2人だけの昼休み
アルカナ
第1話 旧校舎と謎の美少女
突然だが、僕には友達がいない。
正確にはクラス内に、だが。
僕が1年生だったら誰かしら話しかけに来てくれて関係を築いていくことは難しくなかっただろう。
しかし、今の僕は高校2年生なのだ。
2年生にもなれば既にグループが出来ており、話しかけに来るような人はいない。
人見知りなこともあって誰とも話さない日々が続いたのだが、最近は友達がいないのも楽だなと思えるようになってきた、そんな4月の中旬である。
昼休み、ぼっちの僕にとってはなかなか辛いものである。と言ってもやることは決まっている。
購買でパンを購入し、席につき食べる、その後は寝たふり、以上だ。
でも、今日はいつもと違った。自分の席に誰かが座っている。
クラスの女子だ。名前は知らないが、ギャルだということは知っている。
自分の席に座ってる人に「どいてください」と言えないのが人見知りの辛いところだ。
仕方がないから自分の席をギャルに明け渡し、他に食べるところを探すことにした。
さて、この学校に何処かいい場所はないだろうか。ラブコメの世界だと大抵、学校の屋上が解放されているのだが、残念ながらうちの学校は屋上に行けない。
空き教室でも探すか、と考えていると、この学校には旧校舎があることを思い出した。
どうやら旧校舎には良くない噂があるらしいが、今日昼ごはんを食べるだけだから問題ないだろう。そう思い、旧校舎の方へと足を運んだ。
旧校舎に着いたまでは良かったのだが…
鍵が開いてない。1階の教室は全て閉まっていた。昼ごはんを食べる場所を探すためにここまで時間がかかるとは思っていなかった。
2階に上がり、開いているところを探したが見つからない。
2階で調べてない教室も、とうとう最後になった。ここが空いてなかったら次は3階か…
などと考えながらドアに手をかけた。するとドアは自分の予想と反して、いとも容易く開いた。
そして予想に反していたことがもう1つ。
それは先客がいたということだ。
二重のタレ目、スッとした鼻、うすい唇
そして黒くて艶やかなショートボブ。
この世に、彼女を形容するのに相応しい言葉がないのではないかと感じるほどに美しい人だった。
「あっ、あの!別に邪魔するつもりじゃなくって…ただ、人がいるって気づかなくて…その…お、お邪魔しました!」
そう言って教室から出ようとしたその時だった。
「ま、待って」
顔立ちだけではなく声も美しいとは、神は二物を与えずとは一体何なのかと感じた。
「こっちに来て」
そう言って手招きをしている。その様子はなかなかに可愛らしいものだった。
言われた通り彼女のほうへ行こうとしたところで
彼女が口を開いた。
「やぁ、少年よ。君は立ち話が好きかい?それとも座りながら話をしたいかい?さぁ!選びたまえ!さぁ!」
目がキマっている。そしてこの瞬間、僕は悟った。この人と関わるべきではないと。触らぬ神に祟りなしだ、と。
「いや、まぁ他をあたるんでそれじゃ失礼しまし…」
「ほう?君は第3の選択肢、帰るを選択するのかい?さては捻くれ者だな?与えられた選択肢の中から選び給えよ。それにここ以外に空いている教室はないぞ?」
そう言われたらここに留まるしかない。僕は彼女が座っている隣の席に腰掛けた。
「君に1つ質問をしよう。君は何をしに来たんだい?」
「えっと、お昼ご飯を食べる場所を探しに…」
「それは本当かい!?嘘だろう?もう1回聞くぞ、君は何をしに来たんだい?」
「いや、だからお昼ご飯を食べる場所を探しに…」
「2回聞いて同じ答えが返ってくるってことは本当なんだねぇ…で、君は何をしに…」
「いやしつこいですよ!」
「ひぇっ、ご、ごめんなさい…場を和ませようとしたことがつい裏目に出てしまって…」
彼女は手で顔を覆い隠して、しくしくと泣き出してしまった。
「ごめんなさい、自分が言いすぎました…」
そう言った後に彼女が顔を上げた。
彼女は顔に笑みを浮かべており、泣いた形跡は一切なかった。つまりは嘘泣きだったということだ。
「まぁ、その話は一旦置いといて…この教室内でのルールを説明する!有難く聞くが良い!」
何故かここでのルールを聞かされることになった。別に、ここに毎日来るなんて一言も言ってないのにも関わらず。
「ひとつ!本名を名乗るべからず!
ひとつ!家族構成、クラス等、個人を特定できるような話をするべからず!
ひとつ!お触り厳禁!
ひとつ!ここのことは他言無用!以上!
ドゥーユーアンダースタン?」
お触り厳禁は分かるが、ほかの項目が正直、意味不明だ。とりあえず今日限りだろうと考え了承した。
「理解のある少年は好きだぞ?じゃあ君の名前を教えてくれるかい?もちろん本名はダメだからね!」
急に言われても出てくるはずもない。そこで時間を稼ぐことにした。
「名前を聞くならまずは自分からですよ」
「うーむ、正論…そうだねぇ…︎︎ ︎︎ ︎︎"︎︎︎︎ ︎︎ひなた"︎︎と名乗らせて頂こうか」
「ひなたさんですか…ちなみになんでその名前にしたのか聞いても?」
「理由は単純、この教室は日当たりがいいからさ!」
「成程…」
「で、今度は君の番だよ」
周りのものが名前のヒントになるのか…そう思って辺りを見渡した時、あることに気づいた。
「上履きが緑…ってことは、ひなたさんは先輩なんですね」
ちなみに今年度は3年が緑、2年が青だ。
「え、えーっと…そうだね…それより君の名前は決まったのかい?」
「えぇ…決めました…︎︎ ︎︎ ︎︎"︎︎︎︎ ︎︎のぼる"︎︎で」
「オッケー、…ちなみに本名じゃないよね?」
「違いますから安心してください」
「じゃあ改めてよろしくね、のぼるくん」
「いや、まぁ今日限りだと思いますが…一応よろしくお願いします。ひなたさん」
こうして、僕はひなたさんと出会った。
ちなにみに昼食は場所探しと、ひなたさんの会話で昼休みが削れてしまい食べ損ねてしまった。
2人だけの昼休み アルカナ @randoruto
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。2人だけの昼休みの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます