第71話 青春を取り戻せ


 クルラホーン酒の妖精が躍り、恍惚のお香が充満する、退廃の畢竟。


 永遠を錯覚させる騒乱の宴。


 しかし、気狂い水を飲み干し、烟草が燃え尽きれば、後に残るは空の瓶と黒い灰。


 時間が止まって欲しいと……僕は何度願ったのだろう。


************************************************************


 夜食にラーメンを食べに来るなんて、僕の薄っぺらい人生に置いて初めての経験だった。


 深夜3時過ぎのラーメン屋さん。タバコの灰を灰皿に落として、僕は街頭が綺麗に光る町の夜景を眺めていた。


「火事って、もっと大事になるかと思ってたよ」


 陣内君の誕生日である、2月3日に起こった火災騒動。僕らふうに名前を付けるのならとでも言っておこう。


 あの事件から既に5日が経過している。そう考えると、時間の流れという物は本当に早い。


「あぁ、俺もだ。警察とかも介入してきて事情聴取されたり、何百万って金を請求されたりしてな」


 くだんの騒動で一番の被害を被った男友達は、遠い目をして天を仰いでいた。最小限の被害で済み、安堵しているように見える。


「だよね。…………実際は2日くらいで何事もない日常に戻れたよね」


 それでもまだ、非日常の残響が胸に響いていた。

 悪く言えば地に足がついていない、良く言えば夢見心地。『危なかったけれど終わってみればスリリングでとても楽しかった』と言うのが僕の本音。それに、新たな部室での共同生活も斬新で気に入っている。


「今の部室暮らしが日常と言えるか?」


 だけどやっぱり、陣内君は億劫そうだった。気だるそうに眉をひそめている。


「少し不便なルームシェアさ」

「少しか? あの部屋はとにかく狭すぎる。それさえなかったら俺だって楽しめる気がするけど……」

「ふふっ、確かに狭いね。……でも、僕は凄く楽しいよ? 小学生の夏休みにでも戻った気分だ」


 あの頃は……凄く楽しかったな。


 今で言う限界集落。お爺様が持つ土地の中では無価値に等しい田舎の辺境で、僕は15年を過ごした。


 幼少期の記憶は僕の宝物だ。


 通っていた学校は小学生と中学生が1つのクラスに集まってしまうくらい生徒が少なかった。校舎も、僕が住んでいたお爺様の別宅の方が大きかった。でも、その小さなコミュニティが僕は大好きだった。


 狭い教室や何もない原っぱで、学友達と甲虫やゲームを持ち寄って延々と遊んでいた。僕は体を動かす遊びには参加しなかったけど、彼ら彼女らは優しい人ばかりで、僕でも出来そうな遊びを幾つも考案してくれた。退屈な時間の方が少なかったくらいだ。


 仕事の都合で両親には中々会えなかったけど、学校に行けば友達が遊んでくれる。だから……それほど寂しくはなかった。僕の幼少期はとても満ち足りた、素晴らしい物だったと胸を張って言う事ができる。


 けれど、人生には山があれば谷もある。

 中学を卒業する間際に、ダムの開発が原因で集落は無くなってしまった。


 当然、学校も廃校となり皆ちりぢりとなった。僕も体が成長していたので田舎の別宅から本家へ呼び戻されて…………お爺様の意向もあり、親戚のリクと共によく知らない進学校へと入学させられた。新生活が忙しくて、あの頃の友人とは疎遠となってしまっていた。


(………ずっとあの田舎で生活できていれば良かったな)


 高校を退学してしまってから、たまにそう思う。


(そうすれば、きっと、僕にも────)


 いや、違う。


「…………ふぅ」


 煙をゆっくりと肺まで吸い込み、安堵を混ぜて吐き出す。ニコチンの陶酔感のせいか、自然と体から後悔が抜け落ちた。


(あの頃以上に、今が楽しい)


