第2話 ダブルデート?

 今日は、ナナとのデートだった。

 ただ二人でではなく、僕、六大とナナと八重さんと九。

 気づいたと思うけど、僕らの名前を合わせると六、七、八、九になる。冗談みたいだ。


 これを知った時の会話はこんな感じだった。

 「自己紹介するね」とナナは言った。

 付き合うと決まってから自己紹介も変だと思うけど、まあ仕方ない。出会い方がそもそもおかしいのだから。

 「私の名前は伊藤七、ナナは数字のナナ。ロクタの名前は数字の六じゃないよね?」

 「そうだよ」

 僕が素っ気なく、でも堂々と答えると、ナナの傍にいたナナの友達の長身美人が笑いだした!えー、そんなにおかしいか?ナナで七の方がよっぽど変だぜ?と言いたい気持ちを抑えつつ、ナナの友達の顔を見た。

「ごめんなさい。六大くん。私はハチなの。八が重なると書いて、八重(ヤエ)。」

「嘘、マジ。」

 これは、僕の彼女、いや元カノが怒って帰ってから現れた僕の親友、九が現れた後の出来事だ。もちろん、僕の親友は、キュウと読み、九と書く。

 学校の部活帰りの九が「ロクタ~」と現れ、僕が「おう!キュウ」と挨拶した瞬間、ナナと友達はクスクス笑い出し、二人で自己紹介し始めたのだ。

確かに彼女達が、ナナとハチで、僕らがロクとキュウだったら笑うよな。

 突然現れたキュウはキュウで、いつも一緒の美咲がいなくて、聖信女学院高校の女の子達と、僕が一緒にいるからますます謎だったと思う。

 僕とナナは付き合うことになったけど、ハチいや八重さんとキュウは別に彼氏、彼女がいた。

 今日は初デートの僕たちに付き合って、なぜか一緒に遊びに行くことになった。

 でも僕たちより、八重さんとキュウ達の方がお似合いかもしれない。キュウは身長180センチ以上で、顔もイケメン。スポーツも万能で、所属しているバスケ部には、キュウ目当てのマネージャーが5人もいるらしい。その中の一人が彼女らしいけど。

 対する八重さんも僕と同じ170センチくらいの身長で、スポーツ万能、加えて頭脳明晰。両親は医師で、容姿も美人。八重さんの彼氏は、彼女を家庭教師している医大生なんだと。

 二人の姿は遠目からみても完璧すぎるカップルだ。

 それに比べたら、僕らは…。嫌、普通なのは僕だけだ。多分、容姿は普通。勉強もそれなりに努力して人並み。スポーツは出来ないこともないけど、楽しむ程度で、やれば満足するタイプ。特に自慢できる特技もないし、しいて言えば、母親が忙しいから料理が出来て、掃除が出来るくらい?

 あ、意外にポイント高い?将来は、ほんと、外でガツガツ働くより、家で家事してる方がいいかも?と思ってる。それに比べて、ナナは行動的。付き合って1週間なのに、デートのプランもバッチリ立てて、とにかくパワフルだ。見た目は会ったときも思ったが、完璧だった。肌は透き通るほど白く美しく、睫毛もびっくりするほど長かった。

 八重さんの話だと、よく芸能界やらモデルやらスカウトされるらしい。本人はシンガーなら興味があるらしいが、驚くほど、音痴らしい。その話を聞いたときは、笑ってしまった。なんでも出来そうなのに、ちょっと安心した。

「なに、一人で笑ってんの?」

 ナナが思い出し笑いをしている僕にそう言ってきた。

「いや、なんでもない」

 僕がそう答えると、変なやつ、ってナナは呟いて、

「ねえ!あの観覧車に乗らない?」

 ナナの指差す先には、大きな観覧車が見えた。今日はナナの提案で、テーマパークに来ていた。電車とバスを乗り継いで、四人で朝早くから来ていた。

「うん。でもキュウ達はどこ行った?連絡してみる?」

 そう僕は言って、スマホを上着のポケットから出そうとすると、ナナはそれを軽く制止した。

「いいじゃん、二人で乗ろ」

 ナナの大きな目が僕を見つめて言った。僕は一瞬、ドキッとした。そう言った顔がやけに真剣に見えたから。僕は驚く気持ちを隠すように、「いいよ、そうだね」と言った。

 ナナは僕の手を引いて、楽しそうに、観覧車まで二人で歩いた。




 

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