第18話 義妹と原宿デート その2
俺はようやく莉緒に似合う五着を選ぶことが出来た。
これから寒くなっていくため冬コーデの物が多くなった気もする。
「お兄ちゃんの選んでくれた服、どれも可愛いしコーディネートしやすいから最高!ありがとね!」
「今回は冬物になっちまったから今度は春物買いに来ような。このお店楽しい」
「でしょ!?だから言ったじゃん!見かけで判断しちゃだめだよって。このお店はJKにとっては穴場のお店なんだからね!」
莉緒が自信満々な表情で俺に物申した。
「ああ、分かった分かった。ごめんな 」
「――てか、お兄ちゃん!今なんて言った!?」
「え?俺なんか言ったか?」
「また買い物来ようみたいなこと言ったよね!?」
「言ったけど、それがどうした?」
「どうしたじゃないよ!ほんとにまた一緒に買い物来てくれるの?」
「当たり前だろ?まだ冬服しか買ってないんだから。一番心配なのは夏だ、俺がしっかりコーディネートしてやるから覚悟しておけ 」
「もちろん!春も夏も選んで貰わなきゃ困るからね!お兄ちゃんとのデート楽しみに待ってるから!」
だからデートじゃねぇって言ってんだろ。ただの兄妹の買い物だわ。
「じゃあ、そろそろお店出るか」
「そうだね!」
洋服屋での買い物を終えて、時刻は十二時過ぎ。
俺達は昼ご飯をとるためのお店を探している。
「なあ、莉緒。お前何食べたい?」
「お兄ちゃんが食べたいものが食べたい」
「その返答が一番困るのだが」
「でも全世界の妹はお兄ちゃんが食べたいものを食べるのが常識だって、この前テレビでやってたよ?」
そんな何も証明されていないことを常識としてテレビで放送するわけないだろ。
非常識にも程がある、そしてこれは完全に莉緒の妄想だ。
「そんなクソみたいな常識は置いといてだな。真面目に食べたいのないのか?」
「クソみたいなとは何さ!私はただ純粋にお兄ちゃんが食べたいものを食べたいだけなんだよ!?」
「なら回りくどいこと言ってないで、最初からそう言えばいいだろうが!」
「言ったらお兄ちゃんが「それなら妹のために原宿一のお店に連れてってやるよ」的なこと言ってくれるんじゃないかと思ってさ」
「言わない、絶対に」
「私が「きゃあぁぁぁぁ!お兄ちゃん素敵!結婚してぇぇぇぇ!」って言うつもりだったとしても?」
俺の妹は一体何を言っているんだ?
近頃の莉緒の発言もやや暴走気味である。
「おい、くそブラコン。ハンバーガー食いに行くぞ」
「ちょっと!くそブラコンってなによ!私は別にブラコンじゃないんだから!」
「どこからどう見たってお前はブラコンだろ。それにこの前の仕返しだ。ざまぁみろ」
「むぅ!お兄ちゃんのばか!ぼけ!あほ!」
その一般的な暴言三段活用は聞きすぎてダメージがほとんど少ないな。
それに莉緒の怒り方も相変わらず可愛いすぎる。
「こんなことやってないで早く食べいこうぜ。店が混んじまうよ」
「ちなみにどこのお店行くの?モック?それともムス?」
「なんで原宿まで来てチェーン店行くんだよ。美味しいハンバーガー屋あるからそこに行くんだよ」
「へえ、そんなお店あるんだ。私基本モックしか行かないからさ〜」
「ポテトはモックに負けると思うがハンバーガーなら今から行くお店の方が凄いぞ?後は着いてからのお楽しみだ」
俺達は増えた人混みを掻き分けてお店へと向かった。
「うわぁ!なんか雰囲気も良いし、これは凄いね!お兄ちゃん早く入ろうよ!」
「分かったから。少し落ち着けって」
「だってこんなオシャレなお店来たことないんだもん!」
お店を見た莉緒が目を輝かせていた。
ガラス張りの外構、店内は少しレトロな感じで落ち着きがある。ゆったり外を眺めながら食事を楽しめるのがこの店のポイントだ。
「じゃあ一番窓際の席にするか。その方が店内も見渡せるしな」
「分かった!席は任せるよ!」
そして俺達は店内へと進んだ。
