第24話 双子

 僕たちを乗せた車が、八重さんの別荘に到着したのは午後2時だった。

 別荘に着くと玄関には、40代ぐらいの女性と僕たちと同い歳くらいのイケメンくんが出迎えていた。

 この男が、噂の燿司ヨウジくんかな?と思いつつ、会釈した。身長は僕と同じくらいで170センチぐらいなので高くはない。顔はかなりの美形だった。鼻筋は通っているし、涼しげな目元という表現が似合ういい男だった。

「今日からお世話になります」

 代表で八重さんが出迎えてくれた女の人に挨拶をすると、僕たちも銘銘めいめいによろしくお願いします、と挨拶した。その時に燿司ヨウジくんと目が合うも、知らん顔された。

「お帰り!一週間はいれるんだろ!今日はこれからどこ行く?」

 燿司ヨウジくんは、八重さんとナナにだけ、そう言う。キュウと僕には目もくれない。

燿司ヨウジ、八重さんたちは、長旅で疲れてるんだよ、ゆっくりお茶でも出しなさい。どうぞ、部屋でゆっくりして」

 女性がそう言うと、えー、と言いながらも、僕たちの荷物を燿司ヨウジくんは運び出した。

「ありがとう」

 八重さんは遠慮しながらも、燿司ヨウジくんの後を追いかけた。ナナも続く。

燿司ヨウジありがとう。」

「後で、海にでもいこうぜ」

 燿司ヨウジくんは、荷物を運びながらナナの方を見て言った。

「そうね!でも海は明日にして、今日は近くの森の家に行きたい。確か動物いたでしょ?」

 ナナは燿司ヨウジくんの言葉にそう言った。

「ああ、ばあちゃん家ね。いるよ、シュートも元気してる。そうだな、連れてくよ」

 燿司ヨウジくんがそう言うとナナは懐かしそうに頷いていた。

 別荘に入るとすぐに、二階にある部屋に連れて行かれた。部屋は向かい合わせに二つ。ナナと八重さんの部屋と僕とキュウの部屋という風に案内され、それぞれに別れた。

 荷物を置いて、また一階に戻る。

 下で燿司ヨウジくんがコーヒーを淹れてくれていた。

 それぞれに席について、お礼を言ってコーヒーをご馳走になった。

「オレ、宮本燿司ヨウジ。あんたらはどこの高校?」

 燿司くんは明らかに僕とキュウにそう聞いた?高校名聞いてわかんの?と思いつつ、答えた。

「谷山高校だけど…」

「…知らんなー、オレ、英明館高校を来年、受験する」 

と、燿司は言った。来年って、え?今は中学生っていうこと?15歳?僕らより2コ下ってこと?僕はてっきり同い年と思っててびっくりした。なおさら中学生にしては態度がデカイなと思ってしまう。

 それに、英明館高校って、県下でトップ校やん、とも思う。

「ホントにこっちに住むの?」

 ナナはびっくりして、そう言った。

「当たり前だろ。ホントは中学から行きたかったけど、中学まではこっちにいろ、って母さんが言うから」

 そう言って、晩御飯の支度をしている先ほど出迎えてくれた女性を見る。僕は親子なんだ、と理解した。

 女性は由紀子さんと、八重さんやナナから呼ばれていた。

「そうなのよー!ナナさんと同じ高校は無理だから、いろいろ調べて、そこに行くって言ってて」

 由紀子さんと呼ばれる女性は、僕たちにそう言った。確かに。ナナたちは、女子高だから、無理だよね。燿司ヨウジくんが年下だったのは驚いたが、その行動力にはもっと驚いた。

「でもナナさんにも恋人が出来るだろうから諦めな、って言ってるんだけど」

 と、由紀子さんはいきなり確信に触れてくる。

 僕たち三人は顔を見合わせるも何も言わなかった。

 キュウと八重さんはともかく、僕とナナはそれぞれの本命がいるのに、利害が一致して付き合い出したから。真剣にナナを好きな燿司ヨウジくんに、僕は内心、悪いという気持ちになった。

 そんなことをぼんやりと考えていると、すごい勢いで、燿司ヨウジくんと同じ顔の女の子が、家に駆け込んできた。

「大変!うちが燃える!」

 燿司ヨウジくんよりワントーン高い同じ声質で、慌てるように彼女はそう言った。

「どういうことだよ!」

 燿司ヨウジくんと同じ顔の女の子に、燿司ヨウジくんはそう言った。

 双子?と僕は心の中で思った。

「正確には、隣の家が燃えてて。うちにも引火して!どうしよう!」

「そんなの、消防、呼ぶしかないだろ!」

 燿司ヨウジくんは、強く、でも優しい口調で少女に言うと、由紀子さんと一緒に家を飛び出した。

「ごめんなさい、詳しいことまた連絡するか

ら、しっかり戸締まりしといて」

 由紀子さんも出かけながら、僕たちにそう言い、出かけて行った。

 大丈夫だといいけど、と僕は思った。

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