第13話 VS借金まみれのジェニファー②

「はい。サバイバル試験がどうかしたんですか?」

「えっと、もの凄く伝え辛いのですけれども、サバイバル試験を辞退して頂けないかしら? ほらっ、試験の目的は冒険者としての資質を見ることでしょ? Dランク冒険者を相手に難なく勝てる程の実力があればサバイバル試験を受けなくても……」

「それは駄目ですよ!」

「ええっ?」

「試験なんだからちゃんと受けなきゃ駄目だと思います」


 受付嬢さんは試験を免除してくれる方向で話を進めようとしてくれているようだけど、ボクはそういったズルはあまり好きじゃない。


 それに受付嬢さんは、ボクの事を『Dランク冒険者を相手に難なく勝てる程の実力』と評してくれたけど、ボクがやった事といえば、ジェニファーさんの足元に裂け目を作り出し、そこに落としただけ。

 Dランク冒険者相手に実力で勝った訳じゃない。


「えっと、ちょっとなにを言ってるのかわからないわ。サバイバル試験をしなくても冒険者になれるのよ?」


 慌てた表情を浮かべた受付嬢さんがそう促してくる。


「でも、ボクがやったことといえば、ジェニファーさんの足元に裂け目を作り出し、そこに落としただけですから……」


 受付嬢さんを説得するため、そう言うと、背後から援護射撃が飛んでくる。


「そうだそうだ。ズルはいけねぇなあ。いけねぇよ。ジェニファーは穴に落ちただけだぜ? 坊主の言う通り、実力でDランク冒険者に勝った訳じゃない。そうだろう?」

「今度は俺達がサバイバル試験の試験官になってやるからよぉ。嬉しいだろ。坊主」

「マクスウェルさんにローレンスさん! そうですよ。二人もこう言っています。サバイバル試験を受けさせて下さい!」


 この二人がいれば千人力だ。

 受付嬢さんにサバイバル試験を受けさせてくれないかと懇願すると、受付嬢さんは宙を仰いだ。


「……わかりました。そこまで言うならサバイバル試験を受けて頂くことに致しましょう。サバイバル試験は明日、他の冒険者見習いさん達と共に合同で行います。マクスウェルさんにローレンスさん。あなた達にも手伝って貰いますよ?」

「ああっ、任せておけよ」

「大船に乗った気分でなぁ!」


 マクスウェルさんとローレンスさんも乗り気だ。


「……試験は明日の午前八時から二日間に渡り冒険者ギルドが所有する森林ダンジョン内で行います。持ち込みは自由です。なにを持ってきても構いません」

「わかりました。例えば、ペットを連れてきても大丈夫ですか?」

「ペットですか? 問題ありませんが……」

「そうですか! それならよかった!」


 流石に二日間。バトちゃんとポメちゃんを放置する訳にはいかないからね。


「……まあ、いいでしょう。それでは明日。午前八時までにこの場所に集合して下さい」

「坊主! 遅れず来るんだぞ!」

「俺達が可愛がってやるからなぁ!」

「はいっ! 明日はよろしくお願い致します!」


 受付嬢さん達に最敬礼をすると、ボクは冒険者ギルドを後にした。


 ◇◆◇


「おい。明日のサバイバル試験どうする?」

「そんなことは決まっている。ジェニファーの仇を取ってやらねぇとなぁ。トイレに行っていて、ジェニファーとの戦闘試験を見てねぇが、まあ大丈夫だろ」

「違いねぇ!」


 マクスウェルとローレンスは、自分達によりボコボコにされるリーメイを夢想し笑みを浮かべる。


「……しかし、なんだあの穴? 修練場にあんな穴、あったか?」

「う~ん。覚えがねぇな。なんでもあの坊主。ジェニファーの野郎をあの穴に落として勝ったらしいぞ?」

「はあ? ジェニファーの奴。穴に突き落とされて負けたのかよ」


 ジェニファーは穴に落ちた影響で大怪我を負い担架で運ばれていった。

 借金まみれのジェニファーの名の如く。ジェニファーには金がない。

 お情けで治療は受けさせて貰えるだろうが、更なる借金を積んで戻ってくることは間違いないだろう。


「仕方のない野郎だ。しかし、ジェニファーは俺達の中でも最弱。俺達であのクソガキに冒険者業界の厳しさを教えてやろうぜ」

「ああ、まったくだ。明日からサバイバルだからな。今日は飲み明かすぞ!」


 サバイバル試験の前日。試験官を務める予定のマクスウェルとローレンスは冒険者ギルドを出ると、そのまま酒場へと向かった。


 その翌日。


「あ、痛ててててっ……。頭が痛てぇ……」

「昨日は飲み過ぎたな……」

「まあ、大丈夫だろ……。俺達の仕事は夜の寝こみの襲撃対応。夜までやることなんてねーよ」

「そうだな……。しかし、頭がいてぇ。ったく、こんなことなら試験官なんて請け負うんじゃなかったぜ」

「まったくだ……。おい、見ろよ。あのクソガキの到着だ」

「うん? ぶっはっ! マジかよ!」


 マクスウェルとローレンスは堪え切れない笑いを堪えながらリーメイに視線を向ける。


「おいおい。あいつ、なにを考えているんだ?」

「さあな。サバイバルという言葉をわかっていないんじゃないか? サバイバル試験に手ぶらで来た奴なんて初めて見たぜ」

「おいおい。手ぶらじゃないだろ? ペットを持参してるじゃねーか」

「ぶっはっ! これ以上笑わせるなよ!」


 マクスウェルとローレンスが笑い声を上げていると、二匹のペットを連れたリーメイが声をかけてきた。


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 これからも更新頑張りますので、よろしくお願い致します。

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