「さてと、何食べる?」
「お兄ちゃんと同じやつ」
「そのくだりはさっきもやっただろうが!」
「いやいやいや、冗談抜きで。私どれが美味しいのか分からないし」
「言われてみればそうだな。すまんすまん」
「全く、お兄ちゃんは私がすぐにボケに走るとばっかり思っているんだから。ほんと困っちゃうな」
「事実だから否定はしないぞ?」
「そこは可愛い妹のために否定してよぉぉぉぉ!」
こんなこんな調子ではいつまで経っても食べれないので俺はメニュー表は取った。
「俺はいつも頼むのはこの普通のハンバーガーだな。ベーコン挟んであるやつもあるしどうする?」
「お兄ちゃんは?」
「俺はいつものやつ頼むよ?最初だから莉緒もそうするか?」
「うん!そうする!」
こうして俺達はハンバーガーと追加で生ハムのサラダを注文した。
「大きさに多分びっくりすると思うぞ?」
「そんなに大きいの?私食べ切れるかな」
「意外と食べるお前が言う台詞じゃない」
「お兄ちゃん、それは女の子に対して失礼だよ?私だから許すけど。他の子に絶対言っちゃだめだからね?」
「他の子って誰だよ。俺はお前以外女の子とご飯を食べに行く予定は無いよ」
「もう!なんで今そういうこと言うのかな!食べる前からお腹いっぱいだよ!」
「思ったこと口に出しただけだろ。また顔赤くなってるし。これくらいでデレるなよ」
「デ、デレてないし!べ、別に嬉しかったわけでもないし!?私以外の子と食べに行かないって聞けて安心しただけなんだからねっ!」
これをデレていないと言い切るんだから本当に意地っ張りだよな。そこが莉緒の可愛いところなんだけどさ。
そして、莉緒がデレている間にハンバーガーが運ばれテーブルに並んだ。
「めっちゃ美味しそう!しかもデカい!」
「だろ?冷めないうちに食べようぜ」
両手でハンバーガー持ち、俺達は大きく口を開けてかぶりついた。
「うまうま!お肉ジューシー!」
「この肉が美味いんだよ!最高!」
「確かにこのハンバーガーはチェーン店では出せない味だね!」
あまりの美味しさに食べるスピードが止まらない。俺達は無我夢中で食べ進めた。五センチはある分厚いバンズにハンバーグが二枚入っている。
食べていての満足感が半端ではない。
「「ごちそうさまでした!」」
十五分でサラダも含め完食した。
「美味しかったね!」
「やっぱり満足感が違うな。モックのハンバーガーじゃここまでは無理だ」
「だね!私も今度陽菜誘って来てみるね!」
「いいんじゃねぇか。お前に誘われたら陽菜ちゃんも喜ぶと思うぞ?」
「あ、お兄ちゃん。私もう一つ買い物あるの忘れてた。付き合ってくれる?」
「いいぞ?何買い忘れたんだ?」
「ブラジャー」
聞き間違いだろうか。今、莉緒はなんて言った?ブラジルって言ったのか?
「……莉緒、もう一回お願い」
「だからブラジャーだってば!」
「……ブラ……ジャー?」
「そう、ブラジャー。おっぱいに身につけるやつ。最近ちょっとキツくなってきたからさ。新しいやつ欲しいの」
「やっぱり一人で行ってくれ。俺は本屋で時間潰してるから」
「だめ、行くの。行くって言ったんだから。ブラジャーも選んでね」
「おかしいだろ!?どうして妹のブラジャーを兄が選ばなくちゃ行けないんだ!」
「ちょっとお兄ちゃん、ここ店内だよ」
気付くと俺は立ち上がって叫んでいた。他のお客さんの視線が集まっていた。
もしかして、ブラジャーって言ったの聞こえてた……?
「どうせ、私といる以上は逃げ道なんてないんだから諦めなよ?」
莉緒がにやにやした表情で俺をあざけ笑う。
「……分かったよ。付き合ってやるよ」
「ふふふっ、お兄ちゃんはどんなブラジャーが好みなのかな。楽しみ楽しみ」
妹のブラジャーを選ぶ兄、ここに爆誕。
全世界の兄よ。俺を助けてくれ。
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