 ここ1年、初めての経験ばかりが僕の中に蓄積されていた。取りこぼしてしまった5年間の人生。その分の反動が、一気に溢れ出している。


 大学に入ってできた、3人の友人のおかげだ。


 安瀬とは信じられないほど気が合う。僕の中で莫逆ばくぎゃくの友とは間違いなく彼女だ。

 猫屋は馬鹿なヤニカス。なのにどこか輝かしい。一緒に居ると、彼女の朗らかな雰囲気に当てられてこっちまで頬が緩む。

 陣内君は……なんだろう? 重度のアルコール中毒者? 世話焼きなツンデレ悪友? それとも、安眠用の湯たんぽ君かな?


(……何にしても、4人でいると楽しい)


 僕の人生で一番の幸せとは今だ。


 あの頃じゃない。きっと今の方が、何にも代えられない宝物だ。


「俺も……」


 僕が今の生活に思いを馳せながら外の景色を見ていると、彼も外の景色を見ながら躊躇いがちに口を開いた。


「ん?」

「俺も毎日楽しいよ。お前らと居るといつも腹の底から笑ってる」


 彼は少し恥ずかしそうに、自分の本心らしきものを語った。


「そうかい?」


 意外だった。彼は少し見栄っ張りで、真面目な雰囲気が大嫌い。だから、素直にそんな事を言うとは思ってはいなかった。


「あぁ……だから」


 陣内君の細い目が、真っ直ぐに僕の瞳を見つめた。決意じみた何かが籠っているみたく、三白眼に揺らぎはない。


「卒業まで末永くよろしくな!!」


 卒業。

 大学生活の終わり。


「というか卒業しても案外一緒にいるかもな、俺達」


 その言葉は、悲しいほどに、僕の願望そのものだった。


「…………うん、そうだね」


 悟られたくない感情を誤魔化す為に、僕は頷いた。


 僕は大学を卒業すれば。お爺様が譲ってくれる、土地、建物、財産。その管理をするために。


 いいや、もし、お爺様に不幸があれば、僕は今すぐにでも大学を辞めて地元に帰るだろう。未練という言葉では言い表せない感情を押し殺し、全てを捨てて、きっと今の生活を手放す。


 ……やりたくない訳じゃない。迷惑だとは思っているけど、お爺様の寵愛を無下にしたい訳じゃない。僕を育ててくれたのはお爺様だ。大好きだし、誰よりも深い家族の情がある。少しくらいは育ててもらった恩を返したい。


「…………」


 僕は黙って、体面に座る彼を見た。その背後に連想される生活を見た。


『僕の地元で就職するつもりはないかい?』

『就職してからも、4人で生活した方がきっとコスパが良いと思うんだ』

『実は、僕の家は少し大きい所でね。家の伝手つてを使えば、たぶんあっけないほど簡単に良い職につけるよ? まぁ、本当は実家の力なんて頼りたくないけど……』

『ふふっ、でもその代わりに、煩わしい就職活動なんてやらずに卒業ギリギリまで遊んでいられるよ? どうだい? いい話だろう?』

『そうだ。その空いた時間を使って、卒業旅行の為にお金を稼いでおこうよ。旅行先は……海外にしよう。父さんと母さんから、よく外国の話を聞くんだ。だから一度は行ってみたいと思っていてね』

『パスポートを取って何ヵ月もかけて色んな国を巡ってみたいな。酒と煙草と賭博。その3つの文化が無い国なんて存在しないからね。忘れられない経験になると思う。……うん、それが良い。陣内君もそう思うだろう? 安瀬も猫屋も、きっと大賛成するはずだよ!!』


『………………………………だから、ついて来て欲しいな』


 ふらふらになってしまうほどの甘い妄想に酔う。


 同時に、笑えない冗談だと思った。


 安瀬、猫屋、陣内君。

 3人にはそれぞれの人生があり、事情があり、家族がいる。、地元に帰れば親しい友人もきっといる。そんな皆に僕の恥知らずな願いを無理強いするのは間違っている。


 そもそも一生4人でつるむなんて事自体が夢物語。社会に出ていない子供の幼稚な願望だ。就職、結婚、子育て。大学を卒業した僕らの行く先には、難関なライフイベントが目白押し。いつまでも子供のままではいられない。


