺はそのぷにぷにとした感触にハマってしまい、数分ほど揉み続ける。
「――んんっ……んふっ……ああっ……」
何か少しだけいやらしい声が聞こえたが気のせいだろうか。
確かめるために俺はもう一度揉んでみることにした。
「――んふっ……あっ……んっ……あっ……」
俺はさすがにおかしいと思い、布団の中を覗く。
そこには布団の中でうずくまって寝ている莉緒の姿がある。
そして、肝心の俺の右手は莉緒の胸を触っている状態だった。
俺は慌てて布団を閉じた。
――――これはきっと夢だな。
俺は「ふうっ」と呼吸を置いてもう一度布団の中を確認してみる。しかし、状況は先程と変わらないままだった。
明らかに俺の手が胸の上に乗っている。この状況を俺はすぐに受け入れることが出来ずにいた。そもそも、どうしてこうなったのだ……。
このままではまずいと思った俺は胸の上にある手を退けようとする。
しかし、その瞬間に俺の手を莉緒が掴んだ。
「え……?」
俺は思わず声を出してしまう。
「……お兄ちゃん、おはよう」
俺の手を掴んで莉緒が布団の中から出てくる。
「……あ、ああ。莉緒おはよう」
俺達は何気なく朝の挨拶を交わす。
「それで、お兄ちゃん。私のおっぱいの揉み心地はどうだった?」
「……お前、分かっていたのか」
「もちろん。それでどうだったの?」
「……最高でした……」
「そうだよね。何回も揉んでたもんね。是非とも感想を聞きたいな」
「えっと……その……ごめんなさい」
俺は身体を委縮させて頭を下げる。
「お兄ちゃん、私は別に触ったことに対して怒ってはいないよ?」
「え?怒ってないのか?」
「うん。私はただ純粋におっぱいを触っての感想を聞きたいんだよ」
「どうして俺がお前の胸を触っての感想を言わなくちゃいけないんだよ……」
「いやいや、触っておいて感想を言わないのは失礼でしょ?」
俺は揉んだ感想よりも謝ることの方が大事だと思うんだけどな。
莉緒の考えることは本当に理解できない。
「まじで感想言うの……?」
「まじです。そもそも、あれだけ揉んだんだから一言くらい言って貰わなきゃ逆に困るよ。揉まれている時の私のえっちな声も当然聞いていたんでしょ?」
「うっ……それは……そうだけど……」
俺は思わず言葉が詰まる。
「はい!じゃあ早く感想をどうぞ!」
「……えっとだな。触れた瞬間、最初は何なのか分からんかったんだ。でも軽く揉んだらムニュって感触が手全体に広がっていったんだ。それを繰り返しているうちに楽しくなっちゃって揉みまくっちゃったんだ……。それと胸のサイズと柔らかさ、共に俺好みだったよ」
もう引き下がることは出来なかった。
今、俺は妹の胸を揉んだ感想をありのまま本人に伝えている。
「お兄ちゃんのえっち、変態、おっぱい大好きマン!」
赤面させた莉緒から返ってきたのはこの三つの単語だった。
えっちと変態は以前にも言われたから分かる。しかし、
「おっぱい大好きマンってなんだよ!?」
俺は声を荒げて言い返す。
「そのままの言葉だよ!おっぱい大好きのお兄ちゃんにはピッタリの言葉だよ!」
「ふざけるな!別に好きで揉んだわけじゃねぇよ!」
「好きで揉んだわけじゃない!?あれだけ揉んでおいてどういう言い訳なのさ!」
「不可抗力だよ!不可抗力!目覚めた時にそうなっていたんだからしょうがねぇだろうが!」
「それなら揉まないでさっさと手を退ければ良かったんじゃないの!?」
「何に触れてるか分からなくて好奇心が出ちゃったんだよ!」
「じゃあなんで揉む前に布団の中を確認しなかったの?」
俺は痛いところを突かれる。
確かに揉む前に確認すればこんなことにはならなかったはず。
それでも、俺が布団の中を確認しなかったのは……。
――――莉緒のおっぱいが揉みたかったから。
実を言えば、最初の時点で俺は手が何の上に乗っているのか大体は把握していた。
女の子と一緒に寝ているのだから自然とそういう考えにたどり着くに決まっている。柔らかいものといえば「おっぱい」しかないだろう。
しかし、このことを莉緒にどう誤魔化して伝えれば良いか。俺は悩んでいる。
「……布団の中を覗くのが怖かったんだ……」
俺は幼稚園児ですら騙せないであろう嘘を言った。
「ねぇ、お兄ちゃん」
「な、なんだ……?」
「そんな冗談が私に通用すると思っているのかな?」
莉緒の少し低めの声と薄ら笑いが俺の背筋をゾッとさせる。
「ご、ごめんなさい――!」
俺は人生で初めての土下座をする。
「謝るくらいなら早く自供した方がいいいんじゃないの?」
「え……?」
「ほら、早く」
「……えっと……俺は……お前の……おっぱいが……」
「お兄ちゃんー、声が小さくて聞こえないよー」
「……」
俺は大きく息を吸い込み、覚悟を決める。
「俺は莉緒のおっぱいが好きだぁぁぁぁ!」
言い放った俺の心には謎の解放感と絶望感が生まれたのであった。
「――それで、おっぱい大好きマンさんはいつまで頭を下げているつもりなの?」
「莉緒がその名前で呼ぶのをやめるまでです」
「今日一日は言うのやめるつもりないからお兄ちゃんは学校行けないね。あ、お兄ちゃんって言っちゃったよ」
「……って学校……?おい!莉緒!今何時だ!」
「え……?今は……あっ!やば!八時過ぎてんじゃん!」
「急げ!遅刻するぞ!いやこれは完璧に遅刻だ!」
家から学校まで歩いて三十分はある。
急いで着替えて走って行っても間に合わないだろう。
「莉緒のせいだからな!お前が俺に感想なんて言わせるから!」
「違うし!おっぱい大好きマンが全部悪いんじゃん!」
「だからその呼び方やめろって!」
「やめませーん!おっぱい大好きマン!」
莉緒が下まぶたを指で下げ、舌を出して揶揄う。
「絶対に学校ではその名前で呼ぶなよ!分かったな!?」
朝から仲が良いのは結構だが時間には余裕を持ちたい。
こうして俺達はお見事に遅刻をした。
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