第37話 花ゴブリンの森②
「ポーメ、ポーメ、ポメ、男の子~♪ アクバ帝国からやってきたぁ~♪ ポーメ、ポーメ、ポメ、ふわふわのーとてもやんちゃな男の子~♪」
「キャン、キャン?(えっ、なにその歌?)」
「うん? 元いた世界の有名な歌をアレンジしたものだよー」
歌は良い。聞けば癒され、歌えば楽しい気分にさせてくれる。
「さあ、ポメちゃんも歌ってみよー! ポーメポメ……♪」
「キャン、キャン(え、ええっ……あっ! 森が見えてきたみたいだよー!)」
「あーっ! 本当だー!」
余所見しながら歩いていたから気付かなかった。
「それじゃあ、ここからは自由行動にしようねー♪」
「キャン、キャン(わーい!)」
『縮小』の呪符を剥がすと、ポメちゃんが元の大きさを取り戻していく。
「ボクはこれから薬草を採取しなきゃいけないから、ポメちゃんは森の中に入って、花ゴブリンをボクがいる方に追い立ててくれないかな?」
そう尋ねると、ポメちゃんが『キャン、キャン(えっ? 自由行動じゃなかったの)』と吠える。
「うんうん。ありがとう。ポメちゃん!」
首を傾げるポメちゃんに向かって問答無用でお礼を言うと「クーン、クーン(し、仕方がないなぁ……)」と鳴きながら『花ゴブリンの森』に入っていった。
ポメちゃんが森の中に入って数分経つと、森の中が突然、慌ただしくなってくる。
「ゴブゴブッー!(ド、ドイチェスピッツがなんでこんな所にっ!)」
「ゴブゥ!(に、逃げろー!)」
鳴き声から察するに、ポメちゃんが花ゴブリンを上手く誘導してきてくれたようだ。
頭にカモミール見たいな花が咲いている。なるほど、あれが花ゴブリンか……。
「さあ、花ちゃん! こっちにおいでー!」
「ゴ、ゴブゥ!?(な、なんだ!?)」
「ゴブッ、ゴブゥ!?(なんでこんな所に人間がっ!?)」
宙をなぞり亜空間から『隷属』の呪符を取り出すと、こっちに向かってくる花ゴブリンに呪符を付していく。
「クーン、クーン(ご主人様ーもう遊びに行っていい?)」
「うん。二体いれば十分だよ。ありがとう。ポメちゃん! 森の中で遊んでおいでー」
「キャン、キャン!(わーい!)」
森の散策に出かけて行ったポメちゃんを後目に、ボクは花ゴブリンの頭に生えるお花にマジマジと視線を向ける。
「ふーん。これが『癒され草』かぁ……えいっ!」
「ゴ、ゴブ……ゴブゥゥゥゥッ!?(い、一体なにをっ……ぎゃああああっ!?)」
興味心から花ゴブリンの頭に生えた花を根こそぎ抜くと、花ゴブリンが短い悲鳴を上げ倒れてしまう。
「あれっ?」
だ、大丈夫だろうか?
もしかして、この花……抜いちゃいけなかった??
ビクビクと震えるもう一体の花ゴブリンを後目に、亜空間から取り出した『治癒』の呪符を施すと、根こそぎ抜いたはずの花ゴブリンの頭から綺麗な花が生えてくる。
「……ゴ、ゴブッ?(い、一体なにが……)」
そして、頭に大輪が咲くと、花ゴブリンが目を覚ました。
なるほど、これは興味深い……。
「えいっ!」
「ゴ、ゴブゥゥゥゥ!?(ぎゃぁぁぁぁ!?)」
もう一度、同じように花ゴブリンの頭から『癒され草』を引っこ抜くと、またもや花ゴブリンが気絶する。そして、『治癒』の呪符を施すと、根こそぎ抜いたはずの花ゴブリンの頭から綺麗な花が生えてきた。
どうやら、この花ゴブリン。
頭に咲いた花を抜かれると気絶するらしい。
そして、花の開花具合によって段々と意識を取り戻していき、大輪の花が咲くと意識を取り戻すと……そういうことか。
なんとも面白い生態の花ゴブリンである。
しかし、これなら簡単に『癒され草』を採取できそうだ……。
ボクは片方の花ゴブリンに『治癒』の呪符を持たせると『命令』する。
「ごめんね? 『命令』だよ。君はこれから彼の頭に生えた花を千本集めて……。もし、気絶したらこの『治癒』の呪符で治して上げるんだよ。わかった?」
そう命令すると、花を抜く側の花ゴブリンが顔を引く付かせながら頷いた。
「それじゃあ、君にも『命令』しておくね? 千回頭から花を抜かれるまでの間、そこから動かないこと。安心して『鎮痛』と『睡眠』の呪符をちゃんと付して上げるから! 枕もお布団も用意して上げたよ! 君が寝ている間にすべてが終わるから、安心して入眠していいよ?」
そう命令すると、花を抜かれる側の花ゴブリンは布団に入り眠り出す。
これで準備が整った。
「それじゃあ、ボクは森の散策に行ってくるから、後のことはよろしくね! 一応、君達が他のモンスターに襲われないように、呪符による結界を張っておくから!」
手を振りながらそう言うと、『癒され草』の採取を花ゴブリンに任せ、森の散策をすることにした。
◇◆◇
「ある日、森の中ぁ~熊さんに出会った~」
軽快な童謡を歌いながら森の中を進んでいくと「ワオーン!」と吠えるポメちゃんの遠吠えが聞こえてきた。
「あれー? ポメちゃんの鳴き声がするー」
鳴き声のする方に向かって森の中を進んでいくと、そこには……。
血をダラダラ流し地に伏す黒い熊さんに前足を乗せ「ワォオオオオーン!」と、遠吠えを上げるポメちゃんの姿があった。
「…………」
さ、流石はポメちゃんだ。
おそらく、ポメちゃんの下に倒れている黒い熊さん。
あれが、この森の……花ゴブリンの森の主、フォレストベアーなのだろう。
というより、ストレスでも溜まっていたのだろうか?
ポメちゃんとフォレストベアーの周りが尋常じゃない位、爪の痕で一杯だ。
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