 卒業してしまったら、たまに集まってバカ騒ぎする……その辺りが関の山だろう。


(だから、今を全力で楽しもう)


 この騒がしくて仕方がない、星の煌めきのような生活を、楽しむんだ。


 勉強なんて最低限。健康も道徳でさえ度外視。酒と煙草と賭博に溺れ、毎日一緒に居て、沢山遊びに出かけるんだ。


 そうして一生分の思い出を蓄えて、あの場所に帰ろう。


 僕が嫌いで、僕を嫌う、誰も僕を受け入れてくれない、1人寝の寂しい夜に……ちゃんと戻るんだ。



************************************************************



 3日ぶりのお日様。


 新鮮な地上の空気。


 監視が無く、プライベートが尊重された世界。


 清々しさの限界を超えて、生きている事に感謝するほどの自由が俺を包み込んでいた。


 アイ、ラブ、自由。アイ、ヘイト、牢屋。いやぁ、自由って本当に素晴らしいものですね。


「それで、君たち? この僕に何か言いたい事があるんじゃないかな?」


 だが、"自由には代償"がつきものだ。そんなよく耳にはするが、実際には遭遇する事の方が難しい局面に3匹は陥っていた。


「「「…………」」」


 俺と、安瀬と、猫屋は、東京警察署の玄関前で正座をしていた。俺達を頭一つ高い位置から見下ろしているのが、尊敬すべき西代桃お嬢様だ。


「君たちを無実で留置所から出すために、僕、リクの父親弁護士なんかに頭を下げる羽目になったよ。はぁ……これでまた、本家に貸し1つさ」

「「「す゛、す゛み゛ま゛せ゛ん゛て゛し゛た゛ぁ゛あ゛!!」」」


 額を思いっきり路上に擦りつける。公共の場で、誠意を込めた本気の土下座を披露した。


「で、でも、に、に、西代ちゃん本当にあ゛りがとぉぉぉおおおお!! わ、わ、私、こ、今度こそは正しい法の裁きを受けちゃうかと思ってぇぇええええ!! こ、今回のは本当に洒落になってなくってぇぇぇえええ!!」


 猫屋が泣き始める。西代の足元にしがみ付き、半狂乱で感謝を述べていた。


 無様だと思うが、その気持ちは死ぬほど理解できる。


「お゛、おれも怖かった…………う゛っ、ぐぅ……い゛き゛て゛てよかった゛ぁッ……!!」


 俺も泣いた。生還の安堵感に耐え切れず、ボロボロと泣いた。


 不法侵入と窃盗と放火未遂。俺の場合は一応全て冤罪なのだが、もし西代が助けてくれなければ10年は刑務所に入っていた。人をぶん殴って半年ほど刑期を務めるくらいならギリギリ我慢できるが、10年は無理だ、キツイ……絶対に無理……ムリぃ。


「か゛、垣蔵様にも後でお礼を言わせてく゛れぇ……あ、あと、ま゛、ま゛た迷惑かけてごめぇ゛ん!!」


 感謝を言霊に乗せて、泣きながら口を開く。


 …………俺は彼女に何度助けられれば気が済むのだろうか?


「うっ、うっ……ひっく……うぅ……わ、わ、我も脱獄の計画とこれからの逃亡人生の事を本気で考えておった……あ、あ、危うく、兄貴の子供を見ずに人生を終える所であったぁぁ。に、西代、ありがとうぅ。お、お主に貸していた1万円はチャラで良いでござる……」


 俺の隣で、安瀬も啜り泣いていた。


 彼女だけ思考が異次元だ。人のことを言えた義理ではないが、今回一番反省するべきは彼女のはず。だが、安瀬は更に罪を重ねるつもりだったらしい。


 やはり、安瀬は別格。してはいけないのだろうが、その精神力だけはちょっと尊敬する。


「もう、さ……ほ、本当に、ね」


 泣く俺達を見て、西代は歯切れ悪く言葉を紡いで、片手で顔を覆う。


「……君たち…………っ、……くくっ…………くくく」


 今度はもう片手で腹を抑えだした。


「「「…………?」」」


 涙で視界が滲んでいる俺達は、西代の異変を不思議そうに眺めていた。


「あははははははは!! 君たちって、ほんっっっとうにクソ馬鹿だよね!!」

「「「!?」」」


 怒っているはずの彼女は、目に涙まで浮かべて楽し気に俺たちを笑った。


「ぼ、僕!! お、お爺様の驚愕した顔なんて初めて見たよ……!!」


 ヒィー、ヒィー、っと西代は苦しそうに息を吐きだしながら、呂律の回っていない口調で話し続ける。


「ま、窓ガラスを割って不法侵入して!! 停電起こして、火を点けようとしたのが僕の学友だって聞いたらさ!! お爺様、顎が外れそうになるほど驚いちゃって!! 『そ、その年でハングレと付き合うのは、流石にやめた方がいいんじゃないか?』なんて言われっちゃってね!! あははははははは!!」


 澄み渡った青空に西代の透明な笑い声が木霊するように響き渡る。


「この3日間、皆の事を話してたらお爺様ドン引きしてたよ……!! 自分だって十分にクレイジーなのにね!! あはははっ!!」

「…………え、えぇと……西代よ。ゆ、許してくれるのかえ?」


 笑い続ける西代に、安瀬は慎重に確認を取る。


「ふ、ふふ……え、うん。もちろん」


 西代は呆気なく、俺達を許してくれた。


「僕の為にパーティーを壊そうとしてくれたんだろう? それなら、一言謝ってくれればもういいよ」


 彼女は笑い疲れたのか、一息つくためにセブンスターを咥えて火を点けた。しっかりとした味わいの煙を、ご満悦そうに体に取り入れる。


「ふぅ…………それに恋人が警察沙汰を起こしたんだ。僕に粉かけようとする人間なんて、これで完璧に存在しなくなったよ。リクを含めた親族はもう二度と僕を社交の場に呼ばないだろうね。そう考えるなら……収支はトントンってところじゃないかな?」


 警察署の目の前で堂々と路上喫煙する彼女は、どこか太々しくてクールだ。その姿を見て、俺は世捨て人のような無頼さを感じ取っていた。


「「「……西代お嬢様ぁ!!」」」

「っわ」


 俺達3匹は、大海原のように広い心を持つ彼女に飛びつく。彼女への感謝の気持ちを全身で表現したかったのだ。


「ありがとう、西代ちゃん!! 超やさしくて、マジ大好きぃーーー!!」

「俺もお前の広い心に感動した!!」

「我もじゃ!! しばらくは足を向けて眠れん!!」

「も、もぅ……みんな大袈裟だね」


 俺達の褒め殺しを受けて、西代は恥ずかしそうに頬を赤らめる。


「いつも血も涙もない私より暴虐な悪魔だと思っててごめんねーー!!」

「え?」

「俺も勘違いしてた!! すごく悪い女だと思ってたけど、これからは少し悪いヤツくらいに認識を改めようと思う!!」

「ちょっと」

「下水のように濁った心にも綺麗な友情の花は咲くのでござるな!!」

「…………もう一度牢屋にぶち込まれたいようだね、君たち」


 西代さまは底冷えするような怒りを目に宿し、俺達を脅し付けた。


「「「そ、それだけはご勘弁を……」」」


 う、うん……今のは俺達が悪かった。テンションに任せて色々と言いすぎた。


「はぁ……まぁ、いいや」


 ため息をつき、彼女は纏わりついている俺達3匹を引きはがした。そして、改めて俺達の方へ向き直る。


「さて、君たち。3日も牢の中に居たんだから色々とフラストレーションが溜まっているだろう?」

「ん……まぁそうじゃな。……留置所の飯というのはどうにも味気なくてのぅ。拙者はレモンを絞った唐揚げが食べたい気分でありんす」

「そう言うなら、俺は出所祝いのビールが飲みたい」

「なら私はー……ショートピースかなー? いつものラキストより濃厚な煙が吸いたーい!!」


 三者が各々、摂取したい栄養分を申告した。留置所では嗜好品の類は当然許されていなかったし、あんな所で食べるご飯が美味いはずもない。


「なら決まりだね。せっかく東京にいるんだから飲み歩こうよ。どうせ今からじゃ1限には間に合わない。もう一日、自主休講にしちゃおう」


 俺達を留置所から出すために色々やっていたであろう彼女もサボりは3日目。だが、そんな事に何も悪びれた様子を見せず、西代は魅惑的なサボりを打診したのだ。


「……それ超いいねーー!! 私、それに追加で東京の大きなスーパー銭湯に行ってみたーーい!!」

「うん、温泉もいいね。楽しそうだ」

「ふぅむ、あまりサボりすぎると後々が大変なのじゃが……まぁ、確かに今は暖かい湯と酒と煙草とご飯の気分でござるな!!」

「ふふっ、安瀬は欲張りだね」

「…………」


 最近、少しだけ真面目に学業に取り組んでいた俺は返事を渋る。サボりに対して迷いが出ていた。


 しかし、その迷いは直ぐに薄れていく。正直言って、今日は大学に行く気力が湧かない。その原因は重度の疲労にある。


 この1週間は、壮絶にも程がある日々だった。


 猫屋の父親に身体を弄られる所から始まり、賃貸に謎の使用人が訪れて西代の事をお嬢様と呼び、俺が偽りの恋人に抜擢ばってきされ、セレブパーティーに参加。そのパーティーでゴミ糞野郎を殴ろうとしたり、彼女の祖父と100万を賭けた博打勝負までやって、最終的には警察に捕まり留置所に3日ほど収容。


 なんだコレ? 特に後半、俺何してんの?


(……反省しよ)


 偶然にも、事の顛末は西代にとって悪くない結果に転がったようだが、一歩間違えれば見るにも耐えない悲惨な結末となっていただろう。


 どうにも俺はやる事成す事、思慮が足りていない。

 特に3日前のあの時は、酒も入っていたせいか異常な心境だった。凍えるような胸の感触に、ただただイラついていたのを覚えている。


 次回もこんな出来事があるか分からないが…………いや、きっと、あるんだろうが……今度も無事に生還できるとは限らない。自重するように、心がけはしよう。


「……そうだな。電気ブランでも飲みに行くか」


 自分の中で整理を付けて、彼女たちの会話に混ざる。


 今日はもう、西代お嬢様発覚事件の振替休日にしてしまおう。ゆっくりと英気を養って、明日からバイトと勉学に勤しむ事にする。


 たっぷり休んで、あの日常に戻ろう。


「いい返事だね。それじゃあ全員の合意も取れたし、とりあえず駅まで向かおうか」

「だな。……そういや、ここって東京の一体どこなんだ?」

「両国でござるな! 休日であったなら、相撲観戦したかったところである!!」

「相撲かぁー。私、相撲はちょっとよく分からないなーー」


 俺たちは雑な会話を始めて、最寄り駅の方向へ歩き出す。


「…………ねぇ、皆」


 その時、西代が急に立ち止まって俺達を呼んだ。


 俺達3人は彼女の方へと振り返る。


「今回も、本当に楽しかったね!!」


 彼女にしては珍しい、素直で大きな声。表情からは喜び以外の感情は見えてこない。


 西代は幸福を噛みしめる様にして、また笑っていた